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第1話:出会い
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「姫様ー!リューファ姫様ー!」
城内を叫びながら走り回る使用人たち。
彼らが探しているのは、竜国ドラリオンの王女リューファ。
第一王女として生を受けて5年、甘やかされて育った姫は習い事を抜け出す常習犯。
「ふふーん、あたしを捕まえるなんて無理よ!」
物陰に隠れてやり過ごし、ひょこりと顔を出したのは深紅の髪と金の瞳を持つ少女。
彼女こそがリューファである。
今日は大嫌いなマナーの先生が来ているため、絶対に授業を受けたくない!と逃げ出してきたのだ。
「さあ、街までお散歩に行こうかな~」
追っ手をまいたと思い歩き始めたリューファは、通路の横から伸びてきた手にあっさりと捕まった。
「こらリューファ、また逃げたのか」
「お父様!」
父であり国王であるその人は、リューファと同じ深紅の髪に金の瞳を持っている。
「だって、キミー先生怖いんだもの!」
マナー講師のキミーは、リューファを立派な女王にするべく厳しく指導してくる。
当然のことなのだが、5歳のリューファには辛くてたまらない時間なのだ。
「お前は次期女王なのだ、今からワガママばかりでは困るぞ」
国王としての仕事が忙しく、子育てには関与していない父ギルファン。
妻である王妃リンナが目に入れても痛くないほど可愛がって育てているせいもあってか、娘がワガママに育ってきたことに頭を悩ませていた。
「お父様はリューファが可愛くないの?リューファが悲しくて泣くことをさせるの?」
金色の瞳に涙をたっぷり浮かべて訴えるリューファ、5歳にして嘘泣きを身につけている末恐ろしい娘だ。
「可愛いからこそ、愛しているからこそお前には立派な後継になってもらわねば困るのだよ」
ギルファンは娘の髪を撫でながら言う。
「私が健在なうちはいい。しかしこの先、お前が一人になってしまう可能性もゼロではない」
竜人の寿命は人間よりも長いが、不老ではない。
ここ数年は平和に暮らしているものの、戦争が起きない保証もない。
「他の奴らになんて負けないわ、お父様のことはリューファが守ってあげる!」
リューファとギルファンは口から炎を吐く火竜だ。
ドラゴン化していれば簡単には負けない。
胸を張るリューファに、ギルファンは首を横に振る。
「リューファよ、強さとは力だけではない」
そう言ったギルファンの後ろには、人間族の少年が。
白い肌に銀の髪、そして深緑色の瞳を持つ彼はこの世のものとは思えぬほどの美貌の主。
「ルードヴィッヒという。今日から城に住まわせる」
リューファは彼から目が離せなかった…本当に人間なのだろうか。
精霊か、はたまた神の生まれ変わりではないかと思うほど美しい顔をしている。
「初めまして、王女様。よろしくお願いいたします」
声すらも美しく耳に響き、脳が揺さぶられ胸が高鳴った。
魂を抜かれた様子のリューファを見てギルファンは苦笑する。
同性、そして竜人である自分でも呆けそうになったのだから娘がこうなるのも無理はない。
「ルードヴィッヒは美しすぎるという理由で親から捨てられたらしい。苦労してきたようだが頭は良い、これから一緒に学びなさい」
父の説明はほとんど頭に入らなかった。
城内を叫びながら走り回る使用人たち。
彼らが探しているのは、竜国ドラリオンの王女リューファ。
第一王女として生を受けて5年、甘やかされて育った姫は習い事を抜け出す常習犯。
「ふふーん、あたしを捕まえるなんて無理よ!」
物陰に隠れてやり過ごし、ひょこりと顔を出したのは深紅の髪と金の瞳を持つ少女。
彼女こそがリューファである。
今日は大嫌いなマナーの先生が来ているため、絶対に授業を受けたくない!と逃げ出してきたのだ。
「さあ、街までお散歩に行こうかな~」
追っ手をまいたと思い歩き始めたリューファは、通路の横から伸びてきた手にあっさりと捕まった。
「こらリューファ、また逃げたのか」
「お父様!」
父であり国王であるその人は、リューファと同じ深紅の髪に金の瞳を持っている。
「だって、キミー先生怖いんだもの!」
マナー講師のキミーは、リューファを立派な女王にするべく厳しく指導してくる。
当然のことなのだが、5歳のリューファには辛くてたまらない時間なのだ。
「お前は次期女王なのだ、今からワガママばかりでは困るぞ」
国王としての仕事が忙しく、子育てには関与していない父ギルファン。
妻である王妃リンナが目に入れても痛くないほど可愛がって育てているせいもあってか、娘がワガママに育ってきたことに頭を悩ませていた。
「お父様はリューファが可愛くないの?リューファが悲しくて泣くことをさせるの?」
金色の瞳に涙をたっぷり浮かべて訴えるリューファ、5歳にして嘘泣きを身につけている末恐ろしい娘だ。
「可愛いからこそ、愛しているからこそお前には立派な後継になってもらわねば困るのだよ」
ギルファンは娘の髪を撫でながら言う。
「私が健在なうちはいい。しかしこの先、お前が一人になってしまう可能性もゼロではない」
竜人の寿命は人間よりも長いが、不老ではない。
ここ数年は平和に暮らしているものの、戦争が起きない保証もない。
「他の奴らになんて負けないわ、お父様のことはリューファが守ってあげる!」
リューファとギルファンは口から炎を吐く火竜だ。
ドラゴン化していれば簡単には負けない。
胸を張るリューファに、ギルファンは首を横に振る。
「リューファよ、強さとは力だけではない」
そう言ったギルファンの後ろには、人間族の少年が。
白い肌に銀の髪、そして深緑色の瞳を持つ彼はこの世のものとは思えぬほどの美貌の主。
「ルードヴィッヒという。今日から城に住まわせる」
リューファは彼から目が離せなかった…本当に人間なのだろうか。
精霊か、はたまた神の生まれ変わりではないかと思うほど美しい顔をしている。
「初めまして、王女様。よろしくお願いいたします」
声すらも美しく耳に響き、脳が揺さぶられ胸が高鳴った。
魂を抜かれた様子のリューファを見てギルファンは苦笑する。
同性、そして竜人である自分でも呆けそうになったのだから娘がこうなるのも無理はない。
「ルードヴィッヒは美しすぎるという理由で親から捨てられたらしい。苦労してきたようだが頭は良い、これから一緒に学びなさい」
父の説明はほとんど頭に入らなかった。
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