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第1章 新たな生活を始めようか
再出発するよ
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「ミーア具合はどうだ?
あっちだったら未だ寿命もあっただろうに、連れて来て悪かったな。
あっちでわたしが死んだ時、君はこんな気持ちだったのだろうか?」
「僕は後悔なんかして無いよー。
ヒロシと長い時間一緒に居られて幸せだったよー。
でも先に行くねー。さようならー。」
「ミーア!未だ行くなよ。ミケツカミ様、わたしに魔法を、魔法を使わせて下さい!」
俺は虫の息になっているミーアを失うのが怖くて、ミケツカミ様に懇願した。
「分かったよー。」
わたしの名前は榎木広志。
ついさっきまで75歳だった......18歳男子だ。
隣で微笑んでいるのはミーア。見た目は15歳くらいだけどさっきまで猫だった魔族。
実はわたし達、いやせっかく若くなったんだから俺達というべきかな、そう俺達2人はちょっとした知り合いのミケツカミ様に若返らせてもらったんだ。
ミケツカミ様っていうのは日本ではお稲荷様として知られている狐の神様。
とあるきっかけでミケツカミ様に連れて行かれた異世界エレメントスで数百年を過ごすことになった俺はそこでミーアと知り合った。
俺の奥さんだったイリヤやミーアと一緒に数百年の時を過ごし、エレメントスでの生を終えた俺は無事に転移後間近の日本に戻ってきたんだ。
その時ミーアも一緒に付いてきた。
それから早60年。
ミーアがその寿命を終えようとした時、60年ぶりに現れたミケツカミ様によって俺達2人はこうして若返ったってことになる。
60年間猫の姿だったミーアは人間の姿で立っていることに違和感があるみたいだけど、俺は軽くなった身体で若くなったこと、そしてまたミーアとの生活を送れる喜びを噛みしめていたんだ。
「ヒロシー、なーんか変な感じ~。」
「60年も猫になってたんだからさあ、2足で立つことに違和感があるのは当然だろうね。
少ししたら慣れてくると思うよ。」
「ふーんー、そんなもんかなあ。でもさあ、またヒロシと一緒に生活できるんだねー。
それもさー、こんなに若い身体になったしねー。」
「そうだね。ミーアもすっかりこの世界の人間に見えるし、これから2人で新しい人生を始められるのも良いね。」
「そうだねー。ヒロシー本当に良かったよー。まあ欲を言えばイリヤも一緒だったらもっと良かったんだけどねえー。」
「まあそれは仕方がないね。でもイリヤもどこかで転生しているかも知れないからね、また会えるといいよね。」
「よし、頑張って探すぞー。」
ミーアもだいぶ勘が取り戻せて来たみたいで、部屋の中で走り回ったり、飛び跳ねたり、でんぐり返りしたりして、新しい自分の身体を満喫しているみたいだ。
「ミーア、嬉しくて騒ぐのも良いけど、あんまり暴れないでくれよ。
この部屋の中にも結構高価なものが置いてあるんだよ。」
「だってねー嬉しいんだもん!しようが無いじゃんか。」
「わかった、わかった、やめろとは言わないからさあ、もう少しだけ静かに頼むよ。」
「はーい。」
少しだけ静かになったけど、まあミーアの気持ちもよく分かるからね。
来週あたりにでもどっか広いところに連れて行ってあげよう。
その前にミーアと若くなった俺の着るものや日常品を揃えなきゃね。
「ミーアこっちにおいで。一緒に買い物をしよう。」
俺はウエラブルコンピュータの無線機能を使ってモニターに通販サイトを映し出し、ミーアと一緒にあれこれと必要なものをポチポチするのだった。
頼んでいた商品が届いた翌日、俺達は東京郊外の自宅マンションをでて海沿いの海浜公園に向かうことにした。
「ミーア用意はできたかい?」
「ヒロシー、ねえこの服にこのスカートって似合うかなあ?ねえどおー?」
「いいね、良く似合っているよ。」
「ヒロシー! ほんとにそう思ってる? 本当はこっちの方が良いんじゃない?」
「ああ、それも良いね。」
「もおー!ほんとどっちにしようかな?」
既に2時間以上この調子だ。
調子に乗って買いすぎたんで、余計に迷わせたみたい。
「こっちの世界の服って可愛いのが多いんだよねー。ほんと目移りしちゃうんだよねー。」
「ミーア、いい加減にしないと遊びに行く時間が無くなっちゃうぞ。」
「あーん、それはダメ。よしこれに決めたよー。でバナナは300円以内?」
「お前そんなのどこで覚えたんだよ。別にお菓子300円なんて言ってないよね。
それにさ、今時そんな会話聞かないぞ。」
「昔のテレビでこんなやり取りをしていたから、外に遊びに行くときは言わなきゃいけないのかと思ってたよ。」
こうして俺達2人は、電車に乗って海辺の町に向かうことになったんだ。
「さあ、戸締りをしてっと。 あっ、おはようございます。」
3軒先の部屋に住む中年のおばさんがマンションの部屋から出てきた俺達を見て怪訝そうな顔をしていた。
思わずあいさつをしちゃったけど、この部屋には75歳の榎木広志と猫のミーアしか住んでないんだった。
俺達がこの部屋から出てくるとおかしいんだよね。
「...俺、榎木アキラと言います。こっちは従妹のミーナ。おじいちゃん家に2人で遊びに来てるんです。」
とっさに言い繕っちゃったけどごまかせたかな。
「まあ、榎木さんのお孫さんだったのね。榎木さんは猫ちゃんと2人暮らしだったから、大変なんじゃないかと心配していたのよ。
あら、でも変ねえ。榎木さんにご家族がいるなんて聞いて無かったわね。」
しまった。結婚して無いや。
「実はおじいちゃんとおばあちゃんって若い時に離婚していたんです。
おばあちゃんは離婚後渡米して、俺達の親は向こうでずっと暮らしていたんですよ。
それでおばあちゃんが亡くなって、日本に家族で引っ越してきたもんだから、最近ここに来るようになったんです。」
「あら、そうなのね。でもお孫さんが遊びに来られたんだったら、良かったわ。
もう榎木さんもご高齢だからちょっと気にしていたのよ。
これからも遊びに来てあげてね。」
「わかりました。お気遣いありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」
おばさんはニコニコしながら自分の部屋に入っていった。
「あぶねー。ちょっと迂闊だったな。でも今後のことも考えておかなくっちゃな。」
「ヒロシー、早く行こうよー。」
まあ、とりあえず後のことはゆっくり考えよう。
まずは今日を楽しまなきゃな。
「ミーア、さあ海に向けて出発だ!」
「オー!」
能天気なミーアをよそにヒロシは今後の生活について考えだすのであった。
あっちだったら未だ寿命もあっただろうに、連れて来て悪かったな。
あっちでわたしが死んだ時、君はこんな気持ちだったのだろうか?」
「僕は後悔なんかして無いよー。
ヒロシと長い時間一緒に居られて幸せだったよー。
でも先に行くねー。さようならー。」
「ミーア!未だ行くなよ。ミケツカミ様、わたしに魔法を、魔法を使わせて下さい!」
俺は虫の息になっているミーアを失うのが怖くて、ミケツカミ様に懇願した。
「分かったよー。」
わたしの名前は榎木広志。
ついさっきまで75歳だった......18歳男子だ。
隣で微笑んでいるのはミーア。見た目は15歳くらいだけどさっきまで猫だった魔族。
実はわたし達、いやせっかく若くなったんだから俺達というべきかな、そう俺達2人はちょっとした知り合いのミケツカミ様に若返らせてもらったんだ。
ミケツカミ様っていうのは日本ではお稲荷様として知られている狐の神様。
とあるきっかけでミケツカミ様に連れて行かれた異世界エレメントスで数百年を過ごすことになった俺はそこでミーアと知り合った。
俺の奥さんだったイリヤやミーアと一緒に数百年の時を過ごし、エレメントスでの生を終えた俺は無事に転移後間近の日本に戻ってきたんだ。
その時ミーアも一緒に付いてきた。
それから早60年。
ミーアがその寿命を終えようとした時、60年ぶりに現れたミケツカミ様によって俺達2人はこうして若返ったってことになる。
60年間猫の姿だったミーアは人間の姿で立っていることに違和感があるみたいだけど、俺は軽くなった身体で若くなったこと、そしてまたミーアとの生活を送れる喜びを噛みしめていたんだ。
「ヒロシー、なーんか変な感じ~。」
「60年も猫になってたんだからさあ、2足で立つことに違和感があるのは当然だろうね。
少ししたら慣れてくると思うよ。」
「ふーんー、そんなもんかなあ。でもさあ、またヒロシと一緒に生活できるんだねー。
それもさー、こんなに若い身体になったしねー。」
「そうだね。ミーアもすっかりこの世界の人間に見えるし、これから2人で新しい人生を始められるのも良いね。」
「そうだねー。ヒロシー本当に良かったよー。まあ欲を言えばイリヤも一緒だったらもっと良かったんだけどねえー。」
「まあそれは仕方がないね。でもイリヤもどこかで転生しているかも知れないからね、また会えるといいよね。」
「よし、頑張って探すぞー。」
ミーアもだいぶ勘が取り戻せて来たみたいで、部屋の中で走り回ったり、飛び跳ねたり、でんぐり返りしたりして、新しい自分の身体を満喫しているみたいだ。
「ミーア、嬉しくて騒ぐのも良いけど、あんまり暴れないでくれよ。
この部屋の中にも結構高価なものが置いてあるんだよ。」
「だってねー嬉しいんだもん!しようが無いじゃんか。」
「わかった、わかった、やめろとは言わないからさあ、もう少しだけ静かに頼むよ。」
「はーい。」
少しだけ静かになったけど、まあミーアの気持ちもよく分かるからね。
来週あたりにでもどっか広いところに連れて行ってあげよう。
その前にミーアと若くなった俺の着るものや日常品を揃えなきゃね。
「ミーアこっちにおいで。一緒に買い物をしよう。」
俺はウエラブルコンピュータの無線機能を使ってモニターに通販サイトを映し出し、ミーアと一緒にあれこれと必要なものをポチポチするのだった。
頼んでいた商品が届いた翌日、俺達は東京郊外の自宅マンションをでて海沿いの海浜公園に向かうことにした。
「ミーア用意はできたかい?」
「ヒロシー、ねえこの服にこのスカートって似合うかなあ?ねえどおー?」
「いいね、良く似合っているよ。」
「ヒロシー! ほんとにそう思ってる? 本当はこっちの方が良いんじゃない?」
「ああ、それも良いね。」
「もおー!ほんとどっちにしようかな?」
既に2時間以上この調子だ。
調子に乗って買いすぎたんで、余計に迷わせたみたい。
「こっちの世界の服って可愛いのが多いんだよねー。ほんと目移りしちゃうんだよねー。」
「ミーア、いい加減にしないと遊びに行く時間が無くなっちゃうぞ。」
「あーん、それはダメ。よしこれに決めたよー。でバナナは300円以内?」
「お前そんなのどこで覚えたんだよ。別にお菓子300円なんて言ってないよね。
それにさ、今時そんな会話聞かないぞ。」
「昔のテレビでこんなやり取りをしていたから、外に遊びに行くときは言わなきゃいけないのかと思ってたよ。」
こうして俺達2人は、電車に乗って海辺の町に向かうことになったんだ。
「さあ、戸締りをしてっと。 あっ、おはようございます。」
3軒先の部屋に住む中年のおばさんがマンションの部屋から出てきた俺達を見て怪訝そうな顔をしていた。
思わずあいさつをしちゃったけど、この部屋には75歳の榎木広志と猫のミーアしか住んでないんだった。
俺達がこの部屋から出てくるとおかしいんだよね。
「...俺、榎木アキラと言います。こっちは従妹のミーナ。おじいちゃん家に2人で遊びに来てるんです。」
とっさに言い繕っちゃったけどごまかせたかな。
「まあ、榎木さんのお孫さんだったのね。榎木さんは猫ちゃんと2人暮らしだったから、大変なんじゃないかと心配していたのよ。
あら、でも変ねえ。榎木さんにご家族がいるなんて聞いて無かったわね。」
しまった。結婚して無いや。
「実はおじいちゃんとおばあちゃんって若い時に離婚していたんです。
おばあちゃんは離婚後渡米して、俺達の親は向こうでずっと暮らしていたんですよ。
それでおばあちゃんが亡くなって、日本に家族で引っ越してきたもんだから、最近ここに来るようになったんです。」
「あら、そうなのね。でもお孫さんが遊びに来られたんだったら、良かったわ。
もう榎木さんもご高齢だからちょっと気にしていたのよ。
これからも遊びに来てあげてね。」
「わかりました。お気遣いありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」
おばさんはニコニコしながら自分の部屋に入っていった。
「あぶねー。ちょっと迂闊だったな。でも今後のことも考えておかなくっちゃな。」
「ヒロシー、早く行こうよー。」
まあ、とりあえず後のことはゆっくり考えよう。
まずは今日を楽しまなきゃな。
「ミーア、さあ海に向けて出発だ!」
「オー!」
能天気なミーアをよそにヒロシは今後の生活について考えだすのであった。
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