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第42話:洞窟視察へ

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精霊人せいれいびとローハンらの滞在最終日。

朝食後、予定通りにルードヴィッヒは彼らを洞窟視察へと案内する事に。

リューファも同行を願い出たのだが、種族交流のための祭典を行いたいというローハンらの提案により、来月精霊人の森へ向かい話し合うための資料作りなどに追われる事になってしまったのだ。


「行ってらっしゃいルードヴィッヒ、気をつけてね。わたくしも手が空いたら洞窟へ向かうわ」

「行ってまいります。視察は私にお任せください、終わり次第すぐに戻ります」


誕生日デート以来、特に大きな進展もないまま数日が経過した二人。

ルードヴィッヒにいつもと変わった様子はないが、リューファは念願が叶う日も近いと信じていた。


(ローハン大使達が帰ったら、またデートに誘ってみよう!次の休みを聞いておかなくちゃ)


しばらくは精霊人との交流の件で忙しいだろうけれど、何も自分たちしか仕事をしていないわけではない。

二人の時間を増やせばあと一足!という期待に胸を膨らませるリューファに見送られ、ルードヴィッヒはローランらと視察へ向かった。


「竜の国も意外と美しいところですね」


道中、馬車から見える街並みや自然を見てローハンが口を開く。


「城下町は普段からあの様子なのですか?まるで祭りのようだ」


豪快でおおらかな種族である竜人族、その首都である城下町は毎日がお祭り騒ぎのような賑わい。

特に最近はラージュ誕生のお祝いムードがまだ続いており、活気に満ち溢れている。

一歩街から出ると次の街まで自然が広がり、居住区と自然との棲み分けがハッキリしているのが特徴だ。


「民のために王がいるというのが竜人の考えです。代々守護者であり続けている王族への尊敬の念があるからこそ、人々は安心してのびのびと過ごせているのです」


それこそが竜人族の誇り。

この国で十年以上暮らしてきたルードヴィッヒも、王族を尊敬し竜国ドラリオンを誇りに思っている。

しかしローハンにはそれが理解できなかった。


(ふん。尊敬?誇り?そんなもの美しさに関係ないではないか。極力自然破壊をしないその姿勢は認めるが、所詮は竜のなり損ないの集まりだろう)


精霊人は精霊が認めた人間に子供を産ませた事が始まりとされており、生まれつき高い魔力を有し見た目も美しい種族。

そんな自分達を誇るローハンには、汗水垂らして働いたり豪快に笑ったりする竜人族を理解できないのだ。

竜に変化したその姿を美しいと思えず、嫌悪の対象となっている。


(あの王女も竜になるのだな…見たことはないが醜いに違いない。他の竜人より小柄だと聞いているが、国へ連れて行ったら閉じ込めておかねばなるまい)


自分の美貌に見とれなかったというだけで執着し、婚約に漕ぎつければすぐさま連れて行き軟禁するつもりでいるローハン。

そのためにも邪魔者であるルードヴィッヒを消す…この先の洞窟には既に仲間が待機している。

彼の愚かな企みを、ルードヴィッヒは知らない。
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