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付き合うのに好き以外の理由が必要ですか?
「じゃあさ、いいじゃん」
しおりを挟む「好きに操作していいから。あ、それは俺の別アカウントな」
柊人さんの許可を得て、スマホを操作して柊人さんの別アカウント経由での投稿を読む。内容はほぼ全て私とのデートの報告、私との付き合いの事、そして時々狂ったかのように私の名前を叫ぶ3人の投稿だった。
さらっと眺め、柊人さんへお返しする。
「もういいの?」
コクリと頷いて答える。すごく恥ずかしい。顔から火が出るとはこの事か、恥ずかし過ぎて読んでいられない……。
表立っては言えないようなプライベートな内容を、柊人さん・改さん・なのち3人以外が見れないように別の鍵付きアカウントを用意して会話していたという事かな。
さらっと目を通して分かった事は……、全部バレてた!!
私が鍵付きのアカウントを使って柊人さん・改さん・なのちさんのやり取りを覗き見しているのがバレてた!! めっちゃくちゃ恥ずかしいんですけどっ!!
罪悪感と羞恥心と、自分の考えの足りなさが混ぜ合わさってパーンッ! ってなりそう。
「そりゃね、あれだけ見えないいいねが来たら誰でも気付くよ。それも俺ら3人だけに起こる現象だもの。バグだとは思いにくいよね?
誰かが俺らの会話読んでるんだなってさ。もしかしたらって思ったけど、でもそれが冬花だって確信はなかったんだ。
そこでなのちさんの提案で確かめたんだ」
試すような事してゴメン。そう言って柊人さんが教えてくれたのは、何日か前の投稿についてだった。
橘をあぃす@デレP:美人な同級生が隣に座ってるとソワソワするよね
実際には美人な同級生なんておらず、女の人の隣に座るなんてしないし、そもそもこんなに可愛い彼女がいるのに、美人であろうが隣の女性に対してソワソワなんてしないと打ち明けられた。えへへ……。
って照れてる場合じゃなくてっ!!!
そうか、その投稿を見た直後に私が電話して、さも浮気を疑うかのような反応を見せてしまったからか。さすがに電話して来るとは思わなかったけど、って笑われても困る。
本気で大学まで行って問い詰めようかと思ってたんだからねっ!
「そっか、私は見事に引っかかっちゃったのか……」
「そうそう、だから知ってた。冬花が俺の投稿を読んでるの、知ってたんだ。俺には言わずこっそり読んでるって思うとすげぇ可愛いと思った。告白してくれた前から見てたんだってのは分かったけど、具体的にいつからかってのは分からなかった。
でも、俺の投稿を見て、それがキッカケで冬花が俺に告白してくれたんならさ、本当の俺を好きだって言ってくれているって事でしょ?
って、改さんとなのちさんに言われたんだよ」
本当の、柊人さん……?
「冬花の前ではさ、気取らず、キョドらず、自然体でいていいんだって思った。まぁまだ無理だけどね。冬花みたいな可愛い子が俺の彼女だって思っただけで緊張するしさ。
でも、これを言ったら嫌われるんじゃないか、こんな事したら別れようって言われるんじゃないかっていう不安が、ないとは言い切れないけど少なくなったんだよね。
冬花といると、緊張するけど安心もする。これからもっと緊張が少なくなっていって、もっともっと安心が大きくなっていくと思うんだ」
自分のした事はいけない事だと思う。人によっては気持ち悪いと思われるかも知れない。気味悪がられて、もう一緒にいられないと別れを切り出されても文句は言えない。
だけど、柊人さんはそんな私を可愛いと思ってくれていた。私が覗き見しているのを分かった上で、許してくれていた。見られている事で、安心していてくれていた……?
安心、安心か。そりゃあ私も柊人さんと一緒にいたらドキドキするし、安心もする。ホッとする。ずっと一緒にいたいなぁって、思う。けど、ダメだよ……。私が好きになったキッカケって、人に言えるものじゃないもん。今回のゲームセンターでの一件も、された私から見たら気持ち悪いし、不快だし、大好きな人を傷付けられたし、許す事なんて出来ないよ……。
「冬花、俺の事……、好き?」
「好きっ、大好きっ!!」
「じゃあさ、いいじゃん」
「……、いいの?」
「いいよ、だって冬花が俺のアカウント見てなかったらさ、こんな可愛い彼女出来なかったんだもん」
「っ、でも……」
「いいんだよ、俺は冬花が好きで、冬花は俺が好き。それだけでいいんだよ、付き合う理由なんて」
好きなのに理由って必要ですか? 私の問い掛けに対して、柊人さんは問い掛け返して来た。
付き合うのに好き以外の理由が必要ですか?
「好きぃ……、しゅうとさんすきぃぃぃ!!!」
堪えられなくなって、柊人さんに飛び付く。抱き着いて胸に縋り付く。許された。受け入れてくれた。私は柊人さんを好きでもいいんだ。隣にいてもいいんだ。大好きって、伝えてもいいんだ!!!
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