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第14章 そして神になった

【アキラ君の行方2】

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<<ラスク星ハローマ自治区在住ナタリー視点>>



それは突然でした。最近支給された田植え機という魔道具を使って稲を植えている最中にそれは起こりました。



雲一つ無い快晴の中、水をたたえた田んぼを進む田植え機。そのリズミカルな動きは水面に規則正しい波を作り続けており、見ているだけで嬉しくなりました。



真ん中くらいまで行ったところでしたか、真っすぐ見据えた視線の先に突然小さな黒い靄が現れました。



本当に一瞬のことです。あっという間の拡がった靄はわたしの方に近付いてきて飲み込まれたかと思うと、そのまま視界が真っ暗になってしまったのです。



何があったんだろう。



そう思ったのもつかの間、時間にして数秒ですかね、視界を真っ暗に染めていた黒は少しずつ晴れ、すっかり靄が晴れた時、そこは全く知らない場所でした。



何も無い世界。真っ暗で声を出しても声すら響かない。寒くも無く、熱くも無く、重力を感じることも無ければ、浮いている感覚も無い。



ただただ何も無い世界にいることだけは確かでした。



五感も重力すら感じ無い世界では、時間の感覚さえも無くなるのでしょうか。



しばらくすると考えることすら忘れてしまっていました。



どのくらいの時間が経ったのか分からないのだけれど、急に体に重さを感じるとそのまま落下していきました。



「あー落ちるんだなあ」くらいでしょうか。



今から思えば思考を全く止めた状態だったのでしょう。落ちていることが意識できても、思考が動き出すまでにしばらく時間が掛かるのですね。



やがて、ゆっくりと足が地面に着く頃には「体を支えなきゃ」くらいには思考が戻っていました。



何とか片膝を付くくらいで地面に降り立つことが出来たのは僥倖でした。



下はコンクリートでしょうか。

落ちどころが悪ければ怪我をしていたかもしれません。



先程まで濡れていた長靴の水が埃っぽい地面にシミを作り、直ぐに消えていきます。



「コホッ、コホッ。」



少し離れたところから咳き込む音が聞こえました。



誰かいるようです。



ただ月明かり程度の明るさでは自分の立っている地面くらいは見えても、その方の姿までは確認できません。



「コホッ、だ、誰かいるのですか?」



少年の声が聞こえた頃には闇に慣れた目が彼の姿を見つけました。




<<アキラ視点>>



何もない世界に落とされて、気が付いたらここにいた。



冷たくはないけど無機質なコンクリートの床。



「コホッコホッコホッ」



少し歩いただけで埃が舞って咳が止まらない。



着ていたシャツを脱いで口に巻く。



とりあえず咳は治まったけど、裸のまんまって訳にはいかないから、マスクしなくても大丈夫なくらいに掃除しなきゃ。



ズボンも脱いでざっくりと床を拭くととりあえず動かなきゃ埃が立たなくなった。



ズボンは汚れちゃったけどそのまま履きなおして、シャツももう一度着る。



動かなきゃ大丈夫と、その場に座ったら、いつの間にか寝てしまっていた。




うーん。誰かいる?



誰かの足音に目を覚ます。



コホッ、コホッ。



せっかく辺りの埃を除いたのに、それ以外のところでたった埃に咳き込む。



生まれた時から肺の疾患に悩まされてたから、健康になったはずの今でも埃に弱いみたい。



「コホッ、だ、誰かいるのですか?」



しまった、敵かも分からないのに声を出しちゃったよ。




<<マサル視点>>



アキラ君に続いてナタリーさんもなんて全く許せない。



なんとしても解決せねば。



ユウコさんと共に監査部に向かうと、アース監視チームのライクさんが迎えてくれた。



「ライクさん、今回は連絡ありがとう。助かったわ。」



「ユウコさん、お役に立ててうれしいよ。ちょうどラスク監視チームのセイラが食堂で話しているのを耳にしたからさあ。



絶対ユウコさんが追っているトラブルと関連していると思ったんだよ。」



ライクさん、ユウコさんと話せて、すごく楽しそうだ。



「ライクさん、今回も連絡ありがとうございます。」



「ああマサルさん。早速セイラのところに案内するよ。」






「セイラ、こちら異世界管理局のユウコさんとマサルさん。さっきお願いしていた話しをもう一度お願いできるかい。」



「初めまして、ラスク監視チームのセイラです。」



「異世界管理局調査室のユウコです。こちら同僚のマサルさんです。セイラさん宜しくね。」



「マサルです。よろしくお願いします。」



「あら、あなたがあのマサルさんね。お目にかかれて嬉しいわ。」



「セイラさん、いつもラスク星を見守ってくれているそうで、ありがとうございます。」



「ええ、でもラスク星ってすーごく平和な星だし、人工衛星って言ったっけ。あれのおかげでわたし達が注意しなきゃいけないことってほとんど無いのよね。



隕石の衝突だとか彗星の接近だとかコチラから向こうの管理者に報告する前に自分達で解決しちゃうからね。ほーんと楽よ。」



「そうそう、今回の件についてもマサルさんの息子さんが人工衛星から集めたデータを持ってきたんです。



それも合わせてこちらで得られている情報を教えてもらえれば助かるんですけど。」



「ユウコさん、その情報はわたし達も見せてもらってもいいの?」



「もちろん、ねえマサルさん。」



「ええ、今からお見せしますね。」



俺は魔石を取り出して会議室の壁に記録されている映像を映し出した。

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