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第6章 ランスとイリヤ
22 【花見】
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<<イリヤ視点>>
ニューイヤーパーティーのシーズンも終わり、またいつもの学校生活が始まりました。
皆んなで楽しく勉強したり、遊んだり、特別授業を受けたり、研究室の先生達の宴会に参加したりと、わたしとお兄ちゃんは大忙しです。
そんなある日、研究室の先生の1人が小さな種子の化石を持ってこられました。
研究室では皆さん興味深々です。
「これは、ユラーシス遺跡で先日見つけた植物の種子の化石です。
古代の酒瓶なんかと一緒の層にあったので、もしかすると今は絶滅した植物の種子かも知れません。」
発見した先生の鼻息が荒い。
ユラーシス遺跡って、ナーラ領とワーカ領の間にあるヨーシノの森にある遺跡で、古代の遺品がたくさん出土するって有名な所らしいの。
だいたい2500年前の地層から出てきているみたいで、この種子もそのあたりの地層から出てきたみたい。
「イリヤちゃん、イリヤちゃんのお父様ならこの種子を生き返らせないかなぁ。
聞いてみてくれないか?」
「わかりました。一度聞いてみますね。
その種子をお借りしてもいいですか?」
わたしは種子を持って帰り、お父様に見せました。
「おや、これは桜の種子だね。
懐かしいなぁ。」
お父様は、この種子が何か知っているようです。
「この種子って生き返らせることができる?」
「ああ、たぶん大丈夫かな。
種子の周りに付いた土が固まっているだけで、種子自体に損傷は無いからね。」
お父様が魔法を掛けると小さな芽が出て来ました。
「ほら大丈夫だっただろう。
どこに植えるんだい。お父さんも一緒に行くよ。」
わたしは、お父様と一緒に研究室に行きました。
「先生方、この種子大丈夫そうですよ。
お父様が、植えて育ててくれるらしいです。」
「おぉ、これはカトウ公爵様。
ようこそお越し下さいました。」
「イリヤ達がお世話になっています。
イリヤからこの種子を植えたいって聞いてやって来たのですが、どちらに植えましょうか?
結構大きな木になりますよ。」
「公爵はこの木をご存知なのでしょうか?」
「えぇ、この木はわたしの故郷にある木と同じ種類のものですよ。
とっても綺麗な花を咲かせるのです。」
「それは素晴らしい。
研究室の前に植えましょう。」
お父様と先生方と一緒に、研究室の前にある広場に出てきました。
「このあたりで如何でしょうか?」
「そうですね、このくらい広さと日当たりがあれば大丈夫そうですね。
ちょうど校舎の窓からも見えますし。
ここにしましょう。」
そう言うとお父様は、少し土を掘り、種子を少し出ている芽が顔を出すように丁寧に置きました。
上から土を被せ、魔法で作った水をゆっくりと掛けていきます。
「さあ、イリヤもこの上に手を翳してごらん。」
わたしは、お父様と一緒に種子を埋めたあたりで両手の平を翳しました。
『早く大きくなあれ。』
そう願いながら手に魔力を込めると、わたし達の手から仄かな明かりが灯り、半径1メートルほど拡がると、明るさが一気に増しました。
すると、土の上にちょこんと顔を見せていた小さな芽が次第に大きくなっていき、それはあっという間に細い枝のようになり、更に大きくなっていきます。
お父様はわたしの手を握り、少しづつ下がっていきます。
その歩幅に合わせるように、成長する木となった小さな芽は、とうとう高さ10メートルほどの立派な木になったのです。
「おおぉ、これは奇跡だろうか。
2500年前の化石がこんな立派な樹木に育つなんて。」
先生方は口々に呟いています。
「お父様、この木は何という名前なのですか?」
「この木はサクラって言う木だよ。
春になるとね、ピンクの綺麗な花が咲き乱れるんだ。
お父さん達の故郷では、『花見』と言って.その花が咲くとサクラの木の下で飲食をしながら花を楽しむのさ。」
「じゃあ、もうすぐ春だからイリヤ達も『花見』がしたいな。」
「そうだな、皆んなでお弁当を作って花見を楽しもう。」
お父様とっても嬉しそう。
校長先生にお願いして、皆んなで楽しみたいね。
ふと校舎の方を見ると、皆んなこちらを見ている。
「これはこれはカトウ公爵様。
この木は如何されましたでしょうか?」
「この木は、サクラと言う木です。
そちらの先生が、ユラーシス遺跡で発見された種子を育てて大きくしたものです。
2500年前のものらしいですよ。」
校長先生が固まっていたので、声をかけてあげる。
「校長先生、春になったら綺麗な花が咲くらしいんです。
皆んなでお弁当を食べながら、お花を見たいです。」
校長先生は、わたしの言葉に微笑みながら答えてくれます。
「木の由来は壮大過ぎて、よく分かりませんが、綺麗な花は良いですね。
分かりました。新しい学校行事にしましょう。」
その日から2週間後の暖かい風が吹いた日、サクラの木は見事な花を満開にさせたのでした。
そして、サクラの花の下では宴会が始まり、上機嫌で酔っぱらったお父様の嬉しそうな顔がありました。
ニューイヤーパーティーのシーズンも終わり、またいつもの学校生活が始まりました。
皆んなで楽しく勉強したり、遊んだり、特別授業を受けたり、研究室の先生達の宴会に参加したりと、わたしとお兄ちゃんは大忙しです。
そんなある日、研究室の先生の1人が小さな種子の化石を持ってこられました。
研究室では皆さん興味深々です。
「これは、ユラーシス遺跡で先日見つけた植物の種子の化石です。
古代の酒瓶なんかと一緒の層にあったので、もしかすると今は絶滅した植物の種子かも知れません。」
発見した先生の鼻息が荒い。
ユラーシス遺跡って、ナーラ領とワーカ領の間にあるヨーシノの森にある遺跡で、古代の遺品がたくさん出土するって有名な所らしいの。
だいたい2500年前の地層から出てきているみたいで、この種子もそのあたりの地層から出てきたみたい。
「イリヤちゃん、イリヤちゃんのお父様ならこの種子を生き返らせないかなぁ。
聞いてみてくれないか?」
「わかりました。一度聞いてみますね。
その種子をお借りしてもいいですか?」
わたしは種子を持って帰り、お父様に見せました。
「おや、これは桜の種子だね。
懐かしいなぁ。」
お父様は、この種子が何か知っているようです。
「この種子って生き返らせることができる?」
「ああ、たぶん大丈夫かな。
種子の周りに付いた土が固まっているだけで、種子自体に損傷は無いからね。」
お父様が魔法を掛けると小さな芽が出て来ました。
「ほら大丈夫だっただろう。
どこに植えるんだい。お父さんも一緒に行くよ。」
わたしは、お父様と一緒に研究室に行きました。
「先生方、この種子大丈夫そうですよ。
お父様が、植えて育ててくれるらしいです。」
「おぉ、これはカトウ公爵様。
ようこそお越し下さいました。」
「イリヤ達がお世話になっています。
イリヤからこの種子を植えたいって聞いてやって来たのですが、どちらに植えましょうか?
結構大きな木になりますよ。」
「公爵はこの木をご存知なのでしょうか?」
「えぇ、この木はわたしの故郷にある木と同じ種類のものですよ。
とっても綺麗な花を咲かせるのです。」
「それは素晴らしい。
研究室の前に植えましょう。」
お父様と先生方と一緒に、研究室の前にある広場に出てきました。
「このあたりで如何でしょうか?」
「そうですね、このくらい広さと日当たりがあれば大丈夫そうですね。
ちょうど校舎の窓からも見えますし。
ここにしましょう。」
そう言うとお父様は、少し土を掘り、種子を少し出ている芽が顔を出すように丁寧に置きました。
上から土を被せ、魔法で作った水をゆっくりと掛けていきます。
「さあ、イリヤもこの上に手を翳してごらん。」
わたしは、お父様と一緒に種子を埋めたあたりで両手の平を翳しました。
『早く大きくなあれ。』
そう願いながら手に魔力を込めると、わたし達の手から仄かな明かりが灯り、半径1メートルほど拡がると、明るさが一気に増しました。
すると、土の上にちょこんと顔を見せていた小さな芽が次第に大きくなっていき、それはあっという間に細い枝のようになり、更に大きくなっていきます。
お父様はわたしの手を握り、少しづつ下がっていきます。
その歩幅に合わせるように、成長する木となった小さな芽は、とうとう高さ10メートルほどの立派な木になったのです。
「おおぉ、これは奇跡だろうか。
2500年前の化石がこんな立派な樹木に育つなんて。」
先生方は口々に呟いています。
「お父様、この木は何という名前なのですか?」
「この木はサクラって言う木だよ。
春になるとね、ピンクの綺麗な花が咲き乱れるんだ。
お父さん達の故郷では、『花見』と言って.その花が咲くとサクラの木の下で飲食をしながら花を楽しむのさ。」
「じゃあ、もうすぐ春だからイリヤ達も『花見』がしたいな。」
「そうだな、皆んなでお弁当を作って花見を楽しもう。」
お父様とっても嬉しそう。
校長先生にお願いして、皆んなで楽しみたいね。
ふと校舎の方を見ると、皆んなこちらを見ている。
「これはこれはカトウ公爵様。
この木は如何されましたでしょうか?」
「この木は、サクラと言う木です。
そちらの先生が、ユラーシス遺跡で発見された種子を育てて大きくしたものです。
2500年前のものらしいですよ。」
校長先生が固まっていたので、声をかけてあげる。
「校長先生、春になったら綺麗な花が咲くらしいんです。
皆んなでお弁当を食べながら、お花を見たいです。」
校長先生は、わたしの言葉に微笑みながら答えてくれます。
「木の由来は壮大過ぎて、よく分かりませんが、綺麗な花は良いですね。
分かりました。新しい学校行事にしましょう。」
その日から2週間後の暖かい風が吹いた日、サクラの木は見事な花を満開にさせたのでした。
そして、サクラの花の下では宴会が始まり、上機嫌で酔っぱらったお父様の嬉しそうな顔がありました。
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