上 下
2 / 382
第1章 キンコー王国は行政改革で大忙し

2【この世界の常識を学ぶ】

しおりを挟む
<<マサル視点>>
リズが両親と最後の挨拶をした後、リズと荷物を馬に乗せてナーラの街に向かった。

ナーラまでは、馬車で1日くらいの距離だとリズに聞いたので、とりあえず今日のうちに行けるところまで行っておきたい。

この森の中で野宿は避けたいところだ。

リズを馬に乗せて俺は走る予定だが、リズは自分が走るって言って聞かない。

遠慮しているだけじゃなく単純に体力に自信があるのだろう。

もちろんそんな事はさせられないので、強引に馬に乗せて出発した。

幸い馬は元気なので俺の体力次第だと思っていたが、神様に力を強化してもらったからか、馬の走りに負けないスピードで走ることができ、明るいうちに森を抜ける事ができた。

道中湿っぽくなるかなと思っていたがリズも俺の走りに驚いたりして、そんな雰囲気にならなったのは、俺としてはありがたかった。

ビッグベアは解体し、リズが持っていた冷凍の魔道具で凍らせていくつかの塊にしておいた。

森を抜けてしばらくすると、村が見えてきた。

日も暮れてきたので、今日はこの村で1泊させてもらおう。

村に入って、最初に出会った少年に熊の肉を売れる店を聞いた。

泊めてもらうにしてもお金が必要だろう。

村の中心に肉屋があり、親父が暇そうに店番をしていた。

冷凍した肉を売りたいと話すと、ビッグベアの肉は非常に珍しがられた。

俺にはこの世界の貨幣価値がわからないので、リズに金額交渉を頼む。

さすが行商人の娘ということか、高値で買い取ってもらえたようだ。

肉屋で宿屋を紹介してもらい今晩は、そこで泊まる。

その晩、リズと今後について話しをしたが、身寄りがあるわけでもなく、当面一緒に旅をすることになった。

部屋にベッドを2つ用意してもらい、お湯をもらって身体を拭いた。

本当は、風呂に入りたかったがリズに聞くと貴族くらいしか風呂に入っていないようなので諦めた。

俺があまりにもこの世界のことを知らないので、リズが理由を聞いてきた。

リズにはいろいろ見られてるし、隠してもしょうがないので、他の人には内緒ってことで、前世からこの世界に来たことについて話した。

リズは、ちょっと驚いたようだがすぐに納得したようだ。

「じゃあこの世界の事は、わたしが教えてあげますね。

まず、ここですがジャボ大陸キンコー王国ナーラ大公爵領アイカ村です。

ナーラは、大公爵領の首都になります。

キンコー王国の東の端になり、先程の森を反対側に抜けたら、トカーイ帝国ですね。」

貨幣価値について聞いてみると、硬貨は、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の4種類で 1銅貨が100円程度で1銀貨は1000円、1金貨は10万円相当になるらしい。

白金貨は、貴族街でしか使用出来ないらしい。

日用品や食料品は、ほとんど銀貨数枚までで足りるようで、未だ物々交換も多いらしい。

そういえばこの宿屋もビッグベアの肉を少し渡したら銀貨1枚で泊まれたので、物価も高くなさそうだ。

もしかするとビッグベアの肉がレアだからかもしれないが、どっちでもいいか。



<<リズ視点>>
マサルさんが走って、わたしが馬じゃもうしわけがない。

わたしも体力には自信があるしわたしが走った方がいいのではと言ってみたが、全く聞いてくれていない。

まぁちょっとしたら交代しようと思って移動を始めて驚いた。

馬よりマサルさんの方が断然速いの。絶対おかしいって。

馬が追いついて行っているというよりもマサルさんが馬のペースに合わせてくれているようだ。

自分が走らなくて良かったと思う、きっと足を引っ張っていただろう。

すぐにビッグベアのところまで戻って来た。ビッグベアの肉は美味いので高値で売れる。

マサルさんに説明してわたしが解体した。ちょっと役に立てたかなぁ。

幸い馬車から持ってきた荷物の中に冷凍の魔道具があったので細かく分けて冷凍しておく。

切り口がきれいなので結構な量をとれた。これで当面の生活資金は確保できた。馬車にもいくらかあったけど心許なかったしね。

明るいうちにに森を抜けてアイカ村に着いた。首都ナーラまであと半日くらい。

これまでの速さなら今日中にナーラに着いたと思うけど、きっと馬がもたない。

マサルさんは余裕そうだけど。この人絶対に普通じゃないよ、言えないけどね。

さてビッグベアを売ってお金にしょう。マサルさんに肉屋と交渉してもらったがどうも様子がおかしい。

話しが噛み合っていないようなので、代わりにわたしが交渉した。

処理が早く保存状態も良かったので思ったよりも高値がついた。

わたしも交渉頑張ったからね。

ナーラまで行けばもっと高く売れるだろうから必要な分だけ売った。

宿屋に入ったらマサルさんが2部屋取ろうとしたので、1部屋にしてもらった。

だってもったいないし、マサルさんならって…アァ恥ずかしい、赤面してしまった。

だってマサルさんってあのビッグベアを倒しちゃうほど強いし、足は速くて体力も凄いし。

力が全てのこの世界では超優良物件だよ。そのうえ優しいし。

マサルさんは少し抵抗していたが、諦めてベッド2つで妥協してくれた。
1つでも良かったのに…

食事を済ませたらマサルさんが宿屋の主人に風呂の場所を聞いていた。

こんな村に風呂があるわけないじゃない。

貴族でもなかなか入れないのにね。

やっぱり常識がずれている。

部屋に入ってからお湯で体をふいた。

マサルさんは、わたしの体を見ないように気を使ってくれていた。

別にマサルさんならいくら見られてもいいのに。

マサルさんの背中を拭いてあげようとしたら、焦ったような態度がちょっとかわいかったのは秘密にしておく。

体も拭き終えて、ひと段落したところでマサルさんに改めてお礼を言った。

マサルさんは「当たり前のことをしたまでだよ。

困ってたら普通助けるだろうし、まして人が殺されるかもしれないのに、放って置けないだろう。」と当たり前のように言う。

いやいやおかしいでしょう。

自分が生き延びる事が全て、親兄弟でも簡単に裏切る人が多いのに、初めて会った人間にこの態度は。

本来ならわたし身包み剥がされて奴隷として売り飛ばされても文句言えないのに。

もしかして、どこかの王族か何か?と思って、単刀直入に聞いてみた。

「俺は全然王族じゃないよ。

ごく普通の24才独身男だよ。

そうだよね、いい大人なのに常識がなさすぎるから、当然おかしく思うよね。ちょっと長くなるけど、俺の話しをしようか。

俺は、この世界の人間じゃないんだ。

元居た世界で死んだら、なぜかこの世界に飛ばされたらしい。

さっき、神様に会ってそう言われた。

本来はこっちの世界に生まれ変わって赤ちゃんから成長していくそうなんだけど、たまたま手違いでそのままの姿でここに来たんだ。」

その後、私が助けられた理由や、マサルさんの強さの理由、神様から与えられた使命などを1時間位かけて聞かせてもらった。

なんだかよくわからないけど伝説の勇者様みたい。

ますますこの人と一緒に居たくなっちゃった。

でもマサルさんにはもっとふさわしい人がいるんだろうなぁ。

きっと領主様が知ったら手放さないよ。

マサルさんにも口止めされたし、この事は2人の秘密ね。キャ。

マサルさんが、こちらの世界の常識を教えて欲しいと言ったので、現在地や硬貨の種類、貨幣価値などを簡単に説明した。

マサルさんは金貨や白金貨に驚いていたけど、強い魔物の討伐報酬とか、結構高額なお金って動くんだよね。

ましてや厄災級の魔物なんかだと銀貨じゃ持てないよ。

お父さん達は昔冒険者時代に白金貨を報奨金でもらった事があるみたいだけど本当に一部の人間だけだよね。

私みたいな庶民には関係ないけどね。

でも今回ビッグベアの肉ひと固まりが銀貨50枚になったのは大きいよね。

でも、マサルさんが宿屋で肉ひと固まりを出したときは正直びっくりした。

あまりの常識知らずに驚きすぎて、止める間もなかった。

宿屋の主人も喜びすぎて、宿代も安くなったし、今晩の食事も無茶苦茶豪勢だったので良しとしておこうと思う。肉はまだまだあるしね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

一般人に生まれ変わったはずなのに・・・!

モンド
ファンタジー
第一章「学園編」が終了し第二章「成人貴族編」に突入しました。 突然の事故で命を落とした主人公。 すると異世界の神から転生のチャンスをもらえることに。  それならばとチートな能力をもらって無双・・・いやいや程々の生活がしたいので。 「チートはいりません健康な体と少しばかりの幸運を頂きたい」と、希望し転生した。  転生して成長するほどに人と何か違うことに不信を抱くが気にすることなく異世界に馴染んでいく。 しかしちょっと不便を改善、危険は排除としているうちに何故かえらいことに。 そんな平々凡々を求める男の勘違い英雄譚。 ※誤字脱字に乱丁など読みづらいと思いますが、申し訳ありませんがこう言うスタイルなので。

前世で家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる 俺だけが使える氷魔法で異世界無双

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
家族や恋人もいなく、孤独に過ごしていた俺は、ある日自宅で倒れ、気がつくと異世界転生をしていた。 神からの定番の啓示などもなく、戸惑いながらも優しい家族の元で過ごせたのは良かったが……。 どうやら、食料事情がよくないらしい。 俺自身が美味しいものを食べたいし、大事な家族のために何とかしないと! そう思ったアレスは、あの手この手を使って行動を開始するのだった。 これは孤独だった者が家族のために奮闘したり、時に冒険に出たり、飯テロしたり、もふもふしたりと……ある意味で好き勝手に生きる物語。 しかし、それが意味するところは……。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン… 紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢 座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!! もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。 全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。 作者は極度のとうふメンタルとなっております…

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

処理中です...