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第1章 キンコー王国は行政改革で大忙し

25【ユーリスタ頑張る】

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<<ユーリスタ視点>>
マサル様が、1年振りにナーラ街に戻ってきました。

ハーバラ村の改革だけでなく、大陸各国を巻き込んでの特許や国際裁判所の設置等、彼はこの世界を一気に加速させてくれました。

彼の活躍振りは舞台化され、連日大賑わいです。

リズちゃんは、王立アカデミーで1年生ながら学生代表として、忙しい毎日を過ごしているようですね。

彼女がアカデミーを卒業するまでに、女性が政治参加できる環境を作っておいてあげたいと思います。

さてわたしはといえば、ナーラ領の行政担当として、忙しい毎日を送っています。

今取り組んでいるのは、戸籍の管理や衛生面の改善、大量の流入者に対する住居の確保です。

ハーバラ村の改革は、当初の想定以上に大陸中に影響を与え、試行と呼べるような問題ではなくなりました。

一気に大陸中に広まり、農村部の生活環境が一変すると共に税収増により、国家としても大変潤ってきました。

しかし同時に弊害も出てきました。その最たるものが、人口の過剰流入です。

この1年で、ナーラ領内では、ほとんどの村で改革が進み、生活が改善されていますが、国内でも他領や他国では未だ改革が進んでいないところもあります。

そういったところからナーラ領に人が移民してきているのです。

その数は数千人とも言われ、それにより一部の地域ではスラム化が発生しています。

この問題を解決する策が、前出の戸籍の管理、衛生面の改善、住居の確保です。

戸籍については、これまであまりきちんと管理できていませんでした。

特に農村部では村長が申告してくる人数を正としていたので今回の移民等については、人数の確認もままなりません。

そこで、きちんとした戸籍とそれを監督する住民局を作ることにしました。

また移民局を設け、移民に関する正規の手続きを作成することで、移民の把握と不法移民の排除を行うことにしました。

これらもマサル様から頂いたアイデアを元にアレンジして考えています。

各街村に住民局の役人を派遣し、それぞれの正確な人数を把握します。

次に、ナーラ領と他領を繋ぐ場所全ての街道に関所を設け、人の流入流出の管理をきちんと行い、戸籍の改変を行います。

その際、双方の領できちんと流出の記録と手続きが終わっているかを確認することで不法移民を防ぎます。

これについては、ネクター王に進言、了承を得て、各領地に徹底してもらいました。

戸籍を作成したら生産可能な者、教育が必要な者、看護など社会保障が必要な者を割り出し、税の負担額や教育の推進、医療部門の派遣等を勘案し手配します。

また、各街村以外に存在する移民村についても同様の調査を行い、近くの街村への編入や、村の新設等を検討します。

次に衛生面ですが、問題となるのは生活排水と糞尿の処理です。

生活排水は道の排水溝にそのまま垂れ流しにしていたので、夏場などは大量の虫が湧き、その虫が疫病を生み出していました。

また、糞尿については決められた業者が一定間隔で各家庭を廻り回収し、適切に廃棄することになっていますが、これが守られず適当な川などに捨てられ悪臭を放っていました。

この2点についても大量の移民が住み着いたため量が増え、今までよりもひどい状況になっています。

まず、下水道を作ることにしました。

土魔法で土管を作り、同じく土魔法で掘り返した道の下に埋めていきます。

土管は各家に伸びており、各家では排水や糞尿をここに流します。

土管から各家に繋がるパイプには返しがついており、匂いが上がりにくくなるように工夫しています。

実はこれはリズちゃんのアイデアなんです。

アカデミーで活発に活動している「次世代の農村を考える会」にも私が抱えている問題を説明し、アイデアを募集しています。

こうすることで、よりアカデミーの社会貢献度が増し、学生の政治参加への意欲が高まることを期待しています。

この策は想像以上にうまく機能しており、今年の卒業生の数人はわたしの下に入ってくることでしょう。楽しみです。

最終的に糞尿を含んだ下水は1ケ所に集められそこでろ過した上で水分は川に流されます。

固形物は焼却魔法で毎日焼かれ、土に混ぜて肥料として販売することにしました。これにより維持費を賄えています。

移民の住居については、マサル様からマンション?という共同住宅のアイデアを頂きました。

マサル様は元々建築を得意としているとのことだったので、新たに建築局を作り、マサル様に監督してもらうことにしました。

現在、建築局はフル回転しています。まず、建築資材としてコンクリートという新素材が開発されました。

以前からある素材を集めて作るだけなのでコスト面でも調達面でも苦労することなく生産できます。

次に鉄骨が開発されました。

従来より鉄はあったのですが不純物を取り除くのが難しく大量生産が難しかったのです。

このあたりもマサル様の知識で乗り切り、強い鉄の大量生産が可能になりました。

建物の設計については、基本構造をマサル様が設計し、内部はそれぞれの担当者が住む対象に合わせて設計する様にしました。

その他、建築場所の確保、整地等も建築局の仕事で、それら全てをこなしながら、まずはスラムから始め、各街村へと広げていきました。

建物は全て領の資産としました。

おかげで、住居の問題は解消され同時に家賃収入も見込めます。

このように改革を進めていき、今ではナーラ領が大陸中のモデルケースとして、様々なところから注目されています。

実は、わたしには秘密兵器があります。

マサル様がリズちゃんに送った「トランシーバー」です。

遠く離れている人と、直接話せる魔道具です。

付与魔法の練習をしてたら、作れたそうです。

これをリズちゃんから見せてもらったんですが、すぐにマサル様に量産をお願いしました。

これは便利です。

複数人に発信できるように改造してもらい、王都の宰相様やクラーク様、ヘンリー様、マサル様、各地に派遣している行政官等に持って頂きました。

おかげで、問題か起こってもすぐに対処でき、とんでもないスピードで改革が進んでいます。

しかも、わたしは屋敷から動かずにです。

改造は今も続いており、最新機種では話した言葉を文字で送ることができます。

これならお茶会の邪魔をされることも無くなりそうです。

このやり方が今後採用されていけば、有能な女性が結婚して家に縛られたとしても、その才能を埋もれさせないで活用できます。

弊害というわけじゃないんですが、ヘンリー様からの愛の囁きが頻繁になって、ちょっと面倒くさいのは秘密です。

わたしが行政改革を推進して1年が経ち、戸籍の管理、衛生面の改善、住居の確保については、ほぼ軌道に乗ったと思います。

そんなある日、わたしはネクター王から呼び出されました。

ネクター王は、わたしのナーラ領での実績を評価して下さり、キンコー王国の行政改革大臣として、王国全体の改革を進めて欲しいと仰りました。

わたしは、謹んでお受けすることにしました。

とうとう、学生時代からの夢であった国レベルでの行政改革ができるのです。

こんなうれしいことはありません。

ナーラ領での実績をフル活用して王国中を幸せにしていくことを固く誓うわたしでした。



<<宰相婦人視点>>
ナーラでの出来事は、まるで夢のようなものでした。

王国内が落ち着いている時期だとはいえ、普通に考えて、あり得ないスピードで改革が進んでいき、今まさに国中に広まりつつあります。

ユーリも女性初の官僚として、行政改革担当大臣になることが決まりました。

彼女の長年の夢が叶ったわけですが、彼女のことです、どこまで走り続けるでしょうか?

まぁ 、わたしは公私にわたってサポートすることにしましょう。

宰相であるわたしの旦那様も、早期にこの事態を予測し、準備を進めていた為、大陸各国の調整がスムーズにいったと言えるでしょう。

わたしがナーラ領の晩餐会で頂いた料理や持ち帰った香辛料の話しをしたら、旦那様は考え込み、すぐにクラーク様に書簡を送られました。

クラーク様からの返信を読むなり、王城に向かい、今後想定される事態をネクター王に進言し、準備を始めたそうです。

後日、クラーク様から旦那様に礼状と贈り物が届きました。

大きな岩塩と大量のペッパーが入っていました。

今夜の夕飯は、今王都で流行っているオドラビットのハンバーグにいたしましょう。

第1章完
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