133 / 382
第6章 ランスとイリヤ
17 【遠足で魔物に遭遇する 2】
しおりを挟む
<<イリヤ視点>>
南の草原に向かって歩き出してしばらく行ったところに、砦跡があります。
昔、まだ大陸中で国同士の戦争が絶えなかった頃、この砦が王都を守る最終ラインだったって先生が説明してくれました。
今は使うことが無くなったので、砦跡として観光名所になっているそうです。
しばらく行くと右側に森が見えてきました。
森の横を抜けると草原です。
森は結構大きいので草原までは後1時間くらいはかかりそうです。
この森にも昔はたくさんの魔物がいたそうですが、今はほとんど見かけなくなっているそうです。
街道が整備され、駅ができたことで人通りも多くなったため、魔物も出にくくなったのと、時々王都騎士団が訓練のために間引きをしているそうです。
そう言えば、ハリスさんもカトウ運輸の警備課で魔物駆除を行っているって言ってましたね。
リアンちゃん達と談笑しながら森の近くの街道を進んでいると、森の方から土煙が上がっています。
それに気付いた護衛の冒険者の方々が、森に向かって走っていきました。
そのうちの1人が大声で叫んでいます。
「魔物の大群が森から出てきた!! 早く逃げろ!!」
かなり焦っています。
スペル先生も驚いて固まってしまいました。
「スペル先生、皆んなをまとめて下さい。わたしが壁を作って対応します。」
固まっている先生にそう言って、わたしは森の方向に少し進み、土魔法で大きな壁を作りました。
100mくらいの幅で丈夫な壁を作りましたが、飛び上がって森の方を見ると、思ったより大群です。
1人では対応が難しいと思って、お兄ちゃんに念話で助けを求めました。
すぐにお兄ちゃんは来てくれました。
「イリヤ、皆んなを囲むように壁を作って!僕は堀を掘って、魔物が近づけないようにするから。」
お兄ちゃんはそう言うと、空を飛びながらわたしの作った壁の外側に大きな堀を作っていきます。
わたしが囲った壁を囲むように大きな堀ができました。
「イリヤ、この堀に水を入れて魔物が通れなくするんだ。」
わたしはお兄ちゃんと一緒に堀を水で満たしました。
簡易な城壁みたいになっています。
とりあえずは中の皆んなは大丈夫だと思います。
わたしはトランシーバーでお父様とネクターおじ様に連絡を入れました。
お父様は、すぐに駆け付けてくれました。
ちょっと壁と堀を見て驚いていましたが、『よく頑張ったね』って声を掛けてくれました。
ネクターおじ様は、砦跡の方まで騎士団を派遣して王都への侵入に備えるって言ってました。
お父さんは、迫ってくる魔物を大規模な風の魔法で切り裂いています。
あんなに大群なのに、あっていう間に減っていきます。すごいです。
お兄ちゃんも加わって一緒にやっつけています。
わたしも空からその光景を見ていましたが、ふと別のところを見ると護衛の冒険者さん達が怪我をしています。
わたしはそちらに飛んで行って、光魔法で治療してあげました。
皆んな喜んでくれて何よりです。
小1時間程度でしょうか、魔物の大群はいなくなり、付近には大量の魔物の死骸が散乱していました。
風魔法で一刀の元に死んでいるので、死骸はきれいなものです。
冒険者の皆さんは、お父様に確認を取ると、嬉しそうに魔物の解体と回収作業に向かっていきました。
「お父様ありがとうございます。
僕は、王都の西の方から来たのですが、向こうでも動物の大量発生がありました。
森の反対側は大丈夫でしょうか?」
お兄ちゃんがお父様に話しかけている。
「大丈夫だ。森の周辺地域からも被害の報告は来ておらんぞ。」
いつの間に来たのか、ネクターおじ様が話している。
「ランス君もイリヤちゃんもお手柄だったね。
君達のおかげで王都は、救われたよ。
勲章でもあげなきゃね。
ところで、この頑丈な壁と堀は、マサル殿が作ったのかな?」
「イリヤが壁を作って、僕が堀を作りました。
水は2人で入れたんだ。」
「なんと、さすがマサル殿の子だ。
こんなもの作ろうとしたら、工兵師団を投入しても1ヶ月は掛かるだろう。
それにこの戦力。
カトウ公爵家だけで、大陸を1日で征服出来るんじゃないか?
はっはっはっ。」
おじ様の豪快な笑い声の横で顔を引きつらせているのは、騎士団長様と宮廷魔導師長様かな。
「あっそうだ、皆んなのところに戻らなきゃ。
今遠足の最中なんです。」
お兄ちゃんが慌てて、空を飛んで行った。
宮廷魔導師長様の顔が引きつったままなのは、見なかったことにしよう。
結局遠足は中止になった。
そりゃそうだよね。
翌日、お兄ちゃんのクラスの子に聞いたら、向こうも壁に囲まれていたみたい。
壁から出られなくて怖かったって。
お兄ちゃんは、かなり謝っていたみたいだけど。
忘れてたんだからしょうがないよね。
そうそう、壁と堀はお父様が綺麗に整地してくれました。
お父様、ありがとうございます。
南の草原に向かって歩き出してしばらく行ったところに、砦跡があります。
昔、まだ大陸中で国同士の戦争が絶えなかった頃、この砦が王都を守る最終ラインだったって先生が説明してくれました。
今は使うことが無くなったので、砦跡として観光名所になっているそうです。
しばらく行くと右側に森が見えてきました。
森の横を抜けると草原です。
森は結構大きいので草原までは後1時間くらいはかかりそうです。
この森にも昔はたくさんの魔物がいたそうですが、今はほとんど見かけなくなっているそうです。
街道が整備され、駅ができたことで人通りも多くなったため、魔物も出にくくなったのと、時々王都騎士団が訓練のために間引きをしているそうです。
そう言えば、ハリスさんもカトウ運輸の警備課で魔物駆除を行っているって言ってましたね。
リアンちゃん達と談笑しながら森の近くの街道を進んでいると、森の方から土煙が上がっています。
それに気付いた護衛の冒険者の方々が、森に向かって走っていきました。
そのうちの1人が大声で叫んでいます。
「魔物の大群が森から出てきた!! 早く逃げろ!!」
かなり焦っています。
スペル先生も驚いて固まってしまいました。
「スペル先生、皆んなをまとめて下さい。わたしが壁を作って対応します。」
固まっている先生にそう言って、わたしは森の方向に少し進み、土魔法で大きな壁を作りました。
100mくらいの幅で丈夫な壁を作りましたが、飛び上がって森の方を見ると、思ったより大群です。
1人では対応が難しいと思って、お兄ちゃんに念話で助けを求めました。
すぐにお兄ちゃんは来てくれました。
「イリヤ、皆んなを囲むように壁を作って!僕は堀を掘って、魔物が近づけないようにするから。」
お兄ちゃんはそう言うと、空を飛びながらわたしの作った壁の外側に大きな堀を作っていきます。
わたしが囲った壁を囲むように大きな堀ができました。
「イリヤ、この堀に水を入れて魔物が通れなくするんだ。」
わたしはお兄ちゃんと一緒に堀を水で満たしました。
簡易な城壁みたいになっています。
とりあえずは中の皆んなは大丈夫だと思います。
わたしはトランシーバーでお父様とネクターおじ様に連絡を入れました。
お父様は、すぐに駆け付けてくれました。
ちょっと壁と堀を見て驚いていましたが、『よく頑張ったね』って声を掛けてくれました。
ネクターおじ様は、砦跡の方まで騎士団を派遣して王都への侵入に備えるって言ってました。
お父さんは、迫ってくる魔物を大規模な風の魔法で切り裂いています。
あんなに大群なのに、あっていう間に減っていきます。すごいです。
お兄ちゃんも加わって一緒にやっつけています。
わたしも空からその光景を見ていましたが、ふと別のところを見ると護衛の冒険者さん達が怪我をしています。
わたしはそちらに飛んで行って、光魔法で治療してあげました。
皆んな喜んでくれて何よりです。
小1時間程度でしょうか、魔物の大群はいなくなり、付近には大量の魔物の死骸が散乱していました。
風魔法で一刀の元に死んでいるので、死骸はきれいなものです。
冒険者の皆さんは、お父様に確認を取ると、嬉しそうに魔物の解体と回収作業に向かっていきました。
「お父様ありがとうございます。
僕は、王都の西の方から来たのですが、向こうでも動物の大量発生がありました。
森の反対側は大丈夫でしょうか?」
お兄ちゃんがお父様に話しかけている。
「大丈夫だ。森の周辺地域からも被害の報告は来ておらんぞ。」
いつの間に来たのか、ネクターおじ様が話している。
「ランス君もイリヤちゃんもお手柄だったね。
君達のおかげで王都は、救われたよ。
勲章でもあげなきゃね。
ところで、この頑丈な壁と堀は、マサル殿が作ったのかな?」
「イリヤが壁を作って、僕が堀を作りました。
水は2人で入れたんだ。」
「なんと、さすがマサル殿の子だ。
こんなもの作ろうとしたら、工兵師団を投入しても1ヶ月は掛かるだろう。
それにこの戦力。
カトウ公爵家だけで、大陸を1日で征服出来るんじゃないか?
はっはっはっ。」
おじ様の豪快な笑い声の横で顔を引きつらせているのは、騎士団長様と宮廷魔導師長様かな。
「あっそうだ、皆んなのところに戻らなきゃ。
今遠足の最中なんです。」
お兄ちゃんが慌てて、空を飛んで行った。
宮廷魔導師長様の顔が引きつったままなのは、見なかったことにしよう。
結局遠足は中止になった。
そりゃそうだよね。
翌日、お兄ちゃんのクラスの子に聞いたら、向こうも壁に囲まれていたみたい。
壁から出られなくて怖かったって。
お兄ちゃんは、かなり謝っていたみたいだけど。
忘れてたんだからしょうがないよね。
そうそう、壁と堀はお父様が綺麗に整地してくれました。
お父様、ありがとうございます。
0
お気に入りに追加
331
あなたにおすすめの小説
ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした
月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。
それから程なくして――――
お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。
「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」
にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。
「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」
そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・
頭の中を、凄まじい情報が巡った。
これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね?
ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。
だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。
ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。
ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」
そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。
フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ!
うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって?
そんなの知らん。
設定はふわっと。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜
甲殻類パエリア
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。
秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。
——パンである。
異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。
というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。
そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
捨てられ従魔とゆる暮らし
KUZUME
ファンタジー
旧題:捨てられ従魔の保護施設!
冒険者として、運送業者として、日々の生活に職業として溶け込む従魔術師。
けれど、世間では様々な理由で飼育しきれなくなった従魔を身勝手に放置していく問題に悩まされていた。
そんな時、従魔術師達の間である噂が流れる。
クリノリン王国、南の田舎地方──の、ルルビ村の東の外れ。
一風変わった造りの家には、とある変わった従魔術師が酔狂にも捨てられた従魔を引き取って暮らしているという。
─魔物を飼うなら最後まで責任持て!
─正しい知識と計画性!
─うちは、便利屋じゃなぁぁぁい!
今日もルルビ村の東の外れの家では、とある従魔術師の叫びと多種多様な魔物達の鳴き声がぎゃあぎゃあと元気良く響き渡る。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる