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第8章 亜人大陸の開発

19 【クルーの悪あがき】

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<<スパニ宰相ハリー視点>>
屋敷に戻って来た。
早急に王宮に向かい、陛下にお目通りを願うつもりだ。

「ハリー殿、既にランスが山賊のアジトを包囲してから3日経っています。

クルーが察知して待ち伏せしている可能性があります。

わたし達が護衛しましょう。」

たしかにカトウ公爵様の申し出は有り難い。

他国の王家に連なる有力者に護衛をして頂くのは心苦しいが、大事の前の小事とさせて頂こう。

「申し訳ありませんが、お言葉に甘えさせて頂きます。」

「では、準備をしますので、わたしのトラック馬車で行きましょう。」

準備はすぐに終わったみたいで、時間を待たずに、我々は王宮に向かった。


「お止まり下さい!!」

王宮の門を潜ろうとした時、馬車が門番に止められた。

「ハリー様、申し訳ありません。
陛下より戒厳令が出ておりまして、なんびともここを通すなとのことです。

申し訳ありませんが、裏門にお巡り下さいますでしょうか?」

「戒厳令と!!
何かあったのか?」

「申し訳ありません。わたしは何も聞かされておりません。」

これ以上聞いても、何も出てこないだろう。

あったとすればクルーの謀反か。
いやそれは考えにくいが。
とにかく陛下の元に急ごう。

馬車は裏門に向かって急がせた。

「ハリー殿、気をつけて下さいね。

裏門の中に兵士が20人ほど集まっています。

あと、王宮の最上階にある部屋でも10人ほどの兵士が固まっています。

もしかすると、陛下が拘束されているのかもしれません。」

カトウ公爵様の言葉に、わたしはクルーの謀反を確信した。

「わたしは先に陛下の救出に向かいます。

この馬車は強力な結界が張ってあるので、物理、魔法両方の攻撃を防ぎます。

わたしが連絡するまで、この馬車から降りないようにお願いしますね。

ランス、イリヤ、ハリー殿を頼んだよ。」

「「お父様、了解です!」」

「ハリー殿、行ってきます。

『光学迷彩』」

カトウ公爵の姿が消え、扉が開いてすぐに閉じた。

よくわからないが、陛下とわたしに危機が迫っているのは確かなようである。

「ハリー様、僕達がお守りしますので安心して下さい。」

幼いランス君の言葉に、わたしは一抹の不安を感じていた。



<<マサル視点>>
光魔法『光学迷彩』で体を隠した俺は、王宮内の陛下が捕らえられているであろう部屋へ急いだ。

屋上庭園からその部屋の窓越しに中を確認する。

兵士達に混じり青白い顔をした長身の蜥蜴の獣人が1人。
そして彼等に囲まれるように、王冠を被った獅子の獣人がいた。

蜥蜴の獣人が獅子の獣人を見下ろし笑っている。

「陛下、もう終わりです。この国はわたしが頂きますよ。
ではさようなら。
うっ、け、剣が動かない。」

蜥蜴の手に握られた剣が獅子を貫こうとした時、俺は転移で移動し、その剣を掴んでいた。

風魔法で蜥蜴を含む兵士達を一ヶ所に吹き飛ばし、『バインド』魔法で拘束した。

縛られたままの王の周りと、蜥蜴達の周りに別々の結界を張り、トランシーバーでランスに連絡する。

「ランス、聞こえるか?」

「あっ、お父様聞こえるよ。」

「こっちは終わった。
そっちはどうだ?」

「うん、兵士達に囲まれているけどね。

でも大丈夫だよ。今から無力化するから。

僕もお父様みたいに『光学迷彩』が使える様になったんだ。

無力化したら、全員馬車に載せてお父様のところへ行くよ。」

「分かった。無理をしないようにな。

あっそうだ、こちらに来る時はイリヤにも『光学迷彩』を掛けてやってくれ。

その方が不審感を持たれないで良いと思う。」

「分かったよ。じゃあね。」

しばらくしてハリー殿と『光学迷彩』で姿を消した子供達が入ってきた。



「陛下ご無事でしたか。」

「ハリーか。クルーが、謀反を起こしおったのじゃ…が……」

ことの顛末とわたし達のことは、ハリー殿が上手く説明してくれるだろう。



<<ハリー視点>>
カトウ公爵様が消えてから馬車には、わたしと彼の子供達が残された。

馬車がそのまま裏門に差し掛かると、大勢の兵士達が行く手を遮るように馬車の前に出てきた。

「止まれ!不審な馬車。中を改める。

おー、これはこれはハリー様、こんな裏門から密かに入宮とは、いかがなされましたかな?」

クルーの側近であるサリーがわたしを蔑むような目を向けている。

馬車を囲む兵士達の持つ槍が一斉にわたしに向けられた。

わたしは一緒に馬車の中にいるイリヤちゃんを見た。

さぞかし怖がっているだろうと思っていたが、予想に反してニコニコしている。

不審に思っていると、彼女は「お兄ちゃんが、すぐに終わらせてくれますよ。結界もありますしね。」と、のほほんとしている。

そうだ、ランス君が馭者席にいたはず。
助けてあげなくては。

ランスくんを室内に呼ぼうと馭者席を見ると、そこにいるはずのランスくんが見当たらない。

わたしがランスくんを探していると、周りを囲んでいる兵士の妙な動きに気付いた。

兵士達が何の前触れもなく次々に気絶していくのだ。

槍を持った兵士が次々に膝から崩れていく。

「何をしている!馬車を攻撃してハリーを仕留めるのだ!」

何が起こっているのか全く分からないのは、わたしもサリーも同じだ。

焦ったサリーが兵士に檄を飛ばす。

最前列にいた兵士が槍で馬車を突いて来たが、その槍は馬車の10 数センチ前で鈍い音を立てて止まった。

何度も槍を突き立てるが結果は同じだ。

そうこうしている間に、兵士達は全て崩れ落ちてしまった。

「いったい?……… 」ドタッ

サリーもその言葉を最後に崩れ落ちたのだった。

サリーが立っていた場所には、和かに微笑むランス君が立っていた。
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