最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

まーくん

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第8章 亜人大陸の開発

15【スパニの実情】

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<<スパニ族カチヤ視点>>
わたしはスパニ族有力者バァイフ家の長女カチヤ。
誇り高き白狼の獣人だ。

わたしの家は、代々ロンドーと国境を接するバァイフの街を治めている。

今スパニの各地は、重税と徴兵に疲弊している。

我がバァイフの街も中央からの無理な要求により、住民のロンドーへの逃亡が日増しに増えている。

我が家も資産を投げ出し、住民の保護に奔走するが、どうにもならない状況まで追い詰められていた。



スパニは軍事力で大きくなってきた国だ。

近隣の小国を次々と武力により飲み込み、国を大きくしてきた。

族長のラモス様は建国以来の武力を持ち『歴代最強王』の異名を持つ。

それゆえ、武力による富国政策を取る傾向が強い。

それを『賢者』の異名を持つ宰相のハリー様が、上手くバランスをとりながら、政治を回してきた。

ところが近年頭角をあらわしてきた軍務長官クルーが力を持ち始めると、事態が変わってきた。

クルーは内政官や領主を次々と籠絡し、陛下やハリー様にも内緒で勝手に税率を上げた。

もちろん、税で増えた分は国庫には入れずに自らの懐に入れている。

ラモス様やハリー様には大幅に改鼠した書類を回させることで、バレないように画策させている。

また陛下を言葉巧みに誘導し、勅命の名の元に次々と軍事力の拡大を進めたのだ。

結果、この惨状に至る。

疲弊した民は次々と故郷を捨て、官吏は自らが国外逃亡するために私腹を肥やそうとする。

中央だけでは無い。
地方においても同様だ。

地方の各領主は自らの不正を晒すようなことをするわけもなく、帳簿を誤魔化して報告するものだから、地方における実際の惨状は中央で、いくら清貧な官僚が残っていたとしても掴み切れていないだろう。


半年前に宰相のハリー様が、人口の減少に気付かれ、調査を開始された。

未だ調査結果は出ていないが、明らかに減っており、そこから試算される税収と実際に報告されている税収に大きすぎる差がある可能性が出てきた。

中央の監察官から出てきた調査結果とは別に、ハリー様は自らの手の者も使って調査させた。

不正を働く地方領主達は、クルーに籠絡されている監察官達と口裏を合わせ、あまり相違の無い報告を双方に提出した。

もちろんその数値は、クルーがあらかじめ用意数値であり、これまで中央に報告されているものと同一のものである。

バァイフ領の分も監察官は擬装された報告書をハリー様の派遣した担当官に提出するよう、わたしの父上に強要してきた。

どうしても不正を看過出来なかった父上は、監察官にはそれを承諾するフリをして、正しい報告書をハリー様に提出したのだった。



それから2週間後、バァイフ領は大規模な山賊団に急襲されたのだ。

夜半に突如現れた山賊団は領都のバァイフの街を襲い、我が家に火を放った。

父上やわたし、そして私兵が奮戦するも、山賊団の戦力は想像以上に大きく、そしてまるで兵士を相手にしているように鍛えられていた。

「カチヤ、お前だけでもにげろ。
逃げて、真実を明らかにしてくれ。

この国はもうダメだ。芯から腐ってきている。

ロンドーのアーク陛下は、仁徳で知られている。

必ずやお前の力になって頂けるであろう。

ロンドーに行け!行ってわたしの無念を晴らしてくれ!」

「父上……
分かりました。必ずこの仇はわたしが……、わたしが……」

わたしは敵の壁が手薄なところを見極め、剣を振るいながらそこを突破して外に出ました。

裏口に抜ける通路が空いていたため、そこから裏口に抜けて脇目も振らずにロンドーとの国境に向かって走りました。

父上のことは気掛かりでしたが、わたしも歴戦の戦士、気持ちを奮い立たせ、走り続ける。

「あっちに逃げて行く奴がいるぞ!
逃すな!!」

見つかったようですが、関係ない。



国境には既に検問が張られていた。
国境の山を大きく迂回し、谷伝いに国境線を越えたようだ。

既に追っ手の姿は無く、無事ロンドーに入れたようだ。

ロンドー側の国境を越えた森に入ったところで、わたしはようやく足を止めた。

ここまで丸2日、ひたすら走り続けたわたしは、もう限界に達していたのだ。

そしてわたしは油断していた。

うとうとして、人の気配に気が付いた時には、大勢の山賊達に囲まれていたのだった。

「へへっ、ようやく見つけたぜ。
手間をとらせやがって。」
「なかなか良い女じゃないか。
すぐに殺したんじゃもったいないぜ。」
「やっちまうか。」

下卑た会話をしながら、そいつらは近づいてくる。

わたしは疲れた体を引きずり剣を構える。

数えきれないほどの敵を倒し、道もない山を切り開いてきた剣は既にぼろぼろだったのだろう。

山賊達と剣を交えているうちに、わたしの剣はとうとう折れてしまった。

「さあ、剣が折れてしまったらどうしようもあるめえ。大人しく言うとおりにするんだな。」

男の1人が不用意に手を掴みに来たので、わたしはその手を取り、男達の方にその男を投げつけてやった。

男が飛んできたことに驚いて一瞬出来た隙間をわたしは駆け抜けようとしたのだが、数メートル進んだところで足がもつれ、転倒してしまった。

再び男達に囲まれたわたしに、もはや逃げる術はない。

男達の手が伸びてきた。

「く、来るなー。やめろー。」

わたしは大声で叫んだ。

まだ男を知らないわたしにとって、そいつらの下卑た顔がとてつもなく恐ろしいものに見えたのだ。

男の手がわたしにまとわり、鎧を脱がそうとしてくる。
別の男の手は足を拘束し、他の男の手もわたしの体を触ってきた。

「やめろ。やめてくれ。お願いだ……」

わたしの懇願は彼等の嗜虐心を余計にあおるだけだった。

もうあきらめかけて、自らによる死を覚悟した時、わたしの足を拘束していた男が突然吹き飛んだ。

続いて、別の男達もどんどん吹き飛ばされていく。

最後にわたしの鎧を剥いで下着を掴んでいた男が吹き飛んだ時、わたしはそこに幼い少年と少女の姿を見たのでだった。
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