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第19話:敵襲
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ドラリオン竜国の王の間にて。
「なんということだ、どうやらエメルの王女がこちらへ向かっているそうだぞ」
早馬でエメルの王ルドルフからの手紙を受け取ったギルファンは、頭を抱えてしまう。
手荒な真似をするわけにもいかない、しかし暴走している王女が何をしでかすか分からない。
ルードヴィッヒも顔色を曇らせる。
「申し訳ございません…私が手紙を読んでいれば良かったのかもしれません」
「いいや、お前のせいではないよ。王女がここまでとは思っていなかった」
最低限の教養はあるはず、物事の分別もつく年頃だ。
そう思って時間が解決するのを待とうとしたが、まさか裏目に出るとは。
するとリューファが静かに立ち上がった。
「来るなら来れば良いわ。きっとあの女はルードヴィッヒではなくわたくしのところへ来る。返り討ちにするだけよ」
いつものように怒りを露わにはしていない、しかしリューファはかつてないほど怒っている。
「リューファよ、相手は他国の王女なのだ、対応を間違えるわけにはいかぬ」
「その立場を忘れて行動しているのは本人でしょう?自覚も覚悟も無い小娘が、わたくしに喧嘩を売るなんて」
リューファの金色の瞳がきらりと光り、深紅の髪が炎のように揺れた。
「大丈夫ですわよお父様、いくらわたくしでも殺したりしませんわ。ただ思い知らせてやるだけです」
誰に喧嘩を売ったのか、愚かな王女に教えてやろう。
王女として生を受け、その身には責任があるはずなのに。
それを理解していないフローラの行動が、リューファは許せなかったのだ。
「さあ来るがいいわフローラ王女、わたくしは逃げも隠れもしない」
後四日で自分の生誕祭。
愛する国民を危険に晒すわけにはいかない、自分は未来の女王なのだから。
沸々と煮えたぎるマグマを心に宿したリューファの横顔は、竜王ギルファンにも負けないほど凛々しかった。
自室へ向かうリューファを追うルードヴィッヒ。
「姫様…申し訳ございません、大切な生誕祭が近いというのに」
リューファはピタリと足を止め、ルードヴィッヒに振り返る。
「謝らないでルードヴィッヒ。それに、これは貴方の問題ではなくわたくしとあの女の戦いなの。あの女が始めた喧嘩なんだから」
もはやルードヴィッヒは関係ない、彼を飛び越えて女の意地と意地のぶつかり合いなのだ。
「ですが…」
「ルーイ」
ルードヴィッヒの言葉を遮り、リューファは彼の顔を両手で包む。
「貴方はわたくしの想い人だけれど、それ以前に大切な我が国民よ。安全を脅かす存在を許すことはできないの」
国境を跨いでまで争おうというならば、向こうは個人感覚でもこちらは王家の者として対応する。
生まれた時から王族であり竜王となるべく育てられてきたリューファには、その覚悟があった。
言葉を失うルードヴィッヒに、リューファは微笑む。
「大丈夫、絶対に守るから。いつも言ってるでしょ?愛してるわ、ルーイ」
部屋へ戻るリューファを見送ることしかできなかったルードヴィッヒ。
その目からは、人知れず一筋の涙が流れたのであった。
「なんということだ、どうやらエメルの王女がこちらへ向かっているそうだぞ」
早馬でエメルの王ルドルフからの手紙を受け取ったギルファンは、頭を抱えてしまう。
手荒な真似をするわけにもいかない、しかし暴走している王女が何をしでかすか分からない。
ルードヴィッヒも顔色を曇らせる。
「申し訳ございません…私が手紙を読んでいれば良かったのかもしれません」
「いいや、お前のせいではないよ。王女がここまでとは思っていなかった」
最低限の教養はあるはず、物事の分別もつく年頃だ。
そう思って時間が解決するのを待とうとしたが、まさか裏目に出るとは。
するとリューファが静かに立ち上がった。
「来るなら来れば良いわ。きっとあの女はルードヴィッヒではなくわたくしのところへ来る。返り討ちにするだけよ」
いつものように怒りを露わにはしていない、しかしリューファはかつてないほど怒っている。
「リューファよ、相手は他国の王女なのだ、対応を間違えるわけにはいかぬ」
「その立場を忘れて行動しているのは本人でしょう?自覚も覚悟も無い小娘が、わたくしに喧嘩を売るなんて」
リューファの金色の瞳がきらりと光り、深紅の髪が炎のように揺れた。
「大丈夫ですわよお父様、いくらわたくしでも殺したりしませんわ。ただ思い知らせてやるだけです」
誰に喧嘩を売ったのか、愚かな王女に教えてやろう。
王女として生を受け、その身には責任があるはずなのに。
それを理解していないフローラの行動が、リューファは許せなかったのだ。
「さあ来るがいいわフローラ王女、わたくしは逃げも隠れもしない」
後四日で自分の生誕祭。
愛する国民を危険に晒すわけにはいかない、自分は未来の女王なのだから。
沸々と煮えたぎるマグマを心に宿したリューファの横顔は、竜王ギルファンにも負けないほど凛々しかった。
自室へ向かうリューファを追うルードヴィッヒ。
「姫様…申し訳ございません、大切な生誕祭が近いというのに」
リューファはピタリと足を止め、ルードヴィッヒに振り返る。
「謝らないでルードヴィッヒ。それに、これは貴方の問題ではなくわたくしとあの女の戦いなの。あの女が始めた喧嘩なんだから」
もはやルードヴィッヒは関係ない、彼を飛び越えて女の意地と意地のぶつかり合いなのだ。
「ですが…」
「ルーイ」
ルードヴィッヒの言葉を遮り、リューファは彼の顔を両手で包む。
「貴方はわたくしの想い人だけれど、それ以前に大切な我が国民よ。安全を脅かす存在を許すことはできないの」
国境を跨いでまで争おうというならば、向こうは個人感覚でもこちらは王家の者として対応する。
生まれた時から王族であり竜王となるべく育てられてきたリューファには、その覚悟があった。
言葉を失うルードヴィッヒに、リューファは微笑む。
「大丈夫、絶対に守るから。いつも言ってるでしょ?愛してるわ、ルーイ」
部屋へ戻るリューファを見送ることしかできなかったルードヴィッヒ。
その目からは、人知れず一筋の涙が流れたのであった。
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