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好きなのに理由って必要ですか? と私は言ったけれど

アカウント間違えました

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 コンコンコンッ!

冬花ふゆか、朝よ、起きてるの?」

 ハッ! 知らない間に寝てしまっていたみたいだ。

「ね、寝坊した!」

 部屋の外から声を掛けるお母さんに飛び起きながら返事をする。昨日彼の投稿が更新されないか確認を続けるうちに寝てしまったみたいだ……。

 とりあえず急いで支度をし、朝食は摂らずに家を飛び出た。何とかいつも通りの時間の電車に乗れたけど、彼の姿はない。
 呼吸を整えた後、スマホでSNSアプリを立ち上げてその後の彼の投稿がないか確認する。やっぱりあれから何も投稿していないみたいだった。もしかしたら違うアカウントを使って改さんとなのちさんと3人でやり取りをしていたかも知れないけど、私には分かりようがない話だ。


 彼の投稿があったのは、学校で2時間目の授業が終わった後の休み時間だった。



橘をあぃす@デレP:気絶するように寝ていたようです。ご心配をお掛けしてすみませんでした

ハムすこ改@デレP:はいおはようw 無理してバイト行く必要ないけど、大学は行っとけよ

な2の3ち@電書化:そうそう、バイトなんて星の数ほどあるんだからな?

ハムすこ改@デレP:それ女の子の話じゃね?www



 どうやら彼は、何とか落ち着きを取り戻したようだった。3人の会話から、バイトが原因であのような感情的な投稿をしたのだと窺い知る事が出来た。



橘をあぃす@デレP:やっぱり自分に自信がないと何言われても否定されてるように聞こえてしまうもんなのかなぁ~

な2の3ち@電書化:彼女でも出来れば自信持てるようになるんじゃね?

橘をあぃす@デレP:自信がない奴に彼女作れとか()

ハムすこ改@デレP:だから風俗でさっさと童貞捨てて来いって言ってんじゃんw

ハムすこ改@デレP:アカウント間違えました

橘をあぃす@デレP:ちょwww



 ん? んん……? 彼は自分に自信がないから、バイト先で言われた事が理由でネガティブ思考になってしまった、のかな?
 だから、自分に自信を持つ為にも彼女を作れとなのちさんは勧めている。
 そして、自分に自信がないんだから彼女なんて出来る訳ないじゃんと彼が否定して、それならさっさと風俗に行けばいいなじゃないかと改さんがススメテイル……。


 ふ~ん、アカウントを間違えましたとわざわざ投稿しているところを見るに、きっと別のアカウントでは結構話題になっている事なんだろうな。ふ~ん、そうなんだ、へ~。
 ま、正直私には関係ない話だし。彼がお金を払って女の人と何をしようが、それは個人の自由だし。
 ってか私にはそれをどうにかしようとする事が出来るはずもないし。彼は私の事を知らない、私が一方的に知っているだけの関係すらない間柄。矢印が私から彼へと一方的に飛んでいる、そんな相関図を頭に思い浮かべる。
 う~ん、自分で言っている以上に痛いな、私。ホントにもう引き際だな……。



橘をあぃす@デレP:これでも昔は彼女いたんだから!!

ハムすこ改@デレP:何で別れたんだよ、もったいない

橘をあぃす@デレP:キスもせずに自然消滅してしまった……

な2の3ち@電書化:何だよ、久しぶりに連絡してみろよ

橘をあぃす@デレP:いや、連絡はね、まだ取り合ってるんだけどね、彼氏彼女っていうのは違うよねってなってね、自然消滅というか関係を解消した感じですかね

ハムすこ改@デレP:連絡してんだ、じゃあまだ可能性はありそうだけどね~

な2の3ち@電書化:次連絡する時に「また付き合ってもいいかなって思ってもらえるように、自分を変えようと思う」って宣言しよう

橘をあぃす@デレP:えええ~、マジですか(困惑)

な2の3ち@電書化:宣言するだけだからさ、もし返事が「頑張って」なら脈ありでしょ? で、無理なら無理で「あくまで宣言だからw」って笑って流せるでしょ? 一番いいのは「今でも好きだよ」なんて返事が来て、即お付き合いが復活する事だけどね

橘をあぃす@デレP:それ頂きです! さっき連絡の返信したんで、追加でメッセージ送ってみます!



「ちょっと冬花、先生来たよ! スマホ仕舞って!!」

 あ、3人のやり取りを必死で追っていたら、3時間目の授業が始まっていたみたいだ。友達の声に慌ててスマホを鞄の中に仕舞う。
 けど、続きを読みたい。こんなのダメだって分かってる、けど知りたい。
 彼の事をもっと知りたい。元カノとの関係が戻るのか、戻らないのか、とっても気になる。
 正直授業が耳に入らない。心臓がドキドキと大きな音を立てて、周りにも聞こえているんじゃないかと不安になる。

 私は一体どうしてしまったんだろう……。


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