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メアリとの出会い
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奴隷商人の後について建物の中に入ると、地下へと続く階段があり、それを降りたところにたくさんの牢がありました。
その中には既に10人ほどの女の人が入っています。
「よし、お前達は明日別のところに移動してもらう。
そこで新しい飼い主様に見つけてもらうのだな。」
どうやらわたし達は別の奴隷商人に転売されるようです。
わたし達は数名づつに分けられて牢に放り込まれました。
翌朝早く起こされたわたし達は、水場で老婆達に綺麗に洗われ、少し小綺麗なワンピースに着替えさせられました。
その後、5人づつ別の馬車に乗せられ、馬車は出発しました。
街を出たところで馬車はそれぞれ別の道を走って行きます。
もう彼女達に会うこともないでしょう。
わたし達を乗せた馬車は次の日の昼前に、別の街に着きました。
そしてその街の奴隷商人に売り渡されたのです。
わたし達5人は、地下牢へと連れて行かれました。
わたしが入れられた牢には、わたしと同じ歳くらいの女の人が1人と10歳くらいの女の子が1人いました。
わたしは、女の人に声を掛けてみました。
返事は返ってきません。
「お姉さん、その人は何も話さないよ。
心が壊れているんだって、食事を運んでくれているおじさんが言ってたよ。
わたしにはよくわからないんだけどね。
あっ、わたしの名前はメアリ。
生まれてからずっとここに住んでいるんだよ。
お姉さん名前は?」
「ミルクよ。メアリちゃん、生まれてからずっとって?」
「うん、お父さんとお母さんがどちらも奴隷だったんだ。
わたしも生まれた時から奴隷なんだって。」
「お父さんとお母さんは?」
「お父さんもお母さんも別々に売られて行っちゃった。
でもここにはわたしと同じような子がたくさんいるからね。
全然寂しくないよ。
わたしも後1年経って10歳になったらどこかに売られるんだって。」
笑顔で話す彼女を見ていると涙が止まらなくなりました。
彼女の世界はここだけなので、奴隷として売られることが、彼女の常識なのです。
彼女達は普通の幸せな生活を知らずに生涯を終えるのでしょう。
わたしは彼女達に哀れみを覚えました。
そしてふと気づくのです。
幸せな生活ってなんだろう?
わたしの境遇は幸せな生活なのだろうか?
お姫様の境遇はどうなのか。
わたしは彼女達への哀れみの気持ちが偽善であることに気付きました。
そうです、どんな境遇であれ、自分が幸せだと思えば、それが幸せなのでしょう。
わたしは、メアリちゃんと普通に接することに決めました。
こうしてわたし達は知り合い、仲良くなっていったのです。
「ミルクさん、これはなんて読むの?」
「メアリちゃん、それは馬って読むのよ。
大きな動物でね、人を乗せたり馬車を引いたりするのよ。」
「へぇ~、ミルクさん物知りなんだ~。
わたし、この屋敷の外に出たことが無いんだ~。
だから外のこと何にも知らないの。
でもね、1日に一回は庭に出れるんだよ。
それでね、それでね、小鳥さんとかとお喋りしたりするんだ~。」
そんな狭い世界しか知らないのに、心の底から幸せそうに話すメアリちゃんを見ていると、挫けそうになっている自分の境遇が大したことないように思えてきます。
わたしもいつ買われるかもしれませんし、メアリちゃんもそうです。
今はメアリちゃんとの時間を大切にしたいと心から思いました。
今日も奴隷を買いたい貴族が来ました。
わたしも他の女の人達と一緒に貴族の前に並べられます。
ここに来てから2日に1回は、こんな感じです。
わたし達を品定めする男達の目的なんてひとつしかありません。
若くて生娘が良いみたいです。
わたしは今日も選ばれませんでした。
安堵する反面、このまま売れ残った時のことを想像すると身震いしてしまいます。
いつも、奴隷商人から言われているのです。
売れ残ったら、娼館に二足三文で売られて、死ぬまで客を取らされる。
だから貴族に買われて面倒を見られる方が幸せだから、自分から媚を売れと。
まだそこまでは吹っ切れるものではありませんが、どこかで腹を括らないと仕方がないですね。
「ミルクさん、また字を教えてくれる?」
「えぇ、良いわよ、メアリちゃん。
今日は何にしようか?」
「ええっとねぇ、昨日は鳥だったから、今日はお花がいいな~。」
メアリちゃんだけが、わたしの心の癒しです。
その中には既に10人ほどの女の人が入っています。
「よし、お前達は明日別のところに移動してもらう。
そこで新しい飼い主様に見つけてもらうのだな。」
どうやらわたし達は別の奴隷商人に転売されるようです。
わたし達は数名づつに分けられて牢に放り込まれました。
翌朝早く起こされたわたし達は、水場で老婆達に綺麗に洗われ、少し小綺麗なワンピースに着替えさせられました。
その後、5人づつ別の馬車に乗せられ、馬車は出発しました。
街を出たところで馬車はそれぞれ別の道を走って行きます。
もう彼女達に会うこともないでしょう。
わたし達を乗せた馬車は次の日の昼前に、別の街に着きました。
そしてその街の奴隷商人に売り渡されたのです。
わたし達5人は、地下牢へと連れて行かれました。
わたしが入れられた牢には、わたしと同じ歳くらいの女の人が1人と10歳くらいの女の子が1人いました。
わたしは、女の人に声を掛けてみました。
返事は返ってきません。
「お姉さん、その人は何も話さないよ。
心が壊れているんだって、食事を運んでくれているおじさんが言ってたよ。
わたしにはよくわからないんだけどね。
あっ、わたしの名前はメアリ。
生まれてからずっとここに住んでいるんだよ。
お姉さん名前は?」
「ミルクよ。メアリちゃん、生まれてからずっとって?」
「うん、お父さんとお母さんがどちらも奴隷だったんだ。
わたしも生まれた時から奴隷なんだって。」
「お父さんとお母さんは?」
「お父さんもお母さんも別々に売られて行っちゃった。
でもここにはわたしと同じような子がたくさんいるからね。
全然寂しくないよ。
わたしも後1年経って10歳になったらどこかに売られるんだって。」
笑顔で話す彼女を見ていると涙が止まらなくなりました。
彼女の世界はここだけなので、奴隷として売られることが、彼女の常識なのです。
彼女達は普通の幸せな生活を知らずに生涯を終えるのでしょう。
わたしは彼女達に哀れみを覚えました。
そしてふと気づくのです。
幸せな生活ってなんだろう?
わたしの境遇は幸せな生活なのだろうか?
お姫様の境遇はどうなのか。
わたしは彼女達への哀れみの気持ちが偽善であることに気付きました。
そうです、どんな境遇であれ、自分が幸せだと思えば、それが幸せなのでしょう。
わたしは、メアリちゃんと普通に接することに決めました。
こうしてわたし達は知り合い、仲良くなっていったのです。
「ミルクさん、これはなんて読むの?」
「メアリちゃん、それは馬って読むのよ。
大きな動物でね、人を乗せたり馬車を引いたりするのよ。」
「へぇ~、ミルクさん物知りなんだ~。
わたし、この屋敷の外に出たことが無いんだ~。
だから外のこと何にも知らないの。
でもね、1日に一回は庭に出れるんだよ。
それでね、それでね、小鳥さんとかとお喋りしたりするんだ~。」
そんな狭い世界しか知らないのに、心の底から幸せそうに話すメアリちゃんを見ていると、挫けそうになっている自分の境遇が大したことないように思えてきます。
わたしもいつ買われるかもしれませんし、メアリちゃんもそうです。
今はメアリちゃんとの時間を大切にしたいと心から思いました。
今日も奴隷を買いたい貴族が来ました。
わたしも他の女の人達と一緒に貴族の前に並べられます。
ここに来てから2日に1回は、こんな感じです。
わたし達を品定めする男達の目的なんてひとつしかありません。
若くて生娘が良いみたいです。
わたしは今日も選ばれませんでした。
安堵する反面、このまま売れ残った時のことを想像すると身震いしてしまいます。
いつも、奴隷商人から言われているのです。
売れ残ったら、娼館に二足三文で売られて、死ぬまで客を取らされる。
だから貴族に買われて面倒を見られる方が幸せだから、自分から媚を売れと。
まだそこまでは吹っ切れるものではありませんが、どこかで腹を括らないと仕方がないですね。
「ミルクさん、また字を教えてくれる?」
「えぇ、良いわよ、メアリちゃん。
今日は何にしようか?」
「ええっとねぇ、昨日は鳥だったから、今日はお花がいいな~。」
メアリちゃんだけが、わたしの心の癒しです。
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