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第11章 ランスの恋

8 【お茶会1】

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<<リザベート視点>>
マサル共和国が建国して1年余り経ちました。

転移門のおかげで、島国なのにも関わらず訪れ易いためか、たくさんの観光客がお見えになられます。

最初の頃は貴族中心でしたが、最近は珍しい品物を探しに来る商人や、流行に敏感なお洒落さん、食に目の無い美食家の皆さんも増えています。

そうそう、庶民の方々でも新婚旅行で来られる方が増えています。

わたし達の新婚旅行が世界初と言われて久しいですが、今ではすっかり一般的になりました。

この国には観光に適した場所が比較的近い場所に揃っているので、新婚旅行に向いているのでしょうね。

スポックさん達も観光案内所を作ったり、公営の宿泊施設を作ったりして、新婚旅行等の滞在型観光客の誘致を推進しています。

カトウ運輸では観光ガイドを作成して、各国で販売しているようです。

カトウ運輸が街道を整備して安全に旅が出来るようになっても、まだまだ庶民にとっては、旅に出るのは敷居が高いものですが、マサル共和国の場合は、転移門を使えばすぐに来れるのでそれも人気の要因でしょうね。

転移門の数もずいぶん増えました。これまでは各国に設置している転移門の数だけ、こちらにも用意していましたが、最近は国毎に一つに統合しました。

こちら側の転移門は、その国の大使館に移動し、自国内の通行を各国に委ねましたので、各国の地方部にも転移門を設置さえすれば大使館を経由して各国内での移動も容易になるようになりました。

そのため、各国内に設置される転移門の数もずいぶんと増えています。

現在転移門はマサル共和国内の秘密の場所で量産して各国の領主に販売しています。



こんな感じで、マサル共和国に人が集まるようになって来る環境がますます広がっています。

庶民の方々が気軽に来れるようになって、貴族達の動きも変わって来ました。

これまでのような観光での来訪は少なくなり、お忍びやプライベートでの来訪が目立ちます。

ちょっと散歩がてらといったところでしょうか。

まぁ自領では、ある程度威厳を保った行動を要求されますから、転移門で気軽に来れる外国は、気が休まり魅力的なのでしょう。


各国の各領地と気軽に行き来ができるようになった反面、困ったことも起きています。

各国の貴族の方々から、わたしへのお茶会のお誘いが急増しているのです。

毎日2、3件のお誘いがあり、全てに対応することは物理的に不可能です。

お断りすると、後々面倒なことになる可能性もあり、頭が痛いです。

「そんなのウチでやったらいいんじゃない。」

悩んでいるとイリヤがこともなげに言います。

そうです、ウチでやればいいんですよね。

わたしは早速マサルさんに頼んで、お茶会専用の大会議場を作ってもらうことにしました。

300人くらい収容できる大きさのものです。

丸机をたくさん置き、くじ引きで席を決めるようにすれば、面倒なことを考える必要もありません。

あっという間にできた巨大お茶会場には、植物園や動物園、大食堂なども隣接していて、お客様を飽きさせない趣向でいっぱいでした。

相変わらずマサルさんの発想はすごいですね。

わたしは、各国首脳の奥様方にお手紙をしたため、ウチでのお茶会開催の理由と、各領主夫人へのお誘い合わせをお願いしました。

2,3日もすると数えきれないほどの参加希望がきました。

とりあえず国毎に開催することにして、隔日で1ヶ国の割合でスケジュールを作りました。

本日はトカーイ帝国の皆さんがお見えです。

会場には100名を超えるご婦人が集まり、それぞれに専属の侍女がついているため、200人以上の人で溢れかえっています。


「皆様、本日はお忙しい中お集まり頂きまして有難うございます。

このような盛大な場を調整頂いたマリアナ皇帝陛下夫人に感謝いたします。

本日は至らぬところもあるかと存じますが、是非ごゆっくりとお過ごし下さいませ。

隣には植物園や動物園もございますので、合間にご観覧いただけましたらと思います。

従者の方々には、大食堂でお食事もご用意しておりますのでどうぞご利用下さいませ。」


お義母様やマリアナ様の挨拶が続き、盛大なお茶会は始まりました。

普段顔合わせすることの無い地方の領主夫人も多いので、お知り合いを通じてのご挨拶が多いですね。

わたしやお義母様、マリアナ様もできるだけ、あちこちの席を回っています。

1時間位した頃から、歓談場所を植物園や動物園に移される方々も見られ、なかなか盛況です。

4時間のお茶会を終える頃には、各領主夫人間での交流も自然となり、和気あいあいとした雰囲気が漂っていました。


「ユーリスタ様、リザベート様、本日はこのような素晴らしいお茶会を設けて頂いて感謝します。

転移門が出来て各領地間の行き来はスムーズになりましたが、まだまだ派閥の括りが根強く、領地間の溝が埋まるところまでに至っていませんでしたが、本日のお茶会で少なくともご婦人方は派閥の壁を越えられるのではないかと思います。

わが国でも同じようなことを試してみようと思います。

今後は、国を跨っての交流や、テーマを決めての勉強会のようなものにしても良いかもしれませんね。」

マリアナ様のお言葉を頂き、本日のお茶会も無事終了したことをホッとしています。
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