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第14章 そして神になった
26【地球誕生秘話1】
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「いっけね、ちょっと早すぎたかな!」
異世界管理局運営課ユージスは少し焦っていた。
彼は後にアースと呼ばれる伝説の世界を作ったのだが、なぜか彼の名前はその輝ける歴史に残ることはなかった。
地球歴44億年。地表のマグマは固まり、大雨が大地を洗い流し、地殻変動により隆起した大地と沈んだ海、その中でユージスは丁寧に地球を育てていた。
彼には2人の仲間がいた。ゼウスとガイア。
ガイヤが大地を創造し、ゼウスが生命が生きるために必要な様々なものを創造する。
ユージスはこの世界を繁栄させ自分達を崇めるための生命を創造することがミッションとして与えられていた。
アース・プロジェクトのリーダーとしてユージスは入社間もないゼウスとガイヤを率いて既に44億年。
他の星の多くでは20~25億年、遅くとも30億年程度で一定の成果を上げてきている。
あくまで、これまでの成熟度での基準ではあるのだが。
しかしながら既に40億年の月日が経ったにも関わらず、未だ下等生物を生み出すところまでにしか至っていない。
ユージスはかなり焦っていたのだった。
今回のアースプロジェクトは運営課の新たな取り組みでもあった。
というのも、それまでは星を作り、その世界に下等生命を誕生させ、その生命エネルギーを還元させることを目的としていた。
だが、いくつもの星造りを経て、そのコストパフォーマンスの悪さが明らかになり、運営課長は新たな取り組みを迫られていたのだ。
そこで満を持して出された案が、『自発的信仰生物』の創造であった。
『自発的信仰生物』とは、単に生命エネルギーを念出するだけの下等生物から大いなる進化をさせた生物であり、自らが文明を持ち、異世界管理局に対して生命エネルギーを自ら増大させて提供してくれる生命体の総称である。
あくまでもまだ理論の余地を出ない代物ではあったが、学会で論文発表があってからは運営課の悲願として代々の運営課長の肩に重くのしかかっている問題でもあった。
アースプロジェクトはこの『自発的信仰生物』を発生させるためのある意味実験的なプロジェクトでもあったのだ。
このプロジェクトが発足した40億年前、マスコミや世論は大いに期待し、誰もがその成功を熱望していた。
だが10億年、20億年と経つうちにその熱は諦めへと変わり始め、30億年を過ぎた頃には誰もが忘却の彼方にいた。
しかしながら、大きな予算を投じて始まったプロジェクトであるため、一定の成果を出さないわけにはいかず、このプロジェクトリーダーであるユージスは焦っていたのであった。
そしてついに彼は禁じ手に出る。
それは時空を遡って未来の生物をアースに入れることであった。
いったいそんなことが可能なのであろうか?
今であれば知的生命体と呼ばれる生物が数多く存在するが、当時にはそんなものは存在せず、『自発的信仰生物』を想像するのが関の山であった。
そのため、禁じ手である時空を遡ることについても、それほど大きなお咎めもなかったのだ。
ユージスには確信があった。例えそれが妄信的なことであったにしろ、今作っているこの星の未来に必ず『自発的信仰生物』が存在することを。
そしてユージスはゼウス達が止めるのも聞かず時間を遡り、遂に『自発的信仰生物』を見つけたのだった。
そして彼は『自発的信仰生物』である『人間』を数十人連れてきたのだった。
だが、それは少し早かったようだ。
それに気付いた時、既に人間は全て死んでいた。
そう、まだ環境が整っていなかったのだ。
人間というのは繊細な生物である。
温度、湿度、大気、食料、どれをとっても現在いる生物と同じものでは耐えられなかったのだ。
その現実の前にユージスは絶望する。
それからしばらくして、アース、そして運営課を去ることになった。
運営課長は困っていた。
運営課のエースを投入してまさかの失敗。これ以上の投資は彼の立場としては不可能であった。
そしてアースプロジェクトは終焉を迎えるかに見えたが、ゼウスやガイアが戻ることは許されなかった。
世間から忘れられたはずのプロジェクトであったアースプロジェクト。
そのリーダーであったユージスが飛び降り自殺したことで、再びマスコミが注目し騒ぎ始めたからである。
当時工作課にいたゼウスとガイヤは途方に暮れるが、どうしようもない。
だがユージスのが連れてきた『人間』の存在は彼等ふたりを勇気づけた。
当然、『人間』の存在は異世界管理局にも秘匿している。
ユージスが未来に遡ったこと自体は既に発覚しているが、『人間』を連れてきていたことは3人の秘密であった。
『人間』が未来に存在したということは『自発的信仰生物』を造れたということに他ならないからだ。
こうして誰からも見放されたアースプロジェクトは、ゼウスとガイヤのふたりによって再始動したのだった。
異世界管理局運営課ユージスは少し焦っていた。
彼は後にアースと呼ばれる伝説の世界を作ったのだが、なぜか彼の名前はその輝ける歴史に残ることはなかった。
地球歴44億年。地表のマグマは固まり、大雨が大地を洗い流し、地殻変動により隆起した大地と沈んだ海、その中でユージスは丁寧に地球を育てていた。
彼には2人の仲間がいた。ゼウスとガイア。
ガイヤが大地を創造し、ゼウスが生命が生きるために必要な様々なものを創造する。
ユージスはこの世界を繁栄させ自分達を崇めるための生命を創造することがミッションとして与えられていた。
アース・プロジェクトのリーダーとしてユージスは入社間もないゼウスとガイヤを率いて既に44億年。
他の星の多くでは20~25億年、遅くとも30億年程度で一定の成果を上げてきている。
あくまで、これまでの成熟度での基準ではあるのだが。
しかしながら既に40億年の月日が経ったにも関わらず、未だ下等生物を生み出すところまでにしか至っていない。
ユージスはかなり焦っていたのだった。
今回のアースプロジェクトは運営課の新たな取り組みでもあった。
というのも、それまでは星を作り、その世界に下等生命を誕生させ、その生命エネルギーを還元させることを目的としていた。
だが、いくつもの星造りを経て、そのコストパフォーマンスの悪さが明らかになり、運営課長は新たな取り組みを迫られていたのだ。
そこで満を持して出された案が、『自発的信仰生物』の創造であった。
『自発的信仰生物』とは、単に生命エネルギーを念出するだけの下等生物から大いなる進化をさせた生物であり、自らが文明を持ち、異世界管理局に対して生命エネルギーを自ら増大させて提供してくれる生命体の総称である。
あくまでもまだ理論の余地を出ない代物ではあったが、学会で論文発表があってからは運営課の悲願として代々の運営課長の肩に重くのしかかっている問題でもあった。
アースプロジェクトはこの『自発的信仰生物』を発生させるためのある意味実験的なプロジェクトでもあったのだ。
このプロジェクトが発足した40億年前、マスコミや世論は大いに期待し、誰もがその成功を熱望していた。
だが10億年、20億年と経つうちにその熱は諦めへと変わり始め、30億年を過ぎた頃には誰もが忘却の彼方にいた。
しかしながら、大きな予算を投じて始まったプロジェクトであるため、一定の成果を出さないわけにはいかず、このプロジェクトリーダーであるユージスは焦っていたのであった。
そしてついに彼は禁じ手に出る。
それは時空を遡って未来の生物をアースに入れることであった。
いったいそんなことが可能なのであろうか?
今であれば知的生命体と呼ばれる生物が数多く存在するが、当時にはそんなものは存在せず、『自発的信仰生物』を想像するのが関の山であった。
そのため、禁じ手である時空を遡ることについても、それほど大きなお咎めもなかったのだ。
ユージスには確信があった。例えそれが妄信的なことであったにしろ、今作っているこの星の未来に必ず『自発的信仰生物』が存在することを。
そしてユージスはゼウス達が止めるのも聞かず時間を遡り、遂に『自発的信仰生物』を見つけたのだった。
そして彼は『自発的信仰生物』である『人間』を数十人連れてきたのだった。
だが、それは少し早かったようだ。
それに気付いた時、既に人間は全て死んでいた。
そう、まだ環境が整っていなかったのだ。
人間というのは繊細な生物である。
温度、湿度、大気、食料、どれをとっても現在いる生物と同じものでは耐えられなかったのだ。
その現実の前にユージスは絶望する。
それからしばらくして、アース、そして運営課を去ることになった。
運営課長は困っていた。
運営課のエースを投入してまさかの失敗。これ以上の投資は彼の立場としては不可能であった。
そしてアースプロジェクトは終焉を迎えるかに見えたが、ゼウスやガイアが戻ることは許されなかった。
世間から忘れられたはずのプロジェクトであったアースプロジェクト。
そのリーダーであったユージスが飛び降り自殺したことで、再びマスコミが注目し騒ぎ始めたからである。
当時工作課にいたゼウスとガイヤは途方に暮れるが、どうしようもない。
だがユージスのが連れてきた『人間』の存在は彼等ふたりを勇気づけた。
当然、『人間』の存在は異世界管理局にも秘匿している。
ユージスが未来に遡ったこと自体は既に発覚しているが、『人間』を連れてきていたことは3人の秘密であった。
『人間』が未来に存在したということは『自発的信仰生物』を造れたということに他ならないからだ。
こうして誰からも見放されたアースプロジェクトは、ゼウスとガイヤのふたりによって再始動したのだった。
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