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第44話:守るべきもの
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「鬱陶しい…貴様が死ねば全てが終わる」
ついに直接ルードヴィッヒを狙うローハンの攻撃が放たれるが、動けない騎士達に代わって精霊達が身を挺し彼を守る。
ルードヴィッヒはチカチカと消えていく光を手で受け止めようとするが、触れる直前で消滅してしまう。
「っ…!」
自分には何もできないのか。
守られるだけ、犠牲を増やすだけ。
(そんなの…そんな疫病神になりたくてここにいるわけじゃない)
ルードヴィッヒは懐から小刀を取り出し、ローハンを睨みつける。
それはリューファがくれた彼女の鱗から作られた物で、切れ味は勿論のこと炎の加護も付いた代物。
「ふん、そんなちっぽけな武器で立ち向かう気か」
「ちっぽけなんかじゃない…お前にどう見えようが、俺にとっては大きなものだ」
身を守れなくても、この男に一太刀でも浴びせることができれば。
どうにか隙をつけないかと狙うルードヴィッヒを、ローハンは鼻で笑った。
「無駄な抵抗だ、人間に何ができる」
そして放たれる攻撃を、ルードヴィッヒは小刀で受ける。
その衝撃は大きく、思わず膝をつきそうになりながらもなんとか耐えるルードヴィッヒ。
「…ほう。しかし一度防いだところで次は無い」
連続で放たれた攻撃は炎の加護を突き破り、ルードヴィッヒの腕や足に傷が付けられた。
「っ…!!」
「宰相殿!」
「ルードヴィッヒ殿!」
懸命に結界を解こうとする護衛達と、それを手助けしようとする精霊達。
そんな彼らをローハンは嘲笑いながらルードヴィッヒへの攻撃を続ける。
「無駄だ無駄だ!貴様らなど我らの足元にも及ばぬ!」
ローハンはこの状況を楽しんでいた。
いつしか精霊人は精霊よりも上位の存在であるように振る舞うようになり、事実能力も上がり。
やはり自分の方が精霊よりも竜人よりも優れており、美しいのだと感じることができたから。
血塗れになっていくルードヴィッヒを恍惚とした目で見下ろしていたローハンは、
「…何を、しているの」
入り口から聞こえた声に信じられない思いで振り向いた。
そこに居たのは。
「リューファ様…」
怒りの炎を纏ったリューファだった。
「な!?馬鹿な、封鎖していたはず!!」
同胞達はどうしたのか。
異変を知らせる合図すらなかったのに現れたリューファの姿に驚くローハンを、リューファは真っ直ぐに見つめながら歩を進める。
一歩進む毎にその肌に鱗が浮き上がり、真紅の髪は解けて炎のように揺れて広がっていく。
「我が国の宰相、そして国民達に何をしているの」
「…お前が悪いのだぞ王女リューファ!この私を選ばぬお前が!」
「…そんな事でこんな事をしたと言うの。精霊人がこれほど愚かな種族だったとはね」
リューファの怒りは頂点に達しており、逆に冷静に見えた。
しかしそれは表面上の態度に過ぎず、血塗れのルードヴィッヒが握りしめている小刀を確認した瞬間。
彼女は竜化した。
『ああああああああああ!!!』
愛する人を傷つけられ、多くの精霊が散らされ。
封印に対抗しようとしていた騎士達も地面にめり込むほど苦しめられており、リューファが理性を保てる域を超えていたのだ。
「リューファ様!!」
これはまずいとルードヴィッヒは立ち上がろうとするが、出血が多く立ち上がれない。
そんな彼を支えるために駆けつけたのは、リューファの護衛隊長であるジェネ。
「ジェネ殿、姫様を止めなくては!」
「…あれは止められませんよ」
ジェネは諦めの表情で首を振る。
リューファが怒りで我を忘れるのは、十二歳の頃に竜人族の子供が誘拐されて解剖される事件が起きた時以来だ。
歳の近い子供の変わり果てた姿を見てしまったリューファは、犯人達を一瞬で壊滅させた。
それでも落ち着く事なく、その後三日間暴れ狂ったのだ。
ついに直接ルードヴィッヒを狙うローハンの攻撃が放たれるが、動けない騎士達に代わって精霊達が身を挺し彼を守る。
ルードヴィッヒはチカチカと消えていく光を手で受け止めようとするが、触れる直前で消滅してしまう。
「っ…!」
自分には何もできないのか。
守られるだけ、犠牲を増やすだけ。
(そんなの…そんな疫病神になりたくてここにいるわけじゃない)
ルードヴィッヒは懐から小刀を取り出し、ローハンを睨みつける。
それはリューファがくれた彼女の鱗から作られた物で、切れ味は勿論のこと炎の加護も付いた代物。
「ふん、そんなちっぽけな武器で立ち向かう気か」
「ちっぽけなんかじゃない…お前にどう見えようが、俺にとっては大きなものだ」
身を守れなくても、この男に一太刀でも浴びせることができれば。
どうにか隙をつけないかと狙うルードヴィッヒを、ローハンは鼻で笑った。
「無駄な抵抗だ、人間に何ができる」
そして放たれる攻撃を、ルードヴィッヒは小刀で受ける。
その衝撃は大きく、思わず膝をつきそうになりながらもなんとか耐えるルードヴィッヒ。
「…ほう。しかし一度防いだところで次は無い」
連続で放たれた攻撃は炎の加護を突き破り、ルードヴィッヒの腕や足に傷が付けられた。
「っ…!!」
「宰相殿!」
「ルードヴィッヒ殿!」
懸命に結界を解こうとする護衛達と、それを手助けしようとする精霊達。
そんな彼らをローハンは嘲笑いながらルードヴィッヒへの攻撃を続ける。
「無駄だ無駄だ!貴様らなど我らの足元にも及ばぬ!」
ローハンはこの状況を楽しんでいた。
いつしか精霊人は精霊よりも上位の存在であるように振る舞うようになり、事実能力も上がり。
やはり自分の方が精霊よりも竜人よりも優れており、美しいのだと感じることができたから。
血塗れになっていくルードヴィッヒを恍惚とした目で見下ろしていたローハンは、
「…何を、しているの」
入り口から聞こえた声に信じられない思いで振り向いた。
そこに居たのは。
「リューファ様…」
怒りの炎を纏ったリューファだった。
「な!?馬鹿な、封鎖していたはず!!」
同胞達はどうしたのか。
異変を知らせる合図すらなかったのに現れたリューファの姿に驚くローハンを、リューファは真っ直ぐに見つめながら歩を進める。
一歩進む毎にその肌に鱗が浮き上がり、真紅の髪は解けて炎のように揺れて広がっていく。
「我が国の宰相、そして国民達に何をしているの」
「…お前が悪いのだぞ王女リューファ!この私を選ばぬお前が!」
「…そんな事でこんな事をしたと言うの。精霊人がこれほど愚かな種族だったとはね」
リューファの怒りは頂点に達しており、逆に冷静に見えた。
しかしそれは表面上の態度に過ぎず、血塗れのルードヴィッヒが握りしめている小刀を確認した瞬間。
彼女は竜化した。
『ああああああああああ!!!』
愛する人を傷つけられ、多くの精霊が散らされ。
封印に対抗しようとしていた騎士達も地面にめり込むほど苦しめられており、リューファが理性を保てる域を超えていたのだ。
「リューファ様!!」
これはまずいとルードヴィッヒは立ち上がろうとするが、出血が多く立ち上がれない。
そんな彼を支えるために駆けつけたのは、リューファの護衛隊長であるジェネ。
「ジェネ殿、姫様を止めなくては!」
「…あれは止められませんよ」
ジェネは諦めの表情で首を振る。
リューファが怒りで我を忘れるのは、十二歳の頃に竜人族の子供が誘拐されて解剖される事件が起きた時以来だ。
歳の近い子供の変わり果てた姿を見てしまったリューファは、犯人達を一瞬で壊滅させた。
それでも落ち着く事なく、その後三日間暴れ狂ったのだ。
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