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ムーン大陸でも国造り
牧場でも作りましょうか
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ムーン大陸に新たな問題が発生してきた。
食糧問題である。
元々、虫を主食にしていたくらいだから食糧を作り出すなんてことはやっていなかった。
一応米だけは普及させておいたけど、産業と医療が発展して人口が急速に増えている現状、安定して食べられるものが米だけじゃ心細い。
街が拡張されるにつれて、虫を採取するための草原も減ってきたから、虫の価格が高騰しているみたいだし。
このままだとタンパク質が足りなくなってしまうじゃないか。
幸いこのムーン大陸には未だ未開の森がたくさんある。
冒険者ギルド長のディーンさんも街に肉を供給するために今日も冒険者の尻を叩いている。
「オラァ、テメェら最近納品量が減ってるじゃないか。
特に大物が少ない。
ルルー商会からも催促がきているんだぞ。
気合い入れんかい!」
虫を採取するための草原が遠くなって、簡単に採りに行けなくなったから、冒険者に頼むしかなくなった。
だけど虫だけじゃ数が少なくて流通量が確保できないから、遠くの森まで動物や魔物を狩りに行くしかない。
ギルド長のディーンさんの悩みの種はここにある。
冒険者の皆んなも決してサボっているわけじゃない。
だけど遠くの森まで行って動物を狩ったとして運ぶ手段が無いのだ。
せいぜい荷車で運ぶのが関の山なのだが、片道1日以上かかる森まで行って、持ち帰れる量なんてたかがしれている。
それに往復3日もかかるから、多少持ち帰っても金銭的に割りに合わないのだ。
だから料理店や食料品店は、森に行ってくれる契約冒険者を探すのだが、こちらも人数が限られており、奪い合いの末、高値で契約せざるを得ないのが実情なのだ。
「牧場でも作れば良いのに。」
そんな話しをクルステさんから相談されて最初の言葉がこれだ。
「牧場とは?」
「えっ、牧場知らないの?
そっからかー。
牧場っていうのは、動物を一定の広さの囲いに入れてそこで飼う場所を言うんです。
繁殖させて、牛だったら乳を絞ったり、鶏なら卵を採るんです。
それで老いたらつぶして食べます。
後は馬を繁殖させて馬車を引かせるとか。」
クルステさんが驚きの目で俺を見ている。
「動物を飼育するのですか!
考えたこともなかったよ。
たしかにヒロシ君、上手く飼育出来れば遠いところまで獲れるかどうかも分からない動物を探す必要は無くなるが。」
「じゃあ、とりあえずやってみますか?」
「じゃあって、そんなに簡単なものなのかい?」
「うーん、おじいちゃん家で少し牛を世話したくらいですけど、たぶん大丈夫ですよ。
ノアさんもいますしね。」
こうして早速牧場作りにかかる。
とは言っても俺が手を出す訳にはいかないから、各王家から人を出してもらって、レクチャーすることになった。
先ずは、牧場の敷地を確保して柵で囲う。
次に管理するための建屋と干し草を貯めておくサイト、動物を入れておくための建屋を作る。
飼育する動物はとりあえず牛と馬、羊、ホーンラビットくらいかな。
一部魔物も混じっているけど、魔物の方が安定して増えそうだから試験運用だね。
最初の10匹づつはこちらからプレゼントしてあげるよ。
だって王家の人達に無傷で捕獲出来るとは思わないからね。
こうして、おっかなビックリの王族による牧場経営が始まった。
しばらくはモニターで監視してあげる。
夜になると、野盗や獲物を狙う魔物達が来るかもしれないし。
半年くらいモニターしたかな。
中の世界からだと2日くらいのことだし、実際には危険察知の結界を張っていただけだから、何もしていないんだけどね。
半年もあればさすがに王族といえど、慣れてきたようで、自分達だけで夜間の警備も出来るようになってた。
動物達も順調に増えていき、元の倍くらいはいるねえ。
思った通り、魔物であるホーンラビットの成長と繁殖は凄まじく、他の動物達の3倍以上になっている。
まぁ、寿命は短いから牧場がパンクするほどじゃないけど。
面白かったのは、ホーンラビットが牧場で他の動物と飼われ出したら2カ月もしないうちに動物達みたいに大人しくなったことかな。
ホーンラビットって普通のウサギよりも大きくて、子牛ほどの大きさだから、今では牧場のメインになっている。
毎週20頭くらい出荷出来るようになってきた。
たぶん後2年もしたら毎日20頭くらい出荷出来るんじゃないかな。
牧場は各王家の監督の下、あちこちに造られ出した。
しばらくしたら食糧問題も完全解決するだろう。
「いやあヒロシ君の思い付きで始めた牧場だけど、立派なものになってきたねえ。
食糧問題も解決しそうだし、なによりも肉をたくさん食べられるようになったから、体力が付いたのか、医療施設に来る患者が激減したらしいねえ。
全く上手くいってなによりだよ。」
クルステさんも大喜びみたい。
王家が牧場は女神クルステから与えられたと喧伝したから、クルステさんの人気はうなぎ登りだ。
まぁ表に出ているのは、イリヤの最新モードに身を包んだオシンさんなんだけどね。
食糧問題である。
元々、虫を主食にしていたくらいだから食糧を作り出すなんてことはやっていなかった。
一応米だけは普及させておいたけど、産業と医療が発展して人口が急速に増えている現状、安定して食べられるものが米だけじゃ心細い。
街が拡張されるにつれて、虫を採取するための草原も減ってきたから、虫の価格が高騰しているみたいだし。
このままだとタンパク質が足りなくなってしまうじゃないか。
幸いこのムーン大陸には未だ未開の森がたくさんある。
冒険者ギルド長のディーンさんも街に肉を供給するために今日も冒険者の尻を叩いている。
「オラァ、テメェら最近納品量が減ってるじゃないか。
特に大物が少ない。
ルルー商会からも催促がきているんだぞ。
気合い入れんかい!」
虫を採取するための草原が遠くなって、簡単に採りに行けなくなったから、冒険者に頼むしかなくなった。
だけど虫だけじゃ数が少なくて流通量が確保できないから、遠くの森まで動物や魔物を狩りに行くしかない。
ギルド長のディーンさんの悩みの種はここにある。
冒険者の皆んなも決してサボっているわけじゃない。
だけど遠くの森まで行って動物を狩ったとして運ぶ手段が無いのだ。
せいぜい荷車で運ぶのが関の山なのだが、片道1日以上かかる森まで行って、持ち帰れる量なんてたかがしれている。
それに往復3日もかかるから、多少持ち帰っても金銭的に割りに合わないのだ。
だから料理店や食料品店は、森に行ってくれる契約冒険者を探すのだが、こちらも人数が限られており、奪い合いの末、高値で契約せざるを得ないのが実情なのだ。
「牧場でも作れば良いのに。」
そんな話しをクルステさんから相談されて最初の言葉がこれだ。
「牧場とは?」
「えっ、牧場知らないの?
そっからかー。
牧場っていうのは、動物を一定の広さの囲いに入れてそこで飼う場所を言うんです。
繁殖させて、牛だったら乳を絞ったり、鶏なら卵を採るんです。
それで老いたらつぶして食べます。
後は馬を繁殖させて馬車を引かせるとか。」
クルステさんが驚きの目で俺を見ている。
「動物を飼育するのですか!
考えたこともなかったよ。
たしかにヒロシ君、上手く飼育出来れば遠いところまで獲れるかどうかも分からない動物を探す必要は無くなるが。」
「じゃあ、とりあえずやってみますか?」
「じゃあって、そんなに簡単なものなのかい?」
「うーん、おじいちゃん家で少し牛を世話したくらいですけど、たぶん大丈夫ですよ。
ノアさんもいますしね。」
こうして早速牧場作りにかかる。
とは言っても俺が手を出す訳にはいかないから、各王家から人を出してもらって、レクチャーすることになった。
先ずは、牧場の敷地を確保して柵で囲う。
次に管理するための建屋と干し草を貯めておくサイト、動物を入れておくための建屋を作る。
飼育する動物はとりあえず牛と馬、羊、ホーンラビットくらいかな。
一部魔物も混じっているけど、魔物の方が安定して増えそうだから試験運用だね。
最初の10匹づつはこちらからプレゼントしてあげるよ。
だって王家の人達に無傷で捕獲出来るとは思わないからね。
こうして、おっかなビックリの王族による牧場経営が始まった。
しばらくはモニターで監視してあげる。
夜になると、野盗や獲物を狙う魔物達が来るかもしれないし。
半年くらいモニターしたかな。
中の世界からだと2日くらいのことだし、実際には危険察知の結界を張っていただけだから、何もしていないんだけどね。
半年もあればさすがに王族といえど、慣れてきたようで、自分達だけで夜間の警備も出来るようになってた。
動物達も順調に増えていき、元の倍くらいはいるねえ。
思った通り、魔物であるホーンラビットの成長と繁殖は凄まじく、他の動物達の3倍以上になっている。
まぁ、寿命は短いから牧場がパンクするほどじゃないけど。
面白かったのは、ホーンラビットが牧場で他の動物と飼われ出したら2カ月もしないうちに動物達みたいに大人しくなったことかな。
ホーンラビットって普通のウサギよりも大きくて、子牛ほどの大きさだから、今では牧場のメインになっている。
毎週20頭くらい出荷出来るようになってきた。
たぶん後2年もしたら毎日20頭くらい出荷出来るんじゃないかな。
牧場は各王家の監督の下、あちこちに造られ出した。
しばらくしたら食糧問題も完全解決するだろう。
「いやあヒロシ君の思い付きで始めた牧場だけど、立派なものになってきたねえ。
食糧問題も解決しそうだし、なによりも肉をたくさん食べられるようになったから、体力が付いたのか、医療施設に来る患者が激減したらしいねえ。
全く上手くいってなによりだよ。」
クルステさんも大喜びみたい。
王家が牧場は女神クルステから与えられたと喧伝したから、クルステさんの人気はうなぎ登りだ。
まぁ表に出ているのは、イリヤの最新モードに身を包んだオシンさんなんだけどね。
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