上 下
63 / 132
ムーン大陸で大冒険

神殿を復活させよう

しおりを挟む
『ヒロシ君、無事にたどり着いたかい。

いちおう騒動はおさまったよ。
だけど、この街にはもう住めないかもね。

わたし達は、新たな移住先を探すよ。

君も頑張ってね。

クルステ』

クルステさんのメモを読んでホッとした反面、寂しい思いでいっぱいだ。

でも10000年も経っているんだから今更なんだけどね。

でもさっきまで話してたんだからさあ、そんなにすぐには割り切れないよ。

こうなったら、マイロのやつらを全滅させてやるぜ。

でもその前にミーアに会いに行かなきゃ。

あれからどれだけ経っているか分からないけど、きっと心配しているはずだ。

俺は急いで家に戻る。

「ミーア!ごめん。遅くなったね。

ミー……ア?」

ミーアは家にいなかった。

もしかすると、あの魔法陣に巻き込まれて…

「ミーア…… ミーアまで、クルステさんやオシンさんだけじゃなくて。」

どうして、どうしてなんだよー。

涙で何も見えなくなった。

俺はミーアが好きだったソファーにへたり込み泣き続けたんだ。




「うえーん!ヒロシ、ヒロシが~。」

うん?ミーアの声?幻聴?

バタン!と大きな音がして扉が開く。

「ヒロシー。ヒロシがさあ、すごい大きな光がピカッとしてさあ、それでね、それでいなくなって、どっかに、う、うぇっ、うー。」

ミーア?

ミーアだよ、ミーアが帰って来たんだ。

「ミーア!ミーア!ミーア!」

あれっ、ヒロシの声だ。幻聴?でもあったかいよー。すやすや。

泣き疲れたのか、ミーアは俺の腕の中で寝落ちたみたいだ。

俺も嬉しくって安堵したら、そのまま眠ってしまった。

「あれっ、ヒロシ!ヒロシだ。お、おいヒロシ、お前ヒロシか!」

ミーアの大声で起こされた俺は、眠い目を擦りながらミーアを見る。

涙と鼻水とよだれとかいっぱいでぐちゃぐちゃに歪んだミーアの顔。

俺はミーアを抱きしめていた。

あの時俺が魔法陣で飛ばされた後、ミーアは魔法陣の放つ光を見たそうだ。

俺を探したんだけど見当たらなかったから、途方に暮れて家に帰って来たら俺と一緒にソファーで寝てたんだって。

どうやらクルステさんが帰してくれたのは転移のすぐ後みたいだ。

でも、今回の件でよくわかったよ。

俺にとってミーアがとっても大事な存在なんだって。


この時代に戻って来てから、ミーアはひとときも俺のそばを離れない。

タマの姿でずっと俺の膝の上に丸くなってる。

俺はミーアに向こうでの話しをしてやった。クルステさんのこと、オシンさん、街の様子、マイロのこと、滅亡の原因とか。

ミーアのくせにいちいち「ミャー」って相槌を打っている。

いつもは聞いているのかいないのか分からないのにね。

よっぽど興味があるのか、それとも別の理由か。

こんな感じで、俺達はたわいもない3日ほどを過ごしたのだった。

「ミーア、今日は神殿に行ってみようか。」

「もう大丈夫かなぁ。またいなくならない?」

「大丈夫だよ。一緒にいればいいじゃないか。」

「そうだな。じゃあ手を繋いでいてね。」

「分かった。いいよ。さあ行こう。」

俺達は手を繋いで神殿の場所まで飛んで行った。

何故1000年前に日本からビルが転移して来たのかはいまだに不明だが、それはさておき、今は神殿の方だ。

あの後どうなったのか神殿に手掛かりがあるかもしれないしね。

「ヒロシ、これ綺麗だろう。
持って帰らないか?」

ミーアが差し出した透明の板。

これは間違いなく動く歩道のチューブのカケラだ。

「ああ、持って帰ろうな。」

チューブのカケラを収納する。片っ端から全部。

元に戻れ!

収納の中でカケラ達はチューブ状の動く歩道となった。

他の瓦礫もいっぺんに収納していく。

「はあ、はあ、はあ。くそっ、一回じゃ無理だ!」

さすがに魔力切れだ。

簡易テントを出して休む。
横には安定のミーア。

不器用だけど、俺の為にレモネード擬きを作ってくれた。

家の近くの森に自生しているレモンに似た果物を絞ったものだ。

砂糖は収納から出した。
これも畑で作った砂糖大根から作ったものだ。

日本で飲む自販機のレモネードよりもだいぶ酸っぱいけど、疲れが一気に取れたような気分だ。

しばらく休むとかなり魔力が戻ってきたから、瓦礫集めを再開する。

集めては休憩、集めては休憩を繰り返す。

とっくに日も落ちてるけど、ミーアも何も言わずに待っていてくれる。

3日目の朝日が昇る頃、神殿の周りの瓦礫は全て収納に収ったんだ。

「さあミーア、いくよ!」

俺はミーアが見守る中収納され修復が終わった瓦礫を元あった場所に戻す。

ズドン、ギー、バタン、

様々な擬音が響く中、神殿の周りが10000年前の光景を取り戻していく。

「ふわぁー?!」

ミーアの口が塞がらない。

俺だって日本でアニメを見ていなきゃ、10000年前に転移していなきゃ、同じように口を開けてよだれを溢していたかも。

「さあミーア、中に入るよ。」

俺はミーアの手を引いて、動き始めたばかりの動く歩道に乗った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜

和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。 与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。 だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。 地道に進む予定です。

処理中です...