最強魔法戦士は戦わない ~加藤優はチートな能力をもらったけど、できるだけ穏便に過ごしたいんだあ~

まーくん

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第7章 研究室と亜人大陸

6 【謎の女の人】

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<<ランス視点>>
11月のある日、いつものように僕は、レスリーと学校までの道のりを競争していた。

住宅街を抜け、となりに湖が見えてきた頃に、水辺にほど近いところに、1人の女の人が倒れているのが見えた。

たぶん、この時間にこの辺りは人通りがまばらだから、誰も女の人に気付かなかったのかも知れない。

僕とレスリーは、女の人のところに近付いた。

17、8歳くらいのお姉さんで、
シンプルな浅葱色のドレスを着ているんだけど、この時期にしては薄着過ぎる。

「大丈夫ですか?」

「………… 」

「大丈夫ですか?分かりますか?」

「………… 」

返事がない。

女の人の手を取って脈を確認する。

「大丈夫だ。まだ脈がある。
学校まで運んで、シルビア先生に診てもらおう。

レスリー、先に行くよ。」

僕は、女の人を抱えると小学校に向かって飛んだ。

あっという間に学校に着いた僕は、そのままシルビア先生の部屋の前に移動する。

「シルビア先生、ランスです。
急患を連れてきたんですけど、診てもらえますか?」

ドアが開き、目を擦りながらシルビア先生が出てきた。

「ランス君、こんなに早くどうしたんだい?」

「シルビア先生、朝早くからすいません。

学校に来る途中で、この女の人が倒れているのを見つけたんです。

まだ脈はあるみたいなんですけど、気を失っているみたいで。」

「どれ、あー、身体が冷えているねぇ。
急いで温めた方が良い。」

シルビア先生は女の人の濡れたドレスを脱がして下着だけにすると、たくさんの毛布で包み込みました。

そして女の人の口を開けて少しずつ薬を流し込んでいきます。

「ブフっ、ゴホッゴホッ。」

女の人が咽せて、息を吹き返したようです。

咳込んだせいか、顔に少し赤みがさしてきたみたい。

「気がつきましたか?」

「こ、ここは?」

「ここは、小学校です。
お姉さんが、湖の水辺で倒れていたので、僕がここまで運んで来ました。
こちらのシルビア先生が治療して下さいました。」

お姉さんは、僕に向かって『助けてくれてありがとう。』と言い、その後シルビア先生方を見て会釈しました。

「体調はどうだい。熱もないし、顔色も大丈夫そうだねぇ。」

「大丈夫です。ありがとうございます。」

『バタッ』

扉が激しく開き、息を切らせたレスリーが入ってきました。

「ランス速すぎなんだよ。
ところでお姉さんは?」

「レスリー、お姉さん、大丈夫だったよ。ほら!」

レスリーはベッドに横たわるお姉さんを見ると、ホッとため息をつきました。

「ああ、本当に良かった。
死んじゃうじゃないかと、ドキドキしてたんだ。」

シルビア先生は、レスリーの顔に喜色が浮かぶのを微笑ましそうに見ていましたが、目線をお姉さんに向けて質問を始めました。

「いくつか聞かせてもらいます。

まず一つ目、名前と住所。
二つ目、あなたは亜人ね。種族は?
最後に3つ目、なぜ倒れていたの?」

シルビア先生の質問に、お姉さんは思案顔で、困っています。

「秘密にしたいんだったら無理には聞かないし、話してくれても、秘密は守るわよ。」

「分かりました。

おっしゃる通り、わたしはエルフです。
エルフのヤライ族族長の娘デカと申します。

亜人大陸から、知人のドワーフを頼り、ドワーフの住むサイカー領まで船で来ました。

サイカーの知人がこちらの王都に来ていると聞いたので、旅して来たのですが、賊から逃げる途中で、伴の者達とも離れてしまい、見つけて頂いた場所で力尽きたようです。」

逃げている?
亜人大陸?

「亜人大陸って、南の海をずっとずうーっと遠くに行ったところにあると言われている幻の大陸じゃないんですか?」

「えっ、亜人大陸は確かにありますよ。幻じゃありません。」

「それと、何かから逃げているって言ってなかった?」

「あっ、そうでした。

実は、サイカーの港からこちらに向かっている途中で、賊に襲われました。

その時は伴の者達が、撃退し事なきを得たのですが、その時に捕まえた賊の1人に問い正したところ、旅の商人に頼まれたと言うのです。

その商人の正体は結局分からず仕舞いだったのです。

それからは警備を厳重にしながらこの街まで、何事もなく到着しました。

さすがに街中で襲われることはないだろうと、伴の半数をサイカーの知人ドワーフのルソン殿の捜索に当てたのですが、その直後に黒い覆面の賊達に襲われました。

走って逃げる途中で皆と離れ離れになってしまい、気が付いたらここにいました。」

どうやら警護が手薄になるのを待って狙ったようですね。

デカさん達を襲った2つの賊は、恐らく同じ者達だと思う。

サイカーからずっとつけて来て、襲う機会を伺っていたに違いないと思います。

シルビア先生も同じことを考えているみたいです。

「デカさん、まだ追っ手が探しているに違いないよ。
しばらくここにいた方がいい。」

「先生、ありがとうございます。
しかし、はぐれてしまった伴の者達を探して、ルソン殿に会わねば、わたし達の里が………」

「シルビア先生、僕がお父様に相談してみるよ。

お父様だったらなんとかしてくれると思うから。」

「カトウ公爵様にかい。
そりゃ、救国の英雄様に助けて頂けたらそれ以上はないんだけどねぇ。」

僕は、トランシーバーでお父様に連絡して、事情を説明しました。

「今ナーラ領にいるからすぐにそっちに行くよ。」





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