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第1章 キンコー王国は行政改革で大忙し

21【初めての学校】

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<<リズ視点>>
5月末にわたしは王都にある王立アカデミーに入学する為に王都に入った。

王都に来るのはこれが初めて。

これから3年間の学生生活が始まる。

生活についてはマーガレットがついてくれるので、余り心配はしていないが、勉強は、初級学校には行かずお母さんが教えてくれただけなので、ついていけるか心配だ。

後友達もいっぱいできたらいいな。

とりあえずナーラ領からは伯爵家のエミリーちゃんも入学することになっているので、1人は確保できている。

6月の最初の日に入学テストがあった。

貴族は、無条件で入学できるのだけど、テストの成績でクラスを決めるみたい。

事前にユーリ様に勉強を見てもらったら、

「全然問題無いから大丈夫よ!」

って言ってもらえたので、余り心配してないんだけど、テストって初めてだから、緊張しちゃう。

テスト用紙が配られて問題を確認したら、あまり難しくなかった。

テスト時間の半分くらいで終わったので、周りを見渡すと、みんな未だやっている。

わたしが早すぎるのはおかしい?と思って何度も見直しちゃた。

入学式の2日前にクラス分けの発表があったので確認に行った。

Sクラスにわたしの名前があった。

エミリーちゃんの名前を探したら同じSクラスにあった。

一緒のクラスで良かったぁって思ってたら、エミリーちゃんがこちらにやって来た。

「リズちゃん、ごきげんよう。
同じクラスになれて良かったね。」

「エミリーちゃん、ごきげんよう。
本当に良かったよ。
わたし王都に知り合いいないし、エミリーちゃんとクラスが別れたらどうしようかって思ってたんだ。」

「わたしもよ。  
うん? リズちゃん、名前の後ろに☆印が付いているよ。
何だろうね。」

こんなたわいもない話しをしていたら、

「リザベート・ナーラさん、教員室まで来てください。」

って拡声魔法で呼び出しがあった。
急いで教員室に向かい、ノックをして入ると、女性の先生が「リザベートさん?」って声を掛けてきたので、そうですって答えた。

するとその先生は、「こちらへ」ってわたしを奥の部屋に案内してくれた。

その部屋には、おじいさんが1人居て、わたしを迎えてくれた。

「入学おめでとう、リザベートさん。

君の話しはユーリスタ君から聞いているよ。

君は初級学校に行っていないと聞いていたんだが、ところがどうして君が入学テストトップだったよ。

よく頑張ったね。」

お母さんが勉強を教えてくれたから、初級学校に行かなくても良い成績が取れたんだ。

お母さんに感謝しなきゃ。グスッ…

「それで君に新入生代表の挨拶をして欲しいんだが、お願いできるかなぁ?」

「ありがとうございます。頑張らせて頂きます。」

「じゃお願いするね。

実はユーリスタ君も君のお母さんのマリアン君も、入学テストがトップで代表の挨拶をしたんだよ。

2人共卒業までずっとトップだったから、君も頑張ればきっとできるよ。頑張ってね。」


その後、おじいさん… (校長先生だったんだけどね)と、ユーリ様やお母さんの学生時代の話しを聞いて、教員室を後にした。

入学式当日、わたしは全校生徒と来賓の方々の前で、新入生代表の挨拶をした。

入学式には、ヘンリー様やユーリ様はもちろん、マサルさんもハーバラ村から駆けつけてくれた。

入学式を終え、これから3年間住むヘンリー様の王都別邸にみんなで向かい、入学のお祝いパーティーをしてもらった。

お父さん、お母さん、リズは、幸せものです。

一生懸命に学生生活を頑張ってお母さんのようにトップのまま卒業しますね。



<<王立アカデミー校長視点>>
本日、入学テストを実施した。

王立アカデミーに入る為には、本来なら厳しい入学テストを受ける必要がある。

その為、初級学校を卒業したくらいの成績では、到底入学できない。

中級貴族以上の子弟は、幼少の頃から家庭教師を付けて勉強しているので、どうしても中級貴族以上の子弟が、入学することになってしまう。

まぁ中級貴族以上の子弟でも出来の悪いのはいる。

入学を希望する貴族には、事前に抜き打ち調査を水面下で行い、審査している。

つまり、事前に審査を通ったものだけが入学テストを受けることができる。

その為、貴族は無試験で入学できるように見えるのだ。

これは過去に、入学を巡って不正が多く起こった事に起因する。

1月程前、ナーラ公爵に嫁いだユーリスタ君から連絡があった。

ナーラ公爵の妹マリアンの子供を養子に迎えようと思っている。

ついては、王立アカデミーに入学させたいが如何でしょうか?という内容であった。

その書簡には、勉強については、初級学校には通っていなかったが、マリアン君に教えてもらっていた事、事前にユーリスタ自身が、学力を確認して問題無いと判断した事等が書いてあった。

最後にこう記してあった。

「先生.ゼミでは大変お世話になりました。

あの時自分が成し得なかった夢は、今でも忘れていません。

ナーラ領ではこれから行政改革に力を入れていく事になります。

わたしも微力ながら協力していきます。

リザベートは、あの頃のわたしの夢をきっと実現してくれるだろうと信じています。

先生やゼミの仲間達と共に夢見た、『国民全てが幸せになる方法』を見つける事を。
 ユーリスタより」

彼女にとっては時代が悪かったとしか言えない。

彼女が国のリーダーとして、そしてゼミのメンバーが参謀としてあの時国を動かしていたら、もしかしたらもっと世の中は進歩していただろう。

彼女が期待する、リザベート嬢に早く会いたいものだ。


入学テスト当日、わたしはリザベート嬢の受験会場に行ってみた。

既にテストが始まって半分程時間が過ぎている。

リザベート嬢は、既に問題を解き終え、検算に入っているようだ。

今年の問題は、例年より難しくしてあると担当の教師から聞いている。

その言葉通りほとんどの受験者は、問題に苦戦している。

今年の首席候補筆頭のオザーク侯爵の嫡男ですら、未だ問題と格闘していた。

わたしは、結果発表を楽しみにその場を離れた。

翌日、わたしの元へテスト結果が持ち込まれた。

予想通り、リザベート嬢が首席であった。

担当の教師は、わたしに

「こんな出自の不明な女子より、将来を約束されているオザーク侯爵の嫡男を首席にしましょう。
その方が学校の為になります。」

と言った。

「それ以上言うな、ラシード君。

わたしが何も知らないとでも思っているのか!

テスト問題の不正取引が流行っているそうだな。

わたしは、直前に5問ばかり問題を差し替えておいた。

その5問を全て正解出来ているのは、リザベート嬢だけではないか。

彼女こそ、紛れもない真の首席だ!!」

ラシードは、ぐうの音もでずにその場を立ち去った。

翌日、わたしはラシードの辞表を受理した。



<<エミリー視点>>
お父様が王都に行った時、問題集を買ってきて下さった。

なんでも王都の有名な学者様が作られたものらしい。

かなり高価だけど、アカデミーに上位クラスに入るには、この問題集を丸暗記しなくてはいけないみたい。

勢い込んで臨んだ入学テストだったが、かなり難しかった。

10問中3問は、問題集と全く同じ問題だった。

時間ギリギリまで、やれるだけ頑張った。

だって、お父さんが無理をしてでもわたしを上位クラスに入れようとして下さったから。

結果発表で、Sクラスにわたしの名前があった。

そういえば、この前公爵夫人のお茶会でお友達になったリズちゃんも、このテストを受けているんだった。

自信無さそうだったけど、どうだったんだろう。

リ、リ、リ、……リザベート・ナーラ あっ あった。

良かった、リズちゃんもSクラスだ。

本当に良かった。リズちゃん、学校でも仲良くしてね。

入学式を終え、通常授業に入った。

そうそう入学前に、お母様から

「オザーク侯爵の嫡男もアカデミーに入学しているはずだから、気をつけて。

目下の者に対して無理難題を吹っかけてくるらしいからね。」

って言われてた。

どうやら入学しなかったらしい。

噂だと、Sクラスに入れなかったのが理由みたい。

トカーイ帝国の帝国カレッジに入学したって聞いた。

あそこは、お金さえ払えば誰だってSクラスに入れるんだって。
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