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第2章 敵はホンノー人にあり
17【いざダゴー領へ、そして....】
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<<マサル視点>>
敵の目途が立った為、俺はジョージ達の護衛に扮してダゴー領へと向かった。
途中のカクガーの森は、元々魔物が多いことで有名ではあったが、瘴気が消えた今となっては、道を遮る程のものではなかった。
無事、ダゴー領へ入った俺達は、首都ダゴーにあるダゴー公爵の城へと向かった。
ダゴーの街は、整然としているものの、どこか暗い印象を受けた。
先に聞いていた情報では、昨年の不作の影響が今年も続き、品物不足によるインフレで物価が高騰している上に、扱う商品が無く店を閉める商家が続出し失業率も上がっているとのこと。
夕刻過ぎに俺達が城に着くと、リブラ・ダゴー公爵自らが出迎えてくれる歓待ぶりであった。
当然、敵は俺達が城に入ることを快く思うわけもなく、城に入る前に何か仕掛けてくるであろうことは予測できた。
周囲にサーチの魔法と障壁の魔法をかけておく。
<<魔族の子孫フェアリー視点>>
キンコー王国からの支援団が門を入る手前の堀に掛かる橋の上に差し掛かった時、突然爆発が起こりました。
橋が崩れ橋の上にいたダゴー公爵や支援団一行は、堀に投げ出されたのです。
堀は深く、夕刻の明るさの中では底は見えません。
彼らは、そのまま堀の闇に消えてしまいました。
やった、キンコー王国からの支援団を葬ることができました。
ついでにダゴー公爵もうまく消すことができました。
これで後は、ハローマ王国には、キンコー王国の支援団がダゴー公爵を殺害しようとして橋を爆破したと、キンコー王国には、ダゴー公爵の策略として報告すれば、両国間は険悪になり戦争の火種にできるでしょう。
マリーを使った策略も全て失敗に終わり、カクガーの森での妨害工作も不発に終わりましたが、今回はうまくいったようです。
ダゴー公爵自身を出迎えに向かわせるところは少し骨が折れましたが、万事はうまく運んでいます。
さあ、後もう少しですね。
私は、念話で仲間達に支持を出し、「キンコー王国の支援団がダゴー公爵を殺害した。」とデマを流させました。
動転している城の者たちは、容易にそれを信じ込み、たちまちの内に混乱状態に陥いりました。
私は手筈通りに王都への使者と、ホンノー自治区への使者を放ちました。
「ふう、これで大丈夫でしょう。うまくいきましたわ。ほほほっ。」
全ては、これで報われるというものです。
長かった。マリーがキンコー王国王立アカデミーに向かう時から仕掛け始めた計画は、20数年の時を経てようやく成功しました。
祖先の200年来の恨みを思えば幾程ではないのですが、それでもこの成功をどれ程心待ちにしたことか。
今日は祝杯を上げましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あれから、3日経ちました。そろそろキンコー王国、王都それぞれに向かった使者が朗報を持ってくる頃でしょう。
待ち遠しいですわ。
「フェアリー殿、お待ちかねのお仲間は戻ってきませんよ。」
テラスでお茶を飲んでいると、後ろから話しかける声が聞こえた。
振り返ると、橋で滑落死したはずのダゴー公爵やキンコー王国の面々が揃っているではないですか。
「あなたのお仲間は、城を出たところで直ぐに捕縛しました。まあ、計画の全容と主犯のあなたの名前を吐かせる為に今まで掛かりましたが。」
私は何が起こったのか、直ぐに理解できませんでしたが、今話しているのが例のマサルだと気付くと全てを悟りました。
そうです、今回の全ての計画を水泡に消えさせた張本人が、今私に話しかけているのですから。
それと同時に、今回のメンバーにマサルが混じっていることにうかつにも気付かなかった自分が情けなくて涙が出てきました。
ああ、これで我等の200年来の恨みは永遠に晴らすことは出来なくなりました。
残念ですが、悔いはありません。精一杯やった結果なのですから。
<<リブラ・ダゴー公爵視点>>
儂の政務補佐をしてくれているフェアリー・ルイス伯爵夫人の勧めで、儂はキンコー王国の面々の出迎えに城の外まで出た。
本来であれば、儂が出迎えることなどありえないのだが、伯爵夫人の強い勧めもあり渋々出ていった形だ。
今回は、儂が要請し助けてもらうことになるので、渋々でもそんな顔は見せない。
あくまでスマイル、スマイル。
客人を出迎え一緒に城の堀に掛かる橋の中ほどに差し掛かった時に、大きな爆発音が聞こえた。
何事か?と思っていると足元が崩れ、橋の残骸と共に堀に落ちた。
しまった図られた。と思ったが時すでに遅し、死を覚悟していると、ふわりと体が浮いた。
周りを見ると、皆泡のようなものに包まれて浮いている。
それはゆっくりと降りていき、水面に達するとそのまま水面に沈み、流されていった。
どのくらい流されたか。しばらくすると浮上し、城の反対側から空に向かって飛んでいく。
そのまま下を見るとカクガーの森の上を過ぎ、キンコー王国の街に着いた。
地面に着地した瞬間に泡は砕け、儂らは全員無事に死からの生還を果たした。
キンコー王国からの護衛の1人が声を掛けてくる。
「ダゴー公爵様、失礼致します。わたしはキンコー王国行政改革担当大臣ユーリスタ・ナーラ公爵夫人の筆頭政務官でマサルと申します。
わたしは、キンコー王国内で発生した、ホンノー自治区襲撃事件、ユーリスタ・ナーラ公爵夫人暗殺未遂等の一連の事件の調査を行ってまいりました。
調査の結果、その一連の犯罪の黒幕がダゴー領内にいることを突き止め、今回の支援団に混じり、犯人の特定を行ってまいりました。
わたしの読み通り、犯人はキンコー王国とハローマ王国を戦争に巻き込み、双方の疲弊を促す目的であることが、先程の爆破で判明しました。
まだ、黒幕の特定はできておりませんが、今頃犯人の一味がこちらとハローマ王国の王都に向かっている最中だと思います。
早速行って捕まえてきますので、しばらくこちらでお待ち頂けますでしょうか。」
良く事情は呑み込めないが、ここは従うべきところだろう。
儂が頷くと、アベルという街の責任者であろう人物が、丁重に儂を貴賓室に案内してくれた。
向かう途中、後ろを振り返ると、マサルと名乗った青年が空を駆けていくではないか。
アベルに「彼は何者だね」と聞いてみたが、彼も苦笑するばかりであった。
当地の名物だというお茶を頂きながら待つこと20数分、マサルが2人の男を連れて戻ってきた。
んん、この2人には見覚えがある。確かフェアリー伯爵夫人が自身の警護として連れていた者たちだ。
「ダゴー公爵、お待たせ致しました。彼等が、両国を仲違いさせるためにデマを流しにいった者達です。
これからこの2人に真犯人と事件の全容を吐かせようと思いますのでもうしばらくお待ち頂けますか。
その後、2日程おいて、犯人が油断した頃に捕まえに行こうと思いますので、それまでこちらでごゆるりとお過ごしくださいませ。
明日には我が国のユーリスタ・ナーラ行政改革担当大臣もご挨拶とお打ち合わせに参る予定になっておりますので。では。」
深く礼儀正しく礼をしたマサルは、そのまま2人を連れて別の建物に消えていった。
翌日、ユーリスタ・ナーラ行政改革担当大臣が、儂の宿舎を訪問された。
彼女とは、今後のハローマ王国の発展に大きく寄与するであろう有益な情報とその支援を頂けるという、大変有意義な会談を行えた。
もちろん、彼女の横には筆頭政務官であるマサル いやマサル殿が座っており、的確な助言と実際の詳細計画、実施例についての説明がなされた。
後でユーリスタ殿にマサル殿について尋ねてみたが、苦笑するだけで、今以上の情報を得ることは出来なかった。
翌日、儂はマサル殿の魔法で空を飛ぶことになる。
最初は怖さが先に立ったが、慣れてくると童心に帰ったように楽しい気分になった。
城が見えてきた頃、我々は地上におり、ルイス伯爵家の裏口に入った。
既に伯爵とは話がついているようで、伯爵は儂の前で跪き詫びた。
儂は頷き、そのままフェアリー夫人がいるテラスへと向かう。
マサル殿は、優雅にお茶を楽しむ夫人に声を掛け、これまでの経緯と捕まえた2人を差し出した。
夫人はマサル殿を知っているようで、そうと気付いた時にがっくりと肩を落とし、膝をついた。
伯爵家の兵が夫人を捕縛し、城の騎士へと引き渡した。同時に伯爵家に仕える数名も引っ立てられていった。
後日、フェアリー夫人の取り調べ調書を見て、その遠大なる計画とそこに秘められた強い恨みに驚愕せざるを得なかった。
娘のマリーも被害者であることが分かり、ほっとした半面、なぜ気付いてやれなかったのかが悔やまれる。
敵の目途が立った為、俺はジョージ達の護衛に扮してダゴー領へと向かった。
途中のカクガーの森は、元々魔物が多いことで有名ではあったが、瘴気が消えた今となっては、道を遮る程のものではなかった。
無事、ダゴー領へ入った俺達は、首都ダゴーにあるダゴー公爵の城へと向かった。
ダゴーの街は、整然としているものの、どこか暗い印象を受けた。
先に聞いていた情報では、昨年の不作の影響が今年も続き、品物不足によるインフレで物価が高騰している上に、扱う商品が無く店を閉める商家が続出し失業率も上がっているとのこと。
夕刻過ぎに俺達が城に着くと、リブラ・ダゴー公爵自らが出迎えてくれる歓待ぶりであった。
当然、敵は俺達が城に入ることを快く思うわけもなく、城に入る前に何か仕掛けてくるであろうことは予測できた。
周囲にサーチの魔法と障壁の魔法をかけておく。
<<魔族の子孫フェアリー視点>>
キンコー王国からの支援団が門を入る手前の堀に掛かる橋の上に差し掛かった時、突然爆発が起こりました。
橋が崩れ橋の上にいたダゴー公爵や支援団一行は、堀に投げ出されたのです。
堀は深く、夕刻の明るさの中では底は見えません。
彼らは、そのまま堀の闇に消えてしまいました。
やった、キンコー王国からの支援団を葬ることができました。
ついでにダゴー公爵もうまく消すことができました。
これで後は、ハローマ王国には、キンコー王国の支援団がダゴー公爵を殺害しようとして橋を爆破したと、キンコー王国には、ダゴー公爵の策略として報告すれば、両国間は険悪になり戦争の火種にできるでしょう。
マリーを使った策略も全て失敗に終わり、カクガーの森での妨害工作も不発に終わりましたが、今回はうまくいったようです。
ダゴー公爵自身を出迎えに向かわせるところは少し骨が折れましたが、万事はうまく運んでいます。
さあ、後もう少しですね。
私は、念話で仲間達に支持を出し、「キンコー王国の支援団がダゴー公爵を殺害した。」とデマを流させました。
動転している城の者たちは、容易にそれを信じ込み、たちまちの内に混乱状態に陥いりました。
私は手筈通りに王都への使者と、ホンノー自治区への使者を放ちました。
「ふう、これで大丈夫でしょう。うまくいきましたわ。ほほほっ。」
全ては、これで報われるというものです。
長かった。マリーがキンコー王国王立アカデミーに向かう時から仕掛け始めた計画は、20数年の時を経てようやく成功しました。
祖先の200年来の恨みを思えば幾程ではないのですが、それでもこの成功をどれ程心待ちにしたことか。
今日は祝杯を上げましょう。
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あれから、3日経ちました。そろそろキンコー王国、王都それぞれに向かった使者が朗報を持ってくる頃でしょう。
待ち遠しいですわ。
「フェアリー殿、お待ちかねのお仲間は戻ってきませんよ。」
テラスでお茶を飲んでいると、後ろから話しかける声が聞こえた。
振り返ると、橋で滑落死したはずのダゴー公爵やキンコー王国の面々が揃っているではないですか。
「あなたのお仲間は、城を出たところで直ぐに捕縛しました。まあ、計画の全容と主犯のあなたの名前を吐かせる為に今まで掛かりましたが。」
私は何が起こったのか、直ぐに理解できませんでしたが、今話しているのが例のマサルだと気付くと全てを悟りました。
そうです、今回の全ての計画を水泡に消えさせた張本人が、今私に話しかけているのですから。
それと同時に、今回のメンバーにマサルが混じっていることにうかつにも気付かなかった自分が情けなくて涙が出てきました。
ああ、これで我等の200年来の恨みは永遠に晴らすことは出来なくなりました。
残念ですが、悔いはありません。精一杯やった結果なのですから。
<<リブラ・ダゴー公爵視点>>
儂の政務補佐をしてくれているフェアリー・ルイス伯爵夫人の勧めで、儂はキンコー王国の面々の出迎えに城の外まで出た。
本来であれば、儂が出迎えることなどありえないのだが、伯爵夫人の強い勧めもあり渋々出ていった形だ。
今回は、儂が要請し助けてもらうことになるので、渋々でもそんな顔は見せない。
あくまでスマイル、スマイル。
客人を出迎え一緒に城の堀に掛かる橋の中ほどに差し掛かった時に、大きな爆発音が聞こえた。
何事か?と思っていると足元が崩れ、橋の残骸と共に堀に落ちた。
しまった図られた。と思ったが時すでに遅し、死を覚悟していると、ふわりと体が浮いた。
周りを見ると、皆泡のようなものに包まれて浮いている。
それはゆっくりと降りていき、水面に達するとそのまま水面に沈み、流されていった。
どのくらい流されたか。しばらくすると浮上し、城の反対側から空に向かって飛んでいく。
そのまま下を見るとカクガーの森の上を過ぎ、キンコー王国の街に着いた。
地面に着地した瞬間に泡は砕け、儂らは全員無事に死からの生還を果たした。
キンコー王国からの護衛の1人が声を掛けてくる。
「ダゴー公爵様、失礼致します。わたしはキンコー王国行政改革担当大臣ユーリスタ・ナーラ公爵夫人の筆頭政務官でマサルと申します。
わたしは、キンコー王国内で発生した、ホンノー自治区襲撃事件、ユーリスタ・ナーラ公爵夫人暗殺未遂等の一連の事件の調査を行ってまいりました。
調査の結果、その一連の犯罪の黒幕がダゴー領内にいることを突き止め、今回の支援団に混じり、犯人の特定を行ってまいりました。
わたしの読み通り、犯人はキンコー王国とハローマ王国を戦争に巻き込み、双方の疲弊を促す目的であることが、先程の爆破で判明しました。
まだ、黒幕の特定はできておりませんが、今頃犯人の一味がこちらとハローマ王国の王都に向かっている最中だと思います。
早速行って捕まえてきますので、しばらくこちらでお待ち頂けますでしょうか。」
良く事情は呑み込めないが、ここは従うべきところだろう。
儂が頷くと、アベルという街の責任者であろう人物が、丁重に儂を貴賓室に案内してくれた。
向かう途中、後ろを振り返ると、マサルと名乗った青年が空を駆けていくではないか。
アベルに「彼は何者だね」と聞いてみたが、彼も苦笑するばかりであった。
当地の名物だというお茶を頂きながら待つこと20数分、マサルが2人の男を連れて戻ってきた。
んん、この2人には見覚えがある。確かフェアリー伯爵夫人が自身の警護として連れていた者たちだ。
「ダゴー公爵、お待たせ致しました。彼等が、両国を仲違いさせるためにデマを流しにいった者達です。
これからこの2人に真犯人と事件の全容を吐かせようと思いますのでもうしばらくお待ち頂けますか。
その後、2日程おいて、犯人が油断した頃に捕まえに行こうと思いますので、それまでこちらでごゆるりとお過ごしくださいませ。
明日には我が国のユーリスタ・ナーラ行政改革担当大臣もご挨拶とお打ち合わせに参る予定になっておりますので。では。」
深く礼儀正しく礼をしたマサルは、そのまま2人を連れて別の建物に消えていった。
翌日、ユーリスタ・ナーラ行政改革担当大臣が、儂の宿舎を訪問された。
彼女とは、今後のハローマ王国の発展に大きく寄与するであろう有益な情報とその支援を頂けるという、大変有意義な会談を行えた。
もちろん、彼女の横には筆頭政務官であるマサル いやマサル殿が座っており、的確な助言と実際の詳細計画、実施例についての説明がなされた。
後でユーリスタ殿にマサル殿について尋ねてみたが、苦笑するだけで、今以上の情報を得ることは出来なかった。
翌日、儂はマサル殿の魔法で空を飛ぶことになる。
最初は怖さが先に立ったが、慣れてくると童心に帰ったように楽しい気分になった。
城が見えてきた頃、我々は地上におり、ルイス伯爵家の裏口に入った。
既に伯爵とは話がついているようで、伯爵は儂の前で跪き詫びた。
儂は頷き、そのままフェアリー夫人がいるテラスへと向かう。
マサル殿は、優雅にお茶を楽しむ夫人に声を掛け、これまでの経緯と捕まえた2人を差し出した。
夫人はマサル殿を知っているようで、そうと気付いた時にがっくりと肩を落とし、膝をついた。
伯爵家の兵が夫人を捕縛し、城の騎士へと引き渡した。同時に伯爵家に仕える数名も引っ立てられていった。
後日、フェアリー夫人の取り調べ調書を見て、その遠大なる計画とそこに秘められた強い恨みに驚愕せざるを得なかった。
娘のマリーも被害者であることが分かり、ほっとした半面、なぜ気付いてやれなかったのかが悔やまれる。
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