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第6部 シンデレラボーイは、この『子猫センパイ』の夢を叶える義務がある!
思い出は『たからばこ』の中へ ~その5~
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「――えぇっ!? と、ということは、ししょー達がずっと探していた『お兄ちゃん』は、出雲愚連隊の総長さんだったんですか!?」
「おうよ。いやぁ~、あのときは流石のあたしもビビったわぁ~」
洋子がおやつとして持ってきていた手作りのクッキーをバリバリ咀嚼しながら、千和は「うっはっはっはっはっ!」と豪快に笑った。
そんな豪気な姉貴分を前に、芽衣は1人静かに熟考していた。
「どうしたのメイちゃん? さっきから押し黙って?」
「いえ……ちょっと気になる点がありまして」
気になる点? と、小首を傾げる妹を尻目に、芽衣は今しがた感じた胸の不安を言語化して、千和にぶつけた。
「千和さん。確認なんですけど、本当に寅美さんのお兄さんは、出雲愚連隊の総長だったんですか?」
「おう。間違いねぇぞ」
「……だとしたら、士狼はなんで『あんな事』をやったんですか?」
「『あんな事』? なにそれ、メイちゃん?」
芽衣の言っている意味が分からず、はて? と頭の上にクエスチョンマークを浮かべる洋子。
そんな洋子に、芽衣はやや言いづらそうに、その桜の蕾のような唇を動かした。
「洋子も知っているハズですよ。士狼には『喧嘩狼』の他にも、もっとインパクトのある強い【二つ名】がついていることに」
「強い【二つ名】? ……あっ!」
ようやく芽衣の言いたいことを理解したらしい洋子は、そのクリクリのお目々を大きく見開いた。
そう、士狼には『喧嘩狼』というキャッチ―な通り名の他にも、もっと大きな、全国的に知れ渡る肩書きがあった。
その名も――
「――『西日本最強の男』。……2年前、当時、西日本最強と言われていた出雲愚連隊の総長を、士狼はその手で倒して、その名を継承しています」
「そ、そうだよっ! でも総長さんは、トラミさんのお兄さんだったんだよね!? な、なんでそんな事になったワケ!?」
意味が分からない、と説明を求める2つの視線をその身に浴びた千和は、苦笑しながらパキッ! と、クッキーを頬張った。
「2人とも。花丸INポイントノートが、どういうノートか覚えているか?」
「えっ? それはもちろん」
「お題をクリアして、寅美さんのお兄さんに会うためのノートですよね?」
千和は洋子が用意してくれた温かいお茶で唇を潤しながら、小さく吐息をこぼした。
「そうだ。花丸INポイントノートは、お題をクリアするためノートだ。……だからアイツは、お題をクリアしに行っただけ。ただ、それだけなんだよ。西日本最強とか、そんなモノは、単なる副産物だ」
千和らしくなく、もの悲しそうな笑みを浮かべる。
そんな彼女を前に、洋子も芽衣も、なんだか不安になった。
「一応、確認なんだが、2人とも、続きは聞くかい?」
そう口にした千和の瞳には、優しさが滲んでいた。
引き返すなら今が最後だ――と語るその目を前に、洋子と芽衣は顔を見合わせ……2人同時に頷いた。
「お、お願いしますっ!」
「洋子もわたしも、ここまで聞いておいて、引き下がる選択肢は流石にありませんよ」
「……そっか」
わかった、千和は短くそう呟いて、続きを語り始めた。
『彼』と『彼女』が綴る、金色に輝く物語を。
「おうよ。いやぁ~、あのときは流石のあたしもビビったわぁ~」
洋子がおやつとして持ってきていた手作りのクッキーをバリバリ咀嚼しながら、千和は「うっはっはっはっはっ!」と豪快に笑った。
そんな豪気な姉貴分を前に、芽衣は1人静かに熟考していた。
「どうしたのメイちゃん? さっきから押し黙って?」
「いえ……ちょっと気になる点がありまして」
気になる点? と、小首を傾げる妹を尻目に、芽衣は今しがた感じた胸の不安を言語化して、千和にぶつけた。
「千和さん。確認なんですけど、本当に寅美さんのお兄さんは、出雲愚連隊の総長だったんですか?」
「おう。間違いねぇぞ」
「……だとしたら、士狼はなんで『あんな事』をやったんですか?」
「『あんな事』? なにそれ、メイちゃん?」
芽衣の言っている意味が分からず、はて? と頭の上にクエスチョンマークを浮かべる洋子。
そんな洋子に、芽衣はやや言いづらそうに、その桜の蕾のような唇を動かした。
「洋子も知っているハズですよ。士狼には『喧嘩狼』の他にも、もっとインパクトのある強い【二つ名】がついていることに」
「強い【二つ名】? ……あっ!」
ようやく芽衣の言いたいことを理解したらしい洋子は、そのクリクリのお目々を大きく見開いた。
そう、士狼には『喧嘩狼』というキャッチ―な通り名の他にも、もっと大きな、全国的に知れ渡る肩書きがあった。
その名も――
「――『西日本最強の男』。……2年前、当時、西日本最強と言われていた出雲愚連隊の総長を、士狼はその手で倒して、その名を継承しています」
「そ、そうだよっ! でも総長さんは、トラミさんのお兄さんだったんだよね!? な、なんでそんな事になったワケ!?」
意味が分からない、と説明を求める2つの視線をその身に浴びた千和は、苦笑しながらパキッ! と、クッキーを頬張った。
「2人とも。花丸INポイントノートが、どういうノートか覚えているか?」
「えっ? それはもちろん」
「お題をクリアして、寅美さんのお兄さんに会うためのノートですよね?」
千和は洋子が用意してくれた温かいお茶で唇を潤しながら、小さく吐息をこぼした。
「そうだ。花丸INポイントノートは、お題をクリアするためノートだ。……だからアイツは、お題をクリアしに行っただけ。ただ、それだけなんだよ。西日本最強とか、そんなモノは、単なる副産物だ」
千和らしくなく、もの悲しそうな笑みを浮かべる。
そんな彼女を前に、洋子も芽衣も、なんだか不安になった。
「一応、確認なんだが、2人とも、続きは聞くかい?」
そう口にした千和の瞳には、優しさが滲んでいた。
引き返すなら今が最後だ――と語るその目を前に、洋子と芽衣は顔を見合わせ……2人同時に頷いた。
「お、お願いしますっ!」
「洋子もわたしも、ここまで聞いておいて、引き下がる選択肢は流石にありませんよ」
「……そっか」
わかった、千和は短くそう呟いて、続きを語り始めた。
『彼』と『彼女』が綴る、金色に輝く物語を。
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