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第8章 亜人大陸の開発

12 【コリーの報告】

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<<ヤコブに潜入中のコリー視点>>
商店でこの国の変化に気付いた俺は、早速調査に乗り出した。

街の調査というと、酒場からが鉄則だろう。

ヤコブの酒場はかなり酒臭くて閉口してしまうが、しようがない。

酒場はわたしの予想通り酒臭くて活気に満ちている。

ただ予想外だったのは、ドワーフ以外が意外に多かったことだ。

ヤコブの工房が作る品物はどれもこの大陸有数の高品質なので、それを求めて他国の商人がいることはそれなりにあった。

しかし、宿屋で食事するのがほとんどで、酒場に来るのは珍しかった。

以前の酒場には、喉が焼け付くような火酒とか、それに合う酷く濃い味のツマミしか置いていなかったからだ。

ところが今日来てみると、店内の3割程度はドワーフ以外だ。

ダークエルフはロンドー、エルフはヤライ、獣人は我が国からの亡命者か。

うん?あの連中は見たこと無いな。

ちょうど通り掛かった店員に聞いてみる。

「俺はスパニの商人なんだが、久しぶりに来たらずいぶんと街の雰囲気が変わっているねぇ。

外国人もたくさんいるみたいだし。

ところで、あそこにいる連中は見たことないんだけど、何処の国の者だい?」

「スパニの方だったらご存知ないかもしれませんねぇ。

あの人達はジャボ大陸から来られた『人族』ですよ。」

「ジャボ大陸だと!!」

しまった、思わず大声をだしてしまった。

廻りを見渡すと、皆くすくすと笑っている。

「ははっ、お客さん、やっぱり知らなかったんだね。」

「ジャボ大陸の方達はそんなに有名なのかい?」

「有名も何もヤライ、ヤコブ、ロンドーの3国じゃあ、ある程度の規模の街には住んでいるからねぇ。

よく働くし優しいしね。

一緒に働くドワーフ達も大勢いて、今じゃ街の一員だよ。」

「何故ジャボ大陸から?」

わたしの頭はかなり混乱していた。

「理由はよく分からないんだけどね、2年ほど前にこの大陸に渡って来たって話しだよ。

ヤライに出稼ぎに行ってた奴等が言ってたからねぇ。

そしたら、長らく姿を隠しておられたルソン様が突然現れて族長になられたのさ。

ルソン様はジャボ大陸に行っておられたそうだよ。

それからはあっという間さ。

ヤライの族長の娘とロンドーの族長が結婚したり、ヤライ、ロンドーとの3国平和協定が結ばれたりねぇ。

ジャボ大陸共、平和協定を結んだっていう噂が流れたかと思うと、いろいろな改革があっちこっちで進められて、いろんな種族が入って来たんだよ。

『人族』もそのうちのひとつさ。

始めは驚いたけどねぇ。
本当に良い人達なんだよ。

各地に物流センターって言うのを作ったかと思うと、見たことも無い食べ物や商品をあちこちからたくさん持って来てくれたんだよ。

それだけじゃないよ。

ここらで作っている商品も他所で売って来てくれるんだ。

ルソン様の改革で、ここいらでも様々な新商品が作られ始めたからねぇ。

そりゃいっぱい売れたよ。
なんたってヤコブの商品は天下一品だからねぇ。

でもさ、あんまり大量には作れないからねぇ。

他所に売る量も頭打ちになったのさ。

そしたらさあ、ルソン様の指示で新しい仕事のやり方に取り組む工房が出てきたんだ。

そしたらさぁ、商品を作るスピードが2倍以上に上がったって言うじゃないか。

最近は頭の硬かった工房も、新しい仕事の仕方を取り入れたんで、ますます生産能力っていうのが増えたみたいだよ。

そんでヤライやロンドーだけでなく、ジャボ大陸にも売るようになったんだって。

一気に街が活気づいたねぇ。」

店員が興奮したように一気に捲し立てたが、思わぬところで大量の情報が手に入った。

少し精査しないとダメだが、こういう酒場のお節介店員の話しは案外精度が高いのだ。

「いろいろ教えてくれてありがとう。

何かお勧めをくれないか?」

「あいよ!」

その後テーブルに次々と並べられる料理に驚く。

まずは『ビアー』と呼ばれる酒だ。

黄金色で泡が絶えず出ている。
ひと口目は、口の中に広がるシュワっていう感触に驚いたが、飲み込む時の心地良さに病みつきになりそうだ。

次は『ハンバーグ』。
肉なのに柔らかくて美味しい。
口の中に入れると肉汁がたっぷり出てきて美味しさが広がる。

店員に薦められるままに、『コメ』に乗せて食べてみた。

『コメ』の優しく甘い味に『ハンバーグ』の肉汁が良く合うのだ。

たぶん毎日食べても飽きないだろう。

他にも色々な料理を堪能して、わたしは酒場を後にした。

その後調査を進める中で、わたしはとうとうカトウ公爵と言う名前に行き着いたのだ。

どうやら、このカトウ公爵と呼ばれるジャボ大陸の人族が、この美味しい? いや素晴らしい改革を持ち込んだようだ。

わたしはハリー様への報告書の最後にこのことを付け加えた。

最重要機密なので、特に紙の隅っこに小さくだが。
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