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番外編

番外編 オシンさん 9

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ヒロシさんが戻って来て外の世界も急速に変わっているんです。

これまではどちらかというと、前の体制まで立て直すことに注力していて、漸く安定してきた感が出てきたところだったから、新しいやり方を試すには時期的にも良かったんじゃないかしら。

それにしてもヒロシさんの発想力は凄いですよう。

ヒロシさんが神様に喚ばれた召還者であることも知っているし、元の世界が凄く進んでいたということも聞いてるけど、それでも呆れるほど果敢に的確な施策なのよ。

ここに来る前に領主をしていたのも迷いがない理由なんだと思う。

特に休日を制度化したのも画期的だったし、伝染病予防のために医師や研究者を育てたのも凄いよ。

わたしはというと、最近は新しい仕事が増えた。

クルステ様の代わりに御告げを出すようになったんです。

それでね、この前ヒロシさん家に行ったらイリヤさんの着ている服が可愛いのなんのって!

イリヤさんすっごくセンスがいいの。

ベルシアスの街は今よりもかなり文明が 進んでいたんだけど、合理的っていうか、おしゃれとか美味しい食事なんかも進歩してなかったの。

あ、ベルシアスっていうのは1万年にここにあったわたし達の故郷よ。

だから、今の外の街でもかなりおしゃれだと思うんだけど、今日のイリヤさんの服装は次元が違うわ。

「イリヤさん、今から神殿に行きましょう!皆んなに見せてあげたい。」

どうしても皆んなに見せたくて、イリヤさんの手を引いて神殿まで走ったわ。

神殿に着いたらオハルちゃんやオキクちゃんも大興奮。

外の街の人達にも見せてあげたくて、オハルちゃん達と連れだって御告げを出す塔に向かった。

カメラの前に着くと、イリヤさんが「嫌だ~」ってカメラに写るのをこばむの。

すっごく可愛いから外の皆さんも喜ぶと思うんだけど。

イリヤさんが服を貸すからオシンさんがカメラにって言うから、喜んで借りた。

ちょうどお告げを出す必要もあったから、そのままカメラを回したの。

画面の向こうにいる巫女さん達のリアクションが面白かった。

いつもは厳かな雰囲気しか感じ取れないのにね。

お告げの後質問コーナーがあるんだけど、今日はイリヤさんの作った服に関する質問ばかりで、まるでファッションショウのモデルになった気分ね。

向こうは時間が早いでしょ。

デザイナーとか仕立て屋とかが次々と来て向こうでも真似をして服を売り出したんだ。

あっという間にファッション界に大革命が起こったの。

まあ、予想通りね。

でもこの発端となったイリヤさんが前に出たくないって、強情に抵抗するからわたしが前面に出ることになったのよね。

そんな感じで次のお告げも新しい服を着る必要が出来てしまったの。

イリヤさんには申し訳ないんだけど、次のお告げまでに新しい服をお願いしたんだよね。

ごめんね、イリヤさん。


いやあ、自分が注目されたくて始めたお告げのライブ中継だったんだけど、最近はちょっと引きぎみになった。

だってね、今まで巫女さんしか画面の向こうにいなかったのに、最近はデザイナーや若い女性がたくさんいるの。

神聖さの欠片もないわね。

わたしも大変だったんだけど、イリヤさんはもっと大変。

向こうでは年一回のお告げでもこちらじゃ5日毎だもの。

新しい服を作らなくちゃだからね。


でもこのライブお告げが外の世界に革命的な変化をもたらしたの。

切っ掛けはある王族の偽お告げ事件。

お告げを聞いてるのが巫女だけなのをいいことに、買収した巫女に自分に有利な様に報告させていたことが分かったの。

そりゃ皆さんが見てるんだから、いつまでもやってりゃバレるよね。

これで王族に対する非難が集まると、出るわ出るわ、王族の暴挙や失態。

さすがにこちらでも何とかしようという風になった時に、またヒロシさんから新しい提案が。

共和国制にするって案。

わたしには難し過ぎたけど、クルステ様が驚いていたから、革新的な内容なんでしょうね。

4つの王国が無くなり、ひとつの大きな共和国になったの。

ほんと、びっくりしたわ。


しばらくしてムーン共和国が落ち着きを取り戻した頃、イリヤさんとミーアちゃんがふたり同時に身籠ったの。

それが分かった時は少しへこんだけどね。

でもオハルちゃんの時に免疫が出来ていたみたいだし、直ぐに立ち直れたわ。

わたしも早く子供が欲しいなって、彼氏が未だだったわ。

時間の経つのは早いもので、イリヤさん達の子供が1歳になったの。

もーほんとに可愛いんだから。

ある日、フランシス王子とオハルちゃんが出かけるところを見掛けたのね。

3人でお出掛けかと思っていると、クルステ様もお出掛けする様子。

「クルステ様、お出掛けですか?」

「あー、オシン!ち、ちょっとな。」

クルステ様が神殿を出られるなんていつぶりだろう。

でも、ちょっとドモリましたね。

わたしの感が異変を告げています。

わたしを除け者にしようとしている感じがビンビンするのです。

「クルステ様、何処に行かれますか?」

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