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第7章 研究室と亜人大陸

26 【謀反の結末】

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<<アーク視点>>
キャロの側近であるハロの自白で、50年に渡る長い闇が明らかになった。

同時に今回の事件に関わった者達を一網打尽にすることも出来た。

どいつもこいつも、ヤライを再度植民地に戻そうと活動していた輩ばかりだった。

結果から言えば、ロンドーは膿を吐き出して浄化されたと言えよう。

しかし、デカさんの護衛であるマサル殿がいなければ、最悪の結末になっていたことを考えると、背中に汗が溢れる。

「マサル殿、今回は本当に助かった。
礼を言う。

これからも、デカやわたしのために、力を貸してもらいたい。」

「………それはちょっと。」

うん、どういうことだ?

「わたしから説明致します。
実は、この方はヤライの者ではありません。

カトウ公爵様、もう変身を解いて下さいますか。」

カトウ公爵?

マサル殿は、デカさんに頷くと、一瞬光に包まれ、次の瞬間人族に変わっていた。

「こちらはジャボ大陸キンコー王国のカトウ公爵様です。

こちらの2人は、カトウ公爵様の御子息とご令嬢です。

色々ありまして、わたし達ヤライ族を助けるために、わざわざ力をお貸し頂きました。」

「キンコー王国のカトウ公爵というと、あの『救国の英雄』殿か!!」

「正体を明かさずに失礼致しました。

わたしは、マサル・カトウ、こちらはランスとイリヤです。

縁あって、デカさんの護衛とヤライ族の支援を行っております。」

なるほど、噂に聞く英雄殿であれば、あの時間停止を始めとしたとんでもない魔法も納得できるというものだ。

隠密からの報告は、かなり誇張されたものだと思っていたが、あながち誇張ではなかったのかも知れない。

「もしかして、ヤコブの騒動収束や、スパニの猛攻を防ぎ、大きく戦力を削ったというのも、カトウ公爵の仕業なのか?」

「わたしは少し手を貸しただけです。
ヤコブもヤライも自分達で、きちんと解決されました。」

「ヤライにヤコブ、そしてロンドーまで、カトウ公爵のおかげで救われた。

感謝します。

そしてデカさんを守って頂きありがとうございました。」

「デカさんを守っていたのはランスとイリヤです。」

「ランス君、イリヤちゃん、わたしの妻のデカを守ってくれてありがとう。

何か君達に報いたいのだが、何か欲しいものはあるかい?」

「………アーク殿下、ひとつお願いしてもいいですか。

できれば、こちらに移転の魔道具を設置させて頂き、自由にこちらに来れるようにして頂けませんか。

あと、その魔道具で、わたし達の先生をこちらに連れて来たいのですが。」

「ああ、シルビア先生のことね。

確かにわたしが亜人大陸に戻るって言ったら、一緒に来たがっていたものね。」

デカさんの言葉にランス君は少し困ったような顔をして、話しを続ける。

「そうなんです。ジャボ大陸でも有名な薬学と医学の大家なんですけど、亜人大陸の薬草に興味津々でして。……」

「ランス君、わかったよ。許可しよう。

亜人大陸は、ジャボ大陸よりも、薬学や医学がかなり遅れているから、情報交換させて頂けると、こちらも助かるしな。」

「ありがとうございます。シルビア先生も喜ぶと思います。」

「もちろん君達もいつでも気軽に来ていいよ。
君達ならばいつでも大歓迎だ。」


どうやらヤライの姫は、ジャボ大陸との強力なコネクションも持ってきてくれたようだ。


3日後、わたしとデカさんの結婚式が盛大に行われた。

また、それに合わせてわたしの王への即位を発表した。

ロンドーは大きな歓喜に沸いていた。



<<新宰相ヤクル視点>>
わたしは、ハロの供述を受けて顔が青ざめていくのを感じた。

父上が、この謀反の元凶だったなんて!

わたしは父上が老いてからの子供だった。

だから、わたしが物心ついた時には、父上は既に亡くなっていた。

しかしそんなことは何の言い訳にもなるまい。

国家を揺るがすような罪を犯した者は、一族全てが処罰対象になることは、この国の慣例である。

わたしも真摯に受け入れようと思う。

幸いにして、わたしはまだ独身だ。

やっと宰相に登り詰め、アーク殿下と共に理想に向かって行けるところまで来たのを、ここで放り出すのには、正直残念だ。

ただこれも運命として諦めるしかないだろう。


愕然とするわたしにアーク殿下は、優しく声を掛けて下さった。

「ヤクル、お前は何も関係無いだろう。

お前が小さい頃にバクターは既に他界していたのだ。

まぁ、バクターの威光が無かった訳では無いだろうが、お前が一生懸命に学び、実績を積んで宰相に登り詰めたことは、わたしが一番知っている。

バクターはバクター、お前はお前だ。
そのことを忘れるなよ。」

わたしはアーク殿下の話しを噛みしめた。そして、決意する。

この方が歩む道は決して順風では無いだろう。
でも、わたしが盾にでも矛にでもなって、生涯この方を支えて行こうと。

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