191 / 382
第8章 亜人大陸の開発
22 【中央集権制】
しおりを挟む
<<ハリー視点>>
「『中央集権制』とは?」
「はい『中央集権制』とは、制度や法律、徴税、民への保障等を国が集中して行う考え方です。
現在のような、各地の領主が独自のルールで治めることを『地方分権制』と言います。
『地方分権制』は各地の特色に合わせた政治が可能なため、うまく運用できれば非常に良いのですが、反面土地の肥え具合や寒暖により、領土間での貧富が出てしまいます。
『中央集権制』では、各地に施政官を配置し、基本全国一律のルールを適用しますので、地方毎の特色いかんでは不満が出ることはありますが、各地方毎の条例を付与する形で補っていきます。
また各地の収穫見込み高に合わせて徴税を行いますので、土地の豊かさによる貧富は生まれにくくなります。
徴税した税収は、国が一元管理しますから、民の生活水準に合わせて再分配することも可能です。
そして何よりのメリットは、各地の施政官は任期を決めて国から派遣できることです。
現状問題になっているのは、世襲制の領主が『地方分権制』を悪用していることです。
ですから、一度『中央集権制』に変更して世襲制をやめ、その後一部を『地方分権』していくことがわたしのおすすめです。」
「しかし、そうすると地方の有力者が困るのではないか?」
「それについてはある程度の覚悟は必要だと思います。
ただ、今回は大規模なクーデターに加担していたという事実があります。
大領地から領地没収していき『中央集権化』していきます。
有力者である現当主を改易し、その後継者のうち適任者を施政官として国から任命します。
施政官は1代限りですから、次代がボンクラであればその家は没落してしまうでしょう。
そうならないためにも教育や施政に力を注いでくれることを期待するべきだと思います。
また、施政官として有力なものが2人以上いる場合は中央の役人として取り立てるべきです。
そうすることで、有力者の家系が継承される可能性が高くなることが分かれば、国と有力者の軋轢を抑えることもできると思います。
また、当面『地方分権制』を残す領地であっても施政官を国から派遣するようにしていくように変更していくのが良いと思います。
どちらにしても、国の直轄地が増えることで、各有力者の力は相対的に弱まりますから、国がコントロールできるようになるでしょう。」
「カトウ殿、仕組みはよくわかったが、具体的な施策が良く見えん。
ハリー、お前にはわかるか?」
「カトウ公爵様がおっしゃることは理解できます。
ただ、陛下のおっしゃるように、過程が問題です。『中央集権制』を進めようとするための資金や人的資産が圧倒的に不足しています。」
「それに関しては、わたしの方でバックアップさせて頂きます。
まずは、経済を発展させるために、農業、商業、工業を推進し、3国と正式な交易をおこないます。
また、教育制度を充実させ、人材育成と思想変革を行っていきます。
さらに、スラムや貧農等従来は働き手として勘定していなかった層を労働者として採用し、国民全体の生活水準を高めていきましょう。
これらに関しては、私どものカトウ運輸が各地に物流センターを展開する時に、実施してきた内容ですので既にいくつもの実績があります。
また、3国でもこれらを推進できるリーダーが育ってきていますので、援助してもらうことも可能でしょう。
ラモス陛下も3国の族長とお会いになられて、このあたりの相談をされてみてはいかがでしょうか?」
本当にできるのであれば願ってもないチャンスだといえよう。
「陛下、わたしが先に3国を視察してどのように進めるべきか考えて来ましょうか?」
「いやハリー、わたしも一緒に行こう。その前に、各領主に今回の罰を与えねばならぬ。
まずは全ての当主の改易と後継者の面談から始めるべきか。忙しくなるぞハリー。」
「はい、陛下。」
どうやら陛下も腹をくくられたようだ。
わたしも頑張らねば。
1ヶ月後、ほぼ全ての領主が改易となり、新しい後継者が国の施政官として任命された。
当面は、清廉な政治が続くだろう。
その間に、完全な中央集権を実現するべきだと思う。
それが民のためになるのだから。
なお、どこから漏れたのかはわからないが、カトウ公爵様達の活躍は、活劇として舞台化された。
娯楽の少ない民たちには、良いガス抜きになったみたいで、カトウ公爵様達はあっという間に我が国のヒーローとなった。
特にランス君とイリヤちゃんは、そのかわいさも相まってアイドルと化している。
なお有力者の一部に謀反を企む者もいたが、身内にカトウ公爵様を畏怖するものも多く、そのほとんどが内通で未遂に終わっていた。
本当にカトウ公爵様は不思議なお人だ。
クルーのクーデターから6ヶ月後、すっかり落ち着いた国内を新しい官僚達に任せ、陛下とわたしは数名の担当者を伴い、3国の視察に出かけた。
我が国とは全く違い活気に満ち溢れ、物も豊富で、様々な種族が入り混じった街を見ると、カトウ公爵様のおっしゃる『経済戦争』に参加するのが最善に思えてくる。
お忍びで街を歩く陛下も同様の考えで、住民や店主から様々な話しを聞いておられるようだ。
視察を始めて3国目のヤコブ最終日に、居酒屋で食事を摂った。
大きな声で笑いあい豪快に酒を酌み交わすドワーフ達に交じって楽しそうに話している、知った顔の獣人がいた。
どうやら店の常連で、その店の看板娘と恋仲になっているようだ。
一緒にいるドワーフ達の話しを盗み聞きしていると、彼はカトウ運輸で働いていて、もうかれこれ1年以上看板娘を口説いた結果、最近ようやく恋仲になったそうだ。
わたしは声を掛けようかと思いやめた。
良い人生を送って欲しいと心から願う。
「『中央集権制』とは?」
「はい『中央集権制』とは、制度や法律、徴税、民への保障等を国が集中して行う考え方です。
現在のような、各地の領主が独自のルールで治めることを『地方分権制』と言います。
『地方分権制』は各地の特色に合わせた政治が可能なため、うまく運用できれば非常に良いのですが、反面土地の肥え具合や寒暖により、領土間での貧富が出てしまいます。
『中央集権制』では、各地に施政官を配置し、基本全国一律のルールを適用しますので、地方毎の特色いかんでは不満が出ることはありますが、各地方毎の条例を付与する形で補っていきます。
また各地の収穫見込み高に合わせて徴税を行いますので、土地の豊かさによる貧富は生まれにくくなります。
徴税した税収は、国が一元管理しますから、民の生活水準に合わせて再分配することも可能です。
そして何よりのメリットは、各地の施政官は任期を決めて国から派遣できることです。
現状問題になっているのは、世襲制の領主が『地方分権制』を悪用していることです。
ですから、一度『中央集権制』に変更して世襲制をやめ、その後一部を『地方分権』していくことがわたしのおすすめです。」
「しかし、そうすると地方の有力者が困るのではないか?」
「それについてはある程度の覚悟は必要だと思います。
ただ、今回は大規模なクーデターに加担していたという事実があります。
大領地から領地没収していき『中央集権化』していきます。
有力者である現当主を改易し、その後継者のうち適任者を施政官として国から任命します。
施政官は1代限りですから、次代がボンクラであればその家は没落してしまうでしょう。
そうならないためにも教育や施政に力を注いでくれることを期待するべきだと思います。
また、施政官として有力なものが2人以上いる場合は中央の役人として取り立てるべきです。
そうすることで、有力者の家系が継承される可能性が高くなることが分かれば、国と有力者の軋轢を抑えることもできると思います。
また、当面『地方分権制』を残す領地であっても施政官を国から派遣するようにしていくように変更していくのが良いと思います。
どちらにしても、国の直轄地が増えることで、各有力者の力は相対的に弱まりますから、国がコントロールできるようになるでしょう。」
「カトウ殿、仕組みはよくわかったが、具体的な施策が良く見えん。
ハリー、お前にはわかるか?」
「カトウ公爵様がおっしゃることは理解できます。
ただ、陛下のおっしゃるように、過程が問題です。『中央集権制』を進めようとするための資金や人的資産が圧倒的に不足しています。」
「それに関しては、わたしの方でバックアップさせて頂きます。
まずは、経済を発展させるために、農業、商業、工業を推進し、3国と正式な交易をおこないます。
また、教育制度を充実させ、人材育成と思想変革を行っていきます。
さらに、スラムや貧農等従来は働き手として勘定していなかった層を労働者として採用し、国民全体の生活水準を高めていきましょう。
これらに関しては、私どものカトウ運輸が各地に物流センターを展開する時に、実施してきた内容ですので既にいくつもの実績があります。
また、3国でもこれらを推進できるリーダーが育ってきていますので、援助してもらうことも可能でしょう。
ラモス陛下も3国の族長とお会いになられて、このあたりの相談をされてみてはいかがでしょうか?」
本当にできるのであれば願ってもないチャンスだといえよう。
「陛下、わたしが先に3国を視察してどのように進めるべきか考えて来ましょうか?」
「いやハリー、わたしも一緒に行こう。その前に、各領主に今回の罰を与えねばならぬ。
まずは全ての当主の改易と後継者の面談から始めるべきか。忙しくなるぞハリー。」
「はい、陛下。」
どうやら陛下も腹をくくられたようだ。
わたしも頑張らねば。
1ヶ月後、ほぼ全ての領主が改易となり、新しい後継者が国の施政官として任命された。
当面は、清廉な政治が続くだろう。
その間に、完全な中央集権を実現するべきだと思う。
それが民のためになるのだから。
なお、どこから漏れたのかはわからないが、カトウ公爵様達の活躍は、活劇として舞台化された。
娯楽の少ない民たちには、良いガス抜きになったみたいで、カトウ公爵様達はあっという間に我が国のヒーローとなった。
特にランス君とイリヤちゃんは、そのかわいさも相まってアイドルと化している。
なお有力者の一部に謀反を企む者もいたが、身内にカトウ公爵様を畏怖するものも多く、そのほとんどが内通で未遂に終わっていた。
本当にカトウ公爵様は不思議なお人だ。
クルーのクーデターから6ヶ月後、すっかり落ち着いた国内を新しい官僚達に任せ、陛下とわたしは数名の担当者を伴い、3国の視察に出かけた。
我が国とは全く違い活気に満ち溢れ、物も豊富で、様々な種族が入り混じった街を見ると、カトウ公爵様のおっしゃる『経済戦争』に参加するのが最善に思えてくる。
お忍びで街を歩く陛下も同様の考えで、住民や店主から様々な話しを聞いておられるようだ。
視察を始めて3国目のヤコブ最終日に、居酒屋で食事を摂った。
大きな声で笑いあい豪快に酒を酌み交わすドワーフ達に交じって楽しそうに話している、知った顔の獣人がいた。
どうやら店の常連で、その店の看板娘と恋仲になっているようだ。
一緒にいるドワーフ達の話しを盗み聞きしていると、彼はカトウ運輸で働いていて、もうかれこれ1年以上看板娘を口説いた結果、最近ようやく恋仲になったそうだ。
わたしは声を掛けようかと思いやめた。
良い人生を送って欲しいと心から願う。
0
お気に入りに追加
331
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!
モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。
突然の事故で命を落とした主人公。
すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。
それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。
「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。
転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。
しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。
そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。
※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。
前世で家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる 俺だけが使える氷魔法で異世界無双
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
家族や恋人もいなく、孤独に過ごしていた俺は、ある日自宅で倒れ、気がつくと異世界転生をしていた。
神からの定番の啓示などもなく、戸惑いながらも優しい家族の元で過ごせたのは良かったが……。
どうやら、食料事情がよくないらしい。
俺自身が美味しいものを食べたいし、大事な家族のために何とかしないと!
そう思ったアレスは、あの手この手を使って行動を開始するのだった。
これは孤独だった者が家族のために奮闘したり、時に冒険に出たり、飯テロしたり、もふもふしたりと……ある意味で好き勝手に生きる物語。
しかし、それが意味するところは……。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる