136 / 382
第6章 ランスとイリヤ
20 【放射能廃棄物は何処から?】
しおりを挟む
<<マリス視点>>
いつもの礼拝の時に、マサルさんから過去の転生者について聞かれたわ。
どうやら瘴気の正体を突き止めたみたい。
地球から来たゴミが原因らしいの。
2500年前に地球から持ち込まれたそのゴミが、(大地の神)シールが捨てた他のゴミに混じっていたみたい。
でも誰が持ち込んだんだろ?
あの頃は調子に乗って、いろんなところのいろんな時代から転生させていたからなぁ。
マサルさんが言うには、マサルさん達の時代よりも少し後の時代だろうって。
核燃料の再利用とか言ってたっけ。
マサルさんの時代に開発や運用が進められていたけど、まだ未熟で一般には取り扱い出来るものではなかったみたい。
どちらにしても、そんな危険なもの、早く見つかって良かったわ。
マサルさんにご褒美をあげたいんだけど、彼ったら受け取らないのよね。
いつものように寿命を伸ばしてあげようかな。
もう1000歳はとっくに越えているんだけどね。
わたしの所属する異世界管理局に転職してもらって、神って呼ばれるのもありかも。
マサルさんの性格なら、きっと良い世界を作れそうだわね。
<<マサル視点>>
ドラム缶に入っていたのは、たぶん放射能廃棄物だと思う。
過去の転生者が原子力発電をした結果なのか、それとも再利用するために持ち込まれたものなのかはわからないが、どちらにせよ厄介なものだった。
幸運にもナージャが発見者で良かった。
もし、別の者が知らずに破壊してしまっていたら、大惨事になっていたことだろう。
マリス様にこのことを確認してみたが、心当たりが無いとのことだ。
まぁマリス様達の時間の感覚でいくと、2500年なんてあっという間だから、いちいち覚えていられないかもね。
<<2500年前に転生した若者視点>>
数ヶ月前に俺は地球の西暦2300年からこの世界に転生させられて来た。
転生の目的は、この世界に文明を作ることだ。
一応この世界にも文明はある。
数十戸単位の村が農耕と狩猟で生計を立てている集落が点在しているだけだけど。
俺は集落をまとめて、都市を作った。
都市の名をプラークという。
プラークは人口3000人くらいの街で、整然と並んだ街並みは、パリをモデルにしたんだ。
立ち並ぶアパートメントはもちろん上下水道完備で、大都市に相応しい綺麗な環境を誇る。
街の周囲には畑が囲っており、その外側は、重厚な城壁に囲われている。
プラーク建設時に反対した集落がたとえ徒党を組んで襲って来たとしても、陥すことは出来ないだろう。
プラークに移住した者達は、その進んだ都市を喜び、それを与えてくれた俺やマリス様を讃えた。
農作物は農耕の神ポーラ様の加護を受けてすくすくと育った。
街は活気に溢れ、様々な商人や職人が次々に店を出す。
貨幣経済を始めたのも俺だ。
衣食住が揃うと、悪いことを考える奴等も出てくる。
警察組織も作った。
俺は有頂天になっていたんだ。
ある日、この世界に電気が無いことに気付いた。
そうだ、電気があればもっと生活が向上するに違いない。
俺はマリス様から元の世界の物を取り寄せる力をもらった。
俺は迷わず、元の世界で最もポピュラーな核燃料を使った自家発電装置と核燃料を取り寄せた。
核燃料が危険なものであることは、歴史の授業で習った。
でも俺が生まれた西暦2285年には、最も安価で安全な発電装置は核融合だったんだ。
俺は街の中心にある庁舎の地下に自家発電装置を設置した。
そこから放射状に延びる数え切れない程の電線は、夜になっても煌々と街を照らし、人々の活動時間は、一気に伸びた。
もう俺は物を取り寄せることを自重することはなかった。
ビニールハウスでは、ロボットが季節も天候も朝晩も関係なく栽培し続け、食べ物が溢れた。
人々は働くことを忘れ、享楽に耽った。
食べ物はビニールハウスからどんどん届き、無償で誰でも食べ放題。
生産装置が次々と商品を作って街にばら撒く。
材料は元の世界から取り寄せるだけだ。
電化製品もひたすら取り寄せ、人は何もする必要がなくなった。
警察も必要ない。生活に困って悪いことをする奴さえ居なくなったんだから。
でも俺は知らなかったんだ。
プラークがこうして自堕落になっている間に、とんでもない事態が起こっていたことを。
核燃料は再利用できるが、やはり限界がある。
際限なく電気を使ったのだから、核廃棄物もどんどん溜まっていった。
シール様に相談したら、核廃棄物を埋め立てる場所を提供してもらえた。
ロボットを使って日々出てくる廃棄物をそこに運ばせる。
ロボットは、何も言わずに黙々と運ぶ。
そう何も言わずに。
俺は核廃棄物から放射能が漏れていることに、全く気付かなかった。
やがて、放射能は悪夢を生み出す。
廃棄場の近辺に住む動物や人が、漏れた放射能と、元々この地にあった魔素とが科学反応を起こしたものに侵され、次第に魔物化していったみたいだ。
長い年月をかけて。
俺は晩年、放射能汚染の事実を知ったが、それがどうした。
ここまで自堕落した者達に警告を発したところで、何の意味がある?
俺は、この事実を墓場まで持って行くことにしたんだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
いつもお読み頂きありがとうございます。
今回は後半を、尊敬する星新一先生風に書いてみました。
プラークの古代都市が実は近未来同様の文明を誇り、何も残さずに消えていったという話しです。
わたしは、原子力発電に否定的ではありません。
むしろ将来的に最も期待できる発電方式だと思っています。
わたしが生きているうちには実現しないでしょうが、2300年頃には自家発電に使えるくらいの安全性を確保出来ているのではないかと、思いながら書きました。
安全性の確保を最優先で開発を進めていって頂きたいものですね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
いつもの礼拝の時に、マサルさんから過去の転生者について聞かれたわ。
どうやら瘴気の正体を突き止めたみたい。
地球から来たゴミが原因らしいの。
2500年前に地球から持ち込まれたそのゴミが、(大地の神)シールが捨てた他のゴミに混じっていたみたい。
でも誰が持ち込んだんだろ?
あの頃は調子に乗って、いろんなところのいろんな時代から転生させていたからなぁ。
マサルさんが言うには、マサルさん達の時代よりも少し後の時代だろうって。
核燃料の再利用とか言ってたっけ。
マサルさんの時代に開発や運用が進められていたけど、まだ未熟で一般には取り扱い出来るものではなかったみたい。
どちらにしても、そんな危険なもの、早く見つかって良かったわ。
マサルさんにご褒美をあげたいんだけど、彼ったら受け取らないのよね。
いつものように寿命を伸ばしてあげようかな。
もう1000歳はとっくに越えているんだけどね。
わたしの所属する異世界管理局に転職してもらって、神って呼ばれるのもありかも。
マサルさんの性格なら、きっと良い世界を作れそうだわね。
<<マサル視点>>
ドラム缶に入っていたのは、たぶん放射能廃棄物だと思う。
過去の転生者が原子力発電をした結果なのか、それとも再利用するために持ち込まれたものなのかはわからないが、どちらにせよ厄介なものだった。
幸運にもナージャが発見者で良かった。
もし、別の者が知らずに破壊してしまっていたら、大惨事になっていたことだろう。
マリス様にこのことを確認してみたが、心当たりが無いとのことだ。
まぁマリス様達の時間の感覚でいくと、2500年なんてあっという間だから、いちいち覚えていられないかもね。
<<2500年前に転生した若者視点>>
数ヶ月前に俺は地球の西暦2300年からこの世界に転生させられて来た。
転生の目的は、この世界に文明を作ることだ。
一応この世界にも文明はある。
数十戸単位の村が農耕と狩猟で生計を立てている集落が点在しているだけだけど。
俺は集落をまとめて、都市を作った。
都市の名をプラークという。
プラークは人口3000人くらいの街で、整然と並んだ街並みは、パリをモデルにしたんだ。
立ち並ぶアパートメントはもちろん上下水道完備で、大都市に相応しい綺麗な環境を誇る。
街の周囲には畑が囲っており、その外側は、重厚な城壁に囲われている。
プラーク建設時に反対した集落がたとえ徒党を組んで襲って来たとしても、陥すことは出来ないだろう。
プラークに移住した者達は、その進んだ都市を喜び、それを与えてくれた俺やマリス様を讃えた。
農作物は農耕の神ポーラ様の加護を受けてすくすくと育った。
街は活気に溢れ、様々な商人や職人が次々に店を出す。
貨幣経済を始めたのも俺だ。
衣食住が揃うと、悪いことを考える奴等も出てくる。
警察組織も作った。
俺は有頂天になっていたんだ。
ある日、この世界に電気が無いことに気付いた。
そうだ、電気があればもっと生活が向上するに違いない。
俺はマリス様から元の世界の物を取り寄せる力をもらった。
俺は迷わず、元の世界で最もポピュラーな核燃料を使った自家発電装置と核燃料を取り寄せた。
核燃料が危険なものであることは、歴史の授業で習った。
でも俺が生まれた西暦2285年には、最も安価で安全な発電装置は核融合だったんだ。
俺は街の中心にある庁舎の地下に自家発電装置を設置した。
そこから放射状に延びる数え切れない程の電線は、夜になっても煌々と街を照らし、人々の活動時間は、一気に伸びた。
もう俺は物を取り寄せることを自重することはなかった。
ビニールハウスでは、ロボットが季節も天候も朝晩も関係なく栽培し続け、食べ物が溢れた。
人々は働くことを忘れ、享楽に耽った。
食べ物はビニールハウスからどんどん届き、無償で誰でも食べ放題。
生産装置が次々と商品を作って街にばら撒く。
材料は元の世界から取り寄せるだけだ。
電化製品もひたすら取り寄せ、人は何もする必要がなくなった。
警察も必要ない。生活に困って悪いことをする奴さえ居なくなったんだから。
でも俺は知らなかったんだ。
プラークがこうして自堕落になっている間に、とんでもない事態が起こっていたことを。
核燃料は再利用できるが、やはり限界がある。
際限なく電気を使ったのだから、核廃棄物もどんどん溜まっていった。
シール様に相談したら、核廃棄物を埋め立てる場所を提供してもらえた。
ロボットを使って日々出てくる廃棄物をそこに運ばせる。
ロボットは、何も言わずに黙々と運ぶ。
そう何も言わずに。
俺は核廃棄物から放射能が漏れていることに、全く気付かなかった。
やがて、放射能は悪夢を生み出す。
廃棄場の近辺に住む動物や人が、漏れた放射能と、元々この地にあった魔素とが科学反応を起こしたものに侵され、次第に魔物化していったみたいだ。
長い年月をかけて。
俺は晩年、放射能汚染の事実を知ったが、それがどうした。
ここまで自堕落した者達に警告を発したところで、何の意味がある?
俺は、この事実を墓場まで持って行くことにしたんだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
いつもお読み頂きありがとうございます。
今回は後半を、尊敬する星新一先生風に書いてみました。
プラークの古代都市が実は近未来同様の文明を誇り、何も残さずに消えていったという話しです。
わたしは、原子力発電に否定的ではありません。
むしろ将来的に最も期待できる発電方式だと思っています。
わたしが生きているうちには実現しないでしょうが、2300年頃には自家発電に使えるくらいの安全性を確保出来ているのではないかと、思いながら書きました。
安全性の確保を最優先で開発を進めていって頂きたいものですね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
10
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~
チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!?
魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで!
心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく--
美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~
中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」
唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。
人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。
目的は一つ。充実した人生を送ること。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる