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第7章 研究室と亜人大陸
20 【ロンドー対策】
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<<カーン視点>>
スパニによる防衛ラインへの攻撃が開始された。
1週間ほど様子を見たが、力押しで突破しようとしているみたいだ。
危惧していた内部への接触も無さそうだ。
スパニについては、継続して監視していくが、とりあえず考えなくてはならないのが、ロンドーへの対策だろう。
ロンドーは、ダークエルフの国だ。
我等エルフとは、1000年に及ぶ確執がある。
元々、ダークエルフも我等と同じエルフだったと伝えられている。
古い文献を紐解くと、その昔エルフの一部が魔族と交わり、その混血がダークエルフになったとされる。
初期のダークエルフは、魔族の血の影響で魔力が強かったという。
今では血が薄くなり、魔力量も我等と変わらないようだが、肌の黒さだけは昔から変わらないようだ。
エルフは寿命が長い。
そのため、種の保存に対する意識が低く、長い年月の中で生殖機能が衰えてきた。
それに対しダークエルフは、魔族の血の影響だろうか、生殖活動は盛んなようで、当初はエルフの5%程度に過ぎなかった人口が、この1000年の間に逆転し、今ではヤライの人口の5倍にまでなっている。
ロンドーに対抗するには、国力を増強し、人口を増やす必要がある。
さて、どうしたものやら。
「カーン殿、ヤライはエルフにこだわりますか?」
「マサル殿、それはどういう意味でしょうか?」
「もし仮に移民を希望する者達がいた場合、受け入れるかどうかということです。」
「移民の質にもよりますが。
でも、現状ではそうせざるを得ないでしょうな。」
「この地は気候も温暖で、農業に適しています。
移民を受け入れ、農業生産の拡大を行えば、この国はもっと富むでしょう。」
「それはそうだと思うが、いったいどこの民を受け入れるのか?」
「ロンドーです。
わたしが調べたところによると、
ロンドーがヤライを植民地化した最大の理由は、人口の増加と食糧不足です。
元々、ダークエルフは迫害されて出て行った民です。
そのため、ロンドーの地は農業生産性が高くないはずです。
だから、人口の増加と共に食糧不足が深刻化したのだと思います。
もしヤライがロンドーの民を受け入れ、農業生産を増やしてロンドーへ輸出すれば、ヤライの人口問題も、ロンドーの食糧不足も一挙に解決出来るでしょう。
また、ヤライとロンドーが良好な同盟関係を結べば、スパニもおいそれと手を出せなくなるのではないでしょうか。」
「…………確かにマサル殿の言う通りだが。
ただ、この問題は根強い。国同士の利だけでは解決出来ないだろう。」
「お父様、わたしがロンドーに行きます。
ロンドーが私を差し出すように言っていたことは知っています。
たとえそれが人質としてだったとしても、少しでも関係を改善出来るのではないですか?」
「デカ、お前自分の言っていることがわかっているのか?」
「わかっているつもりです。
このままではヤライもジリ貧だし、カトウ公爵様の言われる通り、ロンドーと講和するしか道は無いと思います。
少しでも可能性があるのなら、わたしはそれに賭けるべきだと思います。
向こうは、言葉だけでも『皇太子の妻として』と言っているわけですから、すぐに無碍な扱いを受けるわけではないと思います。」
「しかし…………」
「カーン殿、お気持ちはお察しします。
だが、打開策が無いのも然り。
ここはひとつデカさんの案に乗ってみるのは如何でしょうか?
わたしとランスが護衛として、イリヤが侍女としてお供いたします。」
「マサル殿が付いて下されば心強いが……
しかし、いつまでもとは。」
「とりあえずは、相手の出方を見るための潜入という形をとりたいと思います。
デカさんを、危険な目に合わせるのは変わりありませんが。
もし、デカさんを人質としての交渉材料に使うのであれば、すぐに何らかの行動を起こすでしょう。
そうなれば、わたし達が全力で守り、連れ帰ります。」
「お父様、カトウ公爵様のご好意を有難くお受けしましょう。
座して衰退を待つばかりであれば、わたしは機を逃したくありません。」
デカの言葉には固い決意が現れていた。
それを感じると、族長としてではなく、ひとりの父親としての決断しかできていない自分に腹が立ってきた。
今のデカは、ヤライ族 族長の娘として立派にその役割を果たそうとしているのだ。
「よし、デカ、マサル殿、危険な任務で申し訳ないが、その案でいこう。
マサル殿、スパニを足止めできている今のうちに、わたしは話を纏めて来ます。」
わたしは、数名の部下と共にロンドーの王宮へと向かった。
スパニによる防衛ラインへの攻撃が開始された。
1週間ほど様子を見たが、力押しで突破しようとしているみたいだ。
危惧していた内部への接触も無さそうだ。
スパニについては、継続して監視していくが、とりあえず考えなくてはならないのが、ロンドーへの対策だろう。
ロンドーは、ダークエルフの国だ。
我等エルフとは、1000年に及ぶ確執がある。
元々、ダークエルフも我等と同じエルフだったと伝えられている。
古い文献を紐解くと、その昔エルフの一部が魔族と交わり、その混血がダークエルフになったとされる。
初期のダークエルフは、魔族の血の影響で魔力が強かったという。
今では血が薄くなり、魔力量も我等と変わらないようだが、肌の黒さだけは昔から変わらないようだ。
エルフは寿命が長い。
そのため、種の保存に対する意識が低く、長い年月の中で生殖機能が衰えてきた。
それに対しダークエルフは、魔族の血の影響だろうか、生殖活動は盛んなようで、当初はエルフの5%程度に過ぎなかった人口が、この1000年の間に逆転し、今ではヤライの人口の5倍にまでなっている。
ロンドーに対抗するには、国力を増強し、人口を増やす必要がある。
さて、どうしたものやら。
「カーン殿、ヤライはエルフにこだわりますか?」
「マサル殿、それはどういう意味でしょうか?」
「もし仮に移民を希望する者達がいた場合、受け入れるかどうかということです。」
「移民の質にもよりますが。
でも、現状ではそうせざるを得ないでしょうな。」
「この地は気候も温暖で、農業に適しています。
移民を受け入れ、農業生産の拡大を行えば、この国はもっと富むでしょう。」
「それはそうだと思うが、いったいどこの民を受け入れるのか?」
「ロンドーです。
わたしが調べたところによると、
ロンドーがヤライを植民地化した最大の理由は、人口の増加と食糧不足です。
元々、ダークエルフは迫害されて出て行った民です。
そのため、ロンドーの地は農業生産性が高くないはずです。
だから、人口の増加と共に食糧不足が深刻化したのだと思います。
もしヤライがロンドーの民を受け入れ、農業生産を増やしてロンドーへ輸出すれば、ヤライの人口問題も、ロンドーの食糧不足も一挙に解決出来るでしょう。
また、ヤライとロンドーが良好な同盟関係を結べば、スパニもおいそれと手を出せなくなるのではないでしょうか。」
「…………確かにマサル殿の言う通りだが。
ただ、この問題は根強い。国同士の利だけでは解決出来ないだろう。」
「お父様、わたしがロンドーに行きます。
ロンドーが私を差し出すように言っていたことは知っています。
たとえそれが人質としてだったとしても、少しでも関係を改善出来るのではないですか?」
「デカ、お前自分の言っていることがわかっているのか?」
「わかっているつもりです。
このままではヤライもジリ貧だし、カトウ公爵様の言われる通り、ロンドーと講和するしか道は無いと思います。
少しでも可能性があるのなら、わたしはそれに賭けるべきだと思います。
向こうは、言葉だけでも『皇太子の妻として』と言っているわけですから、すぐに無碍な扱いを受けるわけではないと思います。」
「しかし…………」
「カーン殿、お気持ちはお察しします。
だが、打開策が無いのも然り。
ここはひとつデカさんの案に乗ってみるのは如何でしょうか?
わたしとランスが護衛として、イリヤが侍女としてお供いたします。」
「マサル殿が付いて下されば心強いが……
しかし、いつまでもとは。」
「とりあえずは、相手の出方を見るための潜入という形をとりたいと思います。
デカさんを、危険な目に合わせるのは変わりありませんが。
もし、デカさんを人質としての交渉材料に使うのであれば、すぐに何らかの行動を起こすでしょう。
そうなれば、わたし達が全力で守り、連れ帰ります。」
「お父様、カトウ公爵様のご好意を有難くお受けしましょう。
座して衰退を待つばかりであれば、わたしは機を逃したくありません。」
デカの言葉には固い決意が現れていた。
それを感じると、族長としてではなく、ひとりの父親としての決断しかできていない自分に腹が立ってきた。
今のデカは、ヤライ族 族長の娘として立派にその役割を果たそうとしているのだ。
「よし、デカ、マサル殿、危険な任務で申し訳ないが、その案でいこう。
マサル殿、スパニを足止めできている今のうちに、わたしは話を纏めて来ます。」
わたしは、数名の部下と共にロンドーの王宮へと向かった。
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