【R18】美少女を寝取っているつもりが俺が寝取られていた件

なつのさんち

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その1 「私を抱いてほしいんです」

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 俺は至って普通の大学生だ。特に容姿に優れている訳ではないし、頭も特別良い訳ではない。
 正直に言って実家は裕福な家庭だけど、だからと言って俺が自由に出来る金なんてたかが知れている。それに、大学のある街で一人暮らしをしてるので、実家が金持ちである事を知っている奴なんていない。そう、俺は友達が少ないし、友達付き合いもそれほど深くはしないから、実家の話をする相手もいない。

「私を抱いてほしいんです」

 そんな至って普通の大学生に、こんな降って湧いたようなとんでもなく良い話があるだろうかいやない。あるはずがない。



 休日の午後、昼飯を外食で済ませた俺は1人で街をぷらぷらしていた。友達がいない訳ではないが、ばっちり趣味が合って話も止まらず、かと言って無言であっても気を遣わない。そんな相手がいない為、1人でいる方が気楽でいい。
 そういう意味では恋人が出来ても長続きしない。何となく気を遣ってしまい、そのうち疲れてしまう。自分から別れを切り出すか、向こうが察して去って行くか。そんな事をもう何度も繰り返し、今では新たに恋人を作る気もなくなってしまった。
 大学を卒業してしまえば地元へ帰り、実家の事業を手伝わなければならないので、今の内にこの都会を楽しんでおかなければならぬ。そういう思いもあり、休日は割と出掛けるようにしている。

 そんなぼっちの俺にとんでもない美少女が声を掛けて来た。すっかり秋になり肌寒くなっており、ちょっと身体を温めたいなと思って入った昔ながらの喫茶店。マスターにホットコーヒーを頼んでスマホをいじっていると、俺の後から入って来た女の子が相席していいかと聞いて来た。
 もうこの時点で警戒するよね、俺くらいになると。地元にいた時は親が金持ってるんだからと金づる目的で連れ回されて痛い目を見た経験があるからね。まぁその分いい思いもしたけどさ。
 でもここは都会だ。都会は怖いから気を付けろってじっちゃもばっちゃも言ってた。
 だから俺は言ってやったんだ。

「どうぞどうぞ!」

 笑顔で言ったね。だってリスクを負わないとリターンもないんだぜ? 知ってた? 虎穴に入らずんば虎児を得ずってヤツだ。気の許せる友達がいないだけであって、俺はコミュ障ではない。美少女とだって声を裏返す事なくお話出来るんだ。
 積極的に恋人を作ろうとは思ってないけど、性欲がない訳ではない。それも美少女の方から来たんだ。話が出来るだけでもご褒美です。

 俺が相席を了承すると、その女の子はホッとしたような表情で俺の向かい側の席に掛けた。モスグリーンって言うのかな? 緑色のベロアワンピースを着て、薄いピンクのセーターを羽織った背の低い女の子。
 向かいの席に座ってから気付いたんだけど、この女の子ったら背が低い割に豊かな胸を持ってなさる。大き過ぎないのが俺的にグッド。大きければ良いってもんじゃないからね。
 その女の子はサラサラで全く癖のない黒髪を手で直しながら、メニューを眺めてマスターに向けて手を挙げる。腕まくりして露出された二の腕なんてもう剥きたての玉子なんじゃないかってくらい白くツヤツヤしてて、頬ずりしてぇなぁってため息が出るほどだ。
 美少女もホットコーヒーをオーダーして、そして改めて俺に向き直った。

「すみません、よく考えたら待ち合わせをしてらっしゃるかも知れないのに図々しく相席していいですかなんて言ってしまって、ご迷惑じゃなかったですか?」

 美少女が話し出す前に唇をそっと舐めたのを見逃さなかった。そしてこの発言。実にあざといと言わざるを得ない。だがそれがいい。
 少し声を掛けられたくらいで舞い上がるほど、俺は女慣れしていない訳ではない。上手い話には裏がある。でも、今のところ俺が損をするような段階まで会話が進んでいない。ならば、ギリギリまでこの美少女との会話を楽しもうじゃないか。人生楽しんだ者勝ちって言うしな。雲行きが怪しくなれば逃げます。

「いえいえ、ふらっとこの店に入っただけで、特に予定がある訳じゃないんですよ」

 良かった……、そう独り言のように呟く美少女。何が良かったんだろう、ちょっと期待しちゃうじゃないか。俺は逆ナンされた経験はない。それもこんな美少女だ。ちょっとくらい恥をかいたとしてもいいと思わせるだけの魅力を、この美少女は持っている。うん、期待しよう。

「そちらこそ待ち合わせじゃないんですか? 僕なんかと一緒にいて、恋人に怒られません?」

 期待している割にはとても卑屈なセリフだなと自分でも思った。けど仕方ない。だってこんなに美少女なんだもの。こうして向かい合わせで座っているだけで眼福ってヤツだ。

「もうっ、勇気を出して声を掛けたのに茶化さないで下さい……」

 ムッと唇を尖らせて見せる美少女。そんな表情でさえ様になる。ヤバイ、グッと来た。

「すみません、そんなつもりで言ったんじゃないんです。こんなに可愛い女の子に声を掛けられる経験がなかったもんで」

「可愛いだなんてそんなっ! ふふっ、ありがとうございます」

 何だろう、こんなやり取りをしているだけで心が温かくなって来る。何を買えばいいのかな? 壷かな? 絵画かな? 実家に連絡をすればある程度は用意出来るっていかんいかん。そんな簡単に引っかかる訳にはいかない。せめてエッチさせてくれた後なら買おう。いやいやいや、こんな事を考えているのがそもそもダメなんだ。彼女は本当の本当に、純粋に俺と話がしたくて声を掛けてくれただけかも知れないのに。
 こんな美少女を疑うなんて、俺はどうかしているだな。

「実はお願いがあるんです、衣笠きぬがさ一穂いちほさん」

 えっと……、何で俺の名前を知っているんでしょうか……。光栄だなぁなんて思う気は全くない。顔の表情を変えず、警戒レベルを1つ上げる。やっぱり綺麗なバラには棘があるんだ、絶対そうだ。

「あ、すみません。まだ名乗ってなかったですね。私は高野たかの早百合さゆりって言います。一穂さんの1つ年下の19歳です」

 棘があるのはバラではなく百合でした。
 いやいやしかし、さらっととんでもない情報を寄越したな、この美少女。俺の名前はもちろんの事、俺が20歳である事も知っているとあえて提示して来た。何が目的だ?
 少し緊張して来た。マスター、コーヒーはまだですか? と思ったタイミングで2人分のホットコーヒーを持ったマスターがテーブルへ運んで来てくれた。ごゆっくりどうぞと頭を下げて去って行った後、すぐにコーヒーに口を付ける。あっつ!!

「それで、一穂さんにお願いしたい事なんですけど」

 1人ワタワタしている俺の様子を気にせず、早百合さんが話を続ける。ふーふー、落ち着け。カフェインを摂取して頭を覚醒させろ。棘を持った百合がどんないいお話を持ち掛けようが、落ち着いて対処するんだ。



「私を抱いてほしいんです」

「へぁっ!? ……、あっつっ!!!」

 あまりのお話に、俺はズボンにコーヒーを零した。


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