上 下
321 / 382
第14章 そして神になった

29【スカウト1】

しおりを挟む
<<異世界管理局人事課スカウト係タケイナー視点>>

わたしの名はタケイナー。アースに派遣されている人事課のスカウト担当です。

わたしがここに来たのは今から500年程前になります。

いやあ当時は本当に大変でしたね。

とにかく戦闘中の場所が多かったんです。

こちらに来て、まずは当時最大の面積を誇っていた『明』という国に行きました。

ですが、政情が不安定でもあり、優秀な人材を見つけることが出来ません。

次に当時文化の最先端と言われていたヨーロッパ地域に向かいました。

こちらでは東アジアから侵略を繰り返して迫りくるオスマン帝国の脅威があり、その脅威に恐々としていました。

ヨーロッパ地域では華やか宮廷文化が咲き乱れており絵画や音楽、文学等の文化を異世界に輸出するには都合が良かったのですが、反面、オスマン帝国の中央ヨーロッパ支配により、国土の拡張が不可能になった各国が船舶を使った未開地の開拓にしのぎを削り始めたのもこの頃の文化の象徴でした。

しかし未開地を侵略し、そこの原住民を奴隷として扱うことを是とする文化は輸入するには野蛮過ぎると思います。

華やかな宮廷文化とは相反するようではありますが、侵略による利益が宮廷の華やかさを彩っていると考えますと、ヨーロッパ地域の宮廷文化を他の世界に輸出することを躊躇われたのです。

こうしてアースでの適当な文化探しが行き詰っていたところに思わぬ情報が入ってきたのです。

「黄金の国ジパング」

明国より東方は未開の地として全く候補にしていませんでしたが、ヨーロッパの西の端にあるポルトガルという国まで来た時、明国より海を渡った東にジパングと呼ばれる国があることが分かりました。

しかもその国には豊富な黄金と質素ながら堅実な文化があるというのです。

この情報は商人であり冒険家でもあったマルコポーロという人が民国を訪れた際に聞き及んだというのです。

そしてヨーロッパ各国ではジパングを目指して準備を始めているようですね。

そんな中、わたしは一足先にジパングに向かいました。

もしジパングというところに輸入すべき優秀な文化があったとしても、この野蛮なヨーロッパ人に蹂躙されてからでは遅いですからね。



さて、ジパングに到着しました。

ここがおそらくそうですよね?

黄金の国と呼ばれていましたが…

黄金色には……、出会いませんね。

一部の寺院には、金色の派手なものもありますが、全体的には質素なイメージです。

どうやらこの国でも小さく分けられた領土通しで多くの戦いが起こっているようですね。

やはりここもヨーロッパのように野蛮な文化を持っているのでしょうか?

とりあえず、都と呼ばれている京に行って見ましょう。

京の都?に着いてみましたが、酷い有り様です。

戦いの多かったヨーロッパでも都と呼ばれているところでこんなに酷いところはありませんでしたね。

期待していましたがどうやら無駄足のようでした。

もう少し西の方には華やかな地もあるにはあったのですが、一部の富裕層だけが華やかで、庶民は酷く貧しそうでした。

これじゃ輸入するほどのものでもありません。

諦めて他を探そうかと思ったのですが、京よりも東に少し行った辺りに優れた領主がいるという噂を聞いたので、行ってみることにします。

他に行くあてもありませんからね。

どうやら田舎の小さな城にその領主はいるようです。

名前は織田信秀さんとおっしゃいます。

その頃の信秀さんの領地は大変小さく、周りには大きな領地を持つ領主達に囲まれていて、恵まれているとは言い難い状態でした。

ですが、彼はなかなかの御仁だとお見受けしました。

商業を奨励したり、農民も大切に扱っていたのです。

領地も少しずつではありますが、拡大傾向にあります。

この方であれば新しい文化を作ってくれるんじゃないかと、少し期待してしまいました。

わたしは彼の夢に入り込み、接触しました。

「信秀さん、わたしはタケイナーと言います。
少しお話しをしたいのですが、よろしいでしょうか?」

わたしの姿を見た信秀さんは腰の刀に手を掛けましたがすぐに手を引き、頭を垂れました。

あくまで夢の中の話しですからね。

わたしも信秀さんの意識の中にある神の姿を少し真似た姿で現れましたから、どうやら神のお告げだと思ってくれたようです。


「信秀さん、わたしはあなたの所領経営をお手伝いしたいと思っています。あなたはこの所領を豊かにさせたいと思っていますか?」

「いかにも。」

「では、あなたは所領が大きくなってもこれまで通り、農民や商人を保護していきますか?」

「いかにも。我が織田家では『政は民が基本』と教えられておりまする。

民なくしての所領など有りますまい。戦や天下も民の安堵のために必要なものと考えておりまする。」

「わかりました。それを守って頂けるのであれば、わたしはあなたの助けになりましょう。」

「有難く存じます。建稲種命(たけいなだねのみこと)様。」

うん?誰かと勘違いしてるかな?まあその方が都合がいいか。

こうしてわたしは織田信秀さんをサポートしてこの国に新しい文化を芽生えさせることにしたのです。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!

モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。 突然の事故で命を落とした主人公。 すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。  それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。 「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。  転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。 しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。 そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。 ※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

押し付けられた仕事、してもいいものでしょうか

章槻雅希
ファンタジー
以前書いた『押し付けられた仕事はいたしません』の別バージョンみたいな感じ。 仕事を押し付けようとする王太子に、婚約者の令嬢が周りの力を借りて抵抗する話。 会話は殆どない、地の文ばかり。 『小説家になろう』(以下、敬称略)・『アルファポリス』・『Pixiv』・自サイトに重複投稿。

前世で家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる 俺だけが使える氷魔法で異世界無双

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
家族や恋人もいなく、孤独に過ごしていた俺は、ある日自宅で倒れ、気がつくと異世界転生をしていた。 神からの定番の啓示などもなく、戸惑いながらも優しい家族の元で過ごせたのは良かったが……。 どうやら、食料事情がよくないらしい。 俺自身が美味しいものを食べたいし、大事な家族のために何とかしないと! そう思ったアレスは、あの手この手を使って行動を開始するのだった。 これは孤独だった者が家族のために奮闘したり、時に冒険に出たり、飯テロしたり、もふもふしたりと……ある意味で好き勝手に生きる物語。 しかし、それが意味するところは……。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

処理中です...