上 下
177 / 382
第8章 亜人大陸の開発

8 【農村改革】

しおりを挟む
<<ヤライ改革担当ナムル視点>>
ヤライは農業が盛んです。
芋や麦、様々な野菜を作っており、食糧自給率は150パーセントを超えていますが、この数字はここ数百年下がり傾向にあります。

大きな要因は、人口の減少ですね。

特に働き盛りの男性と子供の数が減っています。

男性の減少原因はロンドーの植民地時代は労働力として取られ、最近ではスパニの侵攻に対する兵士として取られていることが挙げられます。

元々生殖欲求の薄いエルフなので、子供の数は少ないのですが、男性が取られるようになってからはますます減ってきています。

働き盛りや若い世代が減っているわけですから、生産力が減るのは道理だと思いますが、このままでは、ヤライ族はいつか消滅してしまいます。

人口を増やすためには、移民を受け入れることが考えられます。

耕作する者がいなくなった耕作地に移民を入れれば、食糧生産は上がります。

また耕作地までの水利を良くしたり、良い肥料を入れてやれば、もっと容易に作物を作ることが出来るでしょう。

そうすれば、老いた者達も耕作に参加出来るので、休耕地も復活出来そうです。

余った作物は、カトウ運輸を介してロンドーやヤコブ、将来的にはジャボ大陸へも輸出出来るようになります。

代わりにあちこちの品物が輸入出来れば、ヤライももっと裕福になるでしょう。

豊かになれば、出産率も上がるかもしれませんね。

ふふふふふふ、あははは!

まぁ、想像はこのくらいにしておいて、しっかりと事業計画をまとめていきましょうかね。


わたしは、ロンドーにいるジャボ大陸の学者様に相談することにしました。





「ローバー先生。お客様ですよ。」

「イリヤちゃんか。誰だね、お客様というのは?」

「ヤライで改革担当をしておられるナムルさんですよ。

この前、王宮であいさつしましたよねぇ。」

「あー、ナムルさんだね。覚えているよ。」

ジャボ大陸の視察で仲良くなった、カトウ公爵様のご令嬢であるイリヤ様を頼って学者様達のところに来ました。

どうやらわたしのことを覚えていて下さったようです。

「ナムルさん、こちらローバー先生。
農地の改善なんかのエキスパートなんですよ。」

「ナムルさんだね。ローバーです。

イリヤちゃんから聞いたんだけど、ヤライで農村改革を始めるんだって。

是非お手伝いさせて頂くよ。」

「ヤライのナムルです。ローバー先生、快諾頂きありがとうございます。」

「いやいや、わたし達も経験になるからねぇ。こんな依頼だったら大歓迎ですよ。

あっそうだ。レノさんも呼ぼう。
彼は植物の専門家だからね。

新しい土地の新しい植物は喜ぶだろうなぁ。

イリヤちゃん、ジョージ君達にも声を掛けたらどうだい?」

「ローバー先生、良いと思います。

お母様が連絡取れると思うので、聞いてみますね。」


イリヤちゃんはそう言うと、何やら魔道具を取り出して、それに向かって話出しました。

「お母様、イリヤよ。
今ロンドーにいるの。

あのね、ジョージ様に連絡取れる?

うん、うん、大丈夫?

あのね、ヤライで農村改革を始めるらしいのね。

それでローバー先生に協力をお願いしたんだけど、ジョージ様達にも来てもらえたら心強いかなって。

うん、うん、じゃあ連絡お願いね。

ありがとう。じゃあまたね。」

どんどん話しが進んでいきます。
ここに来て正解でした。



その後、わたしはローバー先生とレノ先生とで詳細の計画を詰めて、草案をまとめました。

当初想定していた内容よりもずいぶんと大袈裟になりましたが、作業計画が具体的になって良かったと思います。


翌日、わたしはヤライに戻りカーン様に草案を説明しました。

若干の修正はありますが、ほぼ草案通りです。

「ナムル、よく頑張ってくれた。

この計画で進めていこう。

予算は確保しておくから、必要な分財務のマリルに言ってくれ。

それとこの計画と並行して、カトウ運輸の物流センターを建設することになった。

500人近くがキンコー王国から来るぞ。」

物流センターが立ち上がると、交易と経済が一気に成長したと、視察の時に聞きました。

農村改革は3年計画ですが、早く成果を出して、交易を進めていきたいと思います。

「そうだナムル。
先日マサル殿の奥方が来られて、我が国の特産品を見て回られた。

ジャボ大陸には無い作物もたくさんあり、交易の品として充分いけるそうだ。

当面の交易品にしたいと思うので、このリストの品を確保しておいてくれ。」




半年ほどで稼働し始めた物流センターは、順調に交易を開始し始めました。

リザベート様の選んだ品々は、どれもジャボ大陸で好評で、改革に必要な予算も捻出出来るようになりました。

ローバー先生達もヤライに移住し、改革を推進してくれています。

全てが順調に動き出しました。





懸念となっていた人口減少の問題については、意外な形で解決しつつあります。


物流センターが稼働を開始して、しばらく後に気がついたのですが、物流センターの人族の男性とヤライの女性が結ばれるケースが異常に多くなりました。

ジャボ大陸の男性には、エルフの女性は物凄く美人に見えるそうで、逆にエルフの女性からはその逞しい肉体が良いらしいのです。

人族の男性は生殖本能が強く、たくさんのハーフが誕生しています。

どうやら、影でヤリテという人族の女性が動いているらしいですが、何はともあれ人口問題は解決する兆しが見えてきたことだけ、付け加えさせて頂きます。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おっさんの転生珍道中

dai
ファンタジー
神様の不手際で死んでしまった。 38歳既婚者子持ちの笑いあり、涙ありの転生珍道中! 主人公藤木大樹(フジキダイキ)がおりなす、ハチャメチャ痛快冒険活劇。 藤木大樹はどうなる? 家族はどうなる?

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜

甲殻類パエリア
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。  秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。  ——パンである。  異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。  というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。  そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

捨てられ従魔とゆる暮らし

KUZUME
ファンタジー
旧題:捨てられ従魔の保護施設! 冒険者として、運送業者として、日々の生活に職業として溶け込む従魔術師。 けれど、世間では様々な理由で飼育しきれなくなった従魔を身勝手に放置していく問題に悩まされていた。 そんな時、従魔術師達の間である噂が流れる。 クリノリン王国、南の田舎地方──の、ルルビ村の東の外れ。 一風変わった造りの家には、とある変わった従魔術師が酔狂にも捨てられた従魔を引き取って暮らしているという。 ─魔物を飼うなら最後まで責任持て! ─正しい知識と計画性! ─うちは、便利屋じゃなぁぁぁい! 今日もルルビ村の東の外れの家では、とある従魔術師の叫びと多種多様な魔物達の鳴き声がぎゃあぎゃあと元気良く響き渡る。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

処理中です...