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番外編

番外編 オシンさん 6

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ムーン大陸で影の一大勢力を持つ地下組織「ムーラン」。

その構成員は1万人を超えると言われるが実際にどれだけいるのか、その頭目であるヒガーですら正確には分かっていない。

マイロを戦士とて、新たに発見された島を襲う計画はマイロの生みの親であるアエラが所属する国立研究所に潜入させている構成員から聞いていた。

ムーン大陸には今この国しかなく、神殿と議会が全ての力を握っている。

過去にはクルステという女神が実在し、国を主導していたと聞くが伝説でしかない。

ただ根強いクルステ信仰はこれ以上ムーランに付け入るスキを与えないのも事実であった。

ムーランの頭目になって6年。ヒガーもそろそろ実績を残さないと、今の地位を脅かされるかもしれないと少し焦っていた。

そんな時、新しい島の発見とマイロの戦士化の話しが舞い込んできたのだった。

新しい島を兵器となったマイロを使って制圧し、植民地化する。

まだどのくらいの広さかも分からないが、ムーランの本拠を移してムーン大陸制覇の拠点とするのも悪くないとヒガーは考えていた。

そんな時、突然議会にクルステが現れてマイロの兵器化にNOを唱えたのだった。

そして先日アエラが保護されてきた。

アエラはマイロの生みの親でもあり、兵器化の強硬推進派だった。

議会は大規模捜索を行い失踪したアエラを捕らえようとしたが、ここにいるからには捕まえられるはずは無かった。

アエラの研究はあと少しで完成するところまできていたのだ。

アエラが手に入ったのは俺にとって僥倖である。

もし頭目の座を狙うライバル達に渡っていたらと思うと.......

危ないところだった。


アエラを保護して半年後、殺戮兵器と化したマイロが完成したのだった。

マイロ同士を戦わせ、その戦闘力の高さを知ったヒガーは、この兵器を使ってライバル達を潰そうと考えた。

この兵器はもろ刃の刃だ。侵略の為に組織内に配ってしまうといつ俺に反旗を翻すヤツが出るかもしれない。

ならば、試験代わりにヤバそうなやつらを消しておくに限る。

ヒガーはまだ十分なテストも終えていないマイロの量産体制を秘密裏に急がせたのだ。

十分なテストなんかして時間をかけていたらライバル達に気付かれるじゃないか。

こうしてアエラの思惑から離れた殺戮兵器マイロは大陸中に散らばった地下組織の幹部達を殺害すべく散らばっていた。

「ヒガーめ、我がマイロを己の欲望に任せて好きにしよって。

まだ十分なテストも終わっておらんのに、暴走してもわしは知らんぞ。」

地下のその奥の監獄の中でアエラは呟くのだった。


はたしてアエラの予想は最悪の形で現実のものとなる。

大陸中に散らばったマイロはヒガーの思惑通り次々と幹部達を殺害していき、その本拠を次々と破壊していく。

途中、部下のひとりがマイロに強盗させるという事件があった。

議会に感づかれるのはまずいと思うヒガーは更なる増産をもくろみ、どんどん製造させていくが、やがてヒガーにも最後が訪れる。

ある日、ヒガーに裏切られた幹部のひとりが議会にマイロのことを密告したのだ。

密告により議会がヒガー達の居場所を突き止め、大規模な取り締まりが行われた。

ヒガーはそれをマイロで撃退しようとしたが逆に暴走したマイロに殺害されてしまった。

自動工場で次々生み出される殺戮兵器は止まることを知らない。

やがて地上に姿を現し、破壊のかぎりを尽くした。

クルステ達が気付いた時は時には都中でマイロが暴走し、同時期に大陸中でマイロが暴走してしまっていた。



実はその2週間前にクルステの元にひとりの少年が現れていた。

彼の名はヒロシ。姿を消した状態でオシンの後をつけてここまでたどり着いたおかしな少年だ。

彼は1万年後から来たという。そこには人は住んでおらず、奇妙な合成生物が争っているだけだったと告げるのだ。

彼の話しは兵器としてのマイロが齎した真実だろうと思ったクルステは、早々に今日が来るのを想定していた。

嫌がるヒロシを転移の魔方陣に無理やり乗せ10000年後に戻したクルステは、あらかじめ街中に用意していた魔方陣を一斉に稼働させ、マイロの殲滅を試みたのだった。

いくら魔方陣が効果を出したといえど、広範囲に拡がってしまったマイロを一気に殲滅できるわけでもなく、10日後にマイロの駆除が終わった頃には、都は一面瓦礫の惨状で、再建するために必要な民達すら消えてしまっていた。

「他の土地に行こうか。そこで再起しよう。」

オシンはクルステの寂しそうな言葉を聞いて頷く。

今の自分に出来ることは一生懸命クルステの力になることだけなのだ。

早速クルステの秘書達全員を集めて移住先を調べ始めた。

しかしながら、ムーン大陸各地に連絡を取ってみてもどこからも応答は無い。

既に大陸中が全滅に近い被害を被っていたのだ。

途方に暮れるオシン達に更なる悲劇が訪れる。

新たに生産されたマイロがこの神殿にも押し寄せてきたのだった。





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