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第2章  敵はホンノー人にあり

12【ダゴーシティにて】

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<<マサル視点>>
俺はワーカ城を出て、一路ホンノー自治区に向かった。
最近、空中を走る技を覚えた。
風魔法で空気の幕を厚く張り、その上に足を乗せ、踏み出すと同時に前に生み出した別の空気の幕に踏み出した足を乗せる。
それを繰り返すと空中を走れるようになった。

地面を走るよりも障害物が無い分早い。馬車であればゆうに1週間はかかるであろうホンノー自治区まで、4時間程でついてしまう。

夜も明けているので、早速アベルの元に向かう。

「アベル殿、早朝からすまないが、相談にのって欲しい。」

俺は、アベルにそう切り出し、昨夜の話しをした。

「ライヤー、カインと長老を連れてきてくれ。」

「承知しました、アベル様。」

しばらくしてライヤーは、カインと1人の老人を連れてきた。

「マサル殿が、200年前のホンノー人のことについて聞きたいと仰っている。一緒に聞いて知恵を欲しい。
マサル殿、申し訳ないが、先程の話しをもう一度お願いできるか?」

俺は頷くと、もう一度ライヤーを含めた4人の前で、昨夜の出来事を話した。

「もしかすると、ダゴー領に住むと云われる「隠れホンノー人」かも知れんな。」
長老と呼ばれる老人がつぶやいた。

「長老、隠れホンノー人とは?」

アベルが長老に尋ねる。

「隠れホンノー人とは、200年前、最後のキンコー王国との戦いで一番戦果を挙げた、モーリ将軍の一派のことを指す。
これは我一族に伝わる言い伝えだが、我らホンノー人は、キンコー王国とのあまりにも長い戦いの中で疲弊していた。
200年前の最後の戦いにおいても、勝つには勝ったが、損害も大きく有利な和平を結び平和を取り戻したいと考えるものがほとんどだった様じゃ。

結果的に、キンコー王国の一部を割譲してもらい、「ホンノー自治区」として、安住の場所を得ることで、我らの祖先の願いは叶った。
しかし、それを良しとしなかった者がいた。
それが、モーリ将軍率いる一軍であった。
彼らは、もっと戦うことを望み、キンコー王国を征服しようと考えておった。
だが、我ら祖先の多くは、それに反対し、その対立は日増しに大きくなっていった。

やがて、部族を2分する争いの上、敗れたモーリ将軍一派は、当時まだ原野であった現在のハローマ王国ダゴー領に移り住んだと言われておる。

それからしばらくして、北方に住むアワーズ民族の一部であるハローマ族が興したハローマ王国と激しい領地争いの中で、モーリ将軍一派はチリジリになった。
彼らは全滅したとされたが、噂では、ハローマ王国に取り込まれた者の一部が今も存在すると云われる。」

長老の話しに頷きながら話しを聞いていたカインが口を開く。
「我らもその話しを聞いたことがある。我らは、その時に落ち延びた一族の末裔だといわれている。
もしかして、我らと同じように落ち延びて隠れたまま生活している部族が他にあるということか?」

「そうじゃ、それが隠れホンノー人じゃ。ハローマ王国に取り込まれたホンノー人は、隠れホンノー人の部族に対し、卑怯者と蔑み弾圧をしていたと聞く。
もしかすると、ハローマ王国が裏で手を引いて、隠れホンノー人を動かしておるのかも知れんのお。」

なるほど、それであれば古い武器を使用するホンノー人であってもおかしくは無い。

俺は、長老に隠れホンノー人の住む地域を聞き、そこに偵察に行ってみることにした。

ホンノー自治区からハローマ王国ダゴー領までは、カクガーの森を突き抜ける必要がある。

俺は、空中を走りながら一気にカクガーの森を抜け、ダゴー領へと入った。

さすがに、首都ダゴーシティにそのまま入るのはまずいので、「隠遁」魔法を使って姿を消しつつ、空中を走り首都に潜入した。

ダゴーシティは、人口3000人程度の中規模の街である。

昨夜の賊に掛けた「ファインダー」の効果がまだ残っていたので、俺は姿を隠したまま、その示す場所まで移動した。

辿り着いた場所は、一軒の大きな屋敷であった。
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