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第11章 ランスの恋

20 【セラフが居なくなった】

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<<マサル視点>>
国際連合総会にスリトー国一行が到着した。

もちろんその中にヤマトー外務大臣の姿は無い。

その夜、ヘンリー宰相、スリトー王と3人で経緯を確認した。

俺は逐次セラフ様から連絡をもらっていたので、逐次ヘンリー様とも情報共有していた。

「ヘンリー殿、マサル殿、この度は本当に助かりました。本当にありがとう。」

「セラフが頑張ってくれたようですね。本当に良かったです。」

「マサル殿、本当に助かった。彼女が居なければ今頃どうなっていたか。

彼女はマサル殿の弟子か何かですか?見事な魔法を駆使しておられたようでしたが?」

「ま、まあ、そんなところです。」

「マサル殿、そのセラフというものは、お茶会で有名な?」

ヘンリー様にも突っ込まれ、少し慌てるが、冷静を装いながら説明する。

「そうです。実は彼女はわたしの故郷の知人でわたしの弟子としてこちらに来ているのです。

このことは内密に。」

ヘンリー様はピンと来たのか、それ以上の追及をやめてくれたが、スリトー王はそうはいかない。

「マサル殿、彼女には本当にお世話になった。
何かお礼をしたかったのだが、何も受け取らず帰ってしまったのだ。」

「では、日を改めてセラフを連れてスリトー王国を訪問させていただきます。」

「是非そうして欲しい。よろしくお願いする。」

ちょっと困ったことになってしまった。



<<ランス視点>>
セラフが突然戻ってきた。向こうの騒動は解決したようだ。

「ランス、ただいま。」

「セラフお帰り。」

「桜。」

「桜?ああ、花見か。そうだね今日あたり満開になっていると思うよ。」

「すぐに行く。」

セラフは僕の手を引いて庁舎中庭に急ぐ。

途中で出会ったイリヤやセイル、ハリーももちろんついてくる。

少し遅れて侍女頭のメアリがやって来た。

「はあはあ、ランス様突然ですねぇ。とりあえず、見繕ってきました。はいっ。」

メアリが広げてくれた包みにはたくさんの食べ物や飲み物は入っていた。

「たくさん召し上がれ。」


メアリが屋敷に戻っていき、僕達はお花見を楽しんだ。

翌日、僕はセラフを誘いに部屋に行ったが、そこにセラフはいなかった。



<<リザベート視点>>
セラフ様の部屋の前で佇むランスにどう声を掛けようか迷います。

実は早朝マリス様が枕元に現れ、セラフ様を連れ戻したことをお話し下さいました。

ランスのことを心配して下さっていたので、気になっていたのです。

早朝、セラフ様の担当にしていたメイドからセラフ様が居ないことが告げられたので説明しておきました。

メイドがベッドの片付けを終えてからランスがセラフ様の部屋に行って、何もない部屋に驚いたようです。

「ランス、よく聞いて。今朝早朝にマリス様が来られて、急用でセラフ様を急遽呼び戻したそうなの。

セラフ様もあなたとお別れをしたかったみたいだけど、都合が合わないみたい。」

ランスは首を垂れたまま、無言で部屋へと戻っていきました。

朝食の席で、今朝の話しをみんなにします。

マサルさんやイリヤはもちろん、使用人の皆んなもとっても寂しそうです。

セラフ様が突然お越しになってほぼ1年、半年はスリトー王国に行っておられたので、実質半年ほどでしょうか。

彼女が置いていった思い出は皆んなにとって、大きいものでした。



<<セラフ視点>>
マリス様の部屋に久ぶりに戻ってきた。

こちらの世界で人間の1年なんてあっという間ですが、この1年はわたしにとって非常に楽しいものでした。

特に思い残すこともありません…… いえ、ひとつあります。

わたしはマリス様に一つだけお願いしました。

マリス様は苦い顔をしながらも了承してくださいました。



一番大きな桜の木の下、ちょうど1年前のあの日と同じようにランスがそこに立っていました。
わたしはランスに声をかけます。

「ランス、ランス、ごめんね突然居なくなって。」

「セラフ、どうしたんだよ。もう一度こっちに来れないの?」

「無理。ごめんね。」

「セラフ、セラフ、どうしても、どうしてもだめなの?」

「ごめんね。ランス楽しかった。ありがとう。」

わたしがそれだけ言ったところで、わたしの姿は消えていきました。

ランスが私に話しかけているのが見えます。

でももうこちらの声は届きません。

「ありがとう。 そしてサヨナラ、ランス。」


第11章 完
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