お坊ちゃまはシャウトしたい ～歌声に魔力を乗せて無双する～

アタックオンニャーニャー（竜人）（猫人）

「お、お兄様？　突然どうなされたのですか？」

　思わずツッコミを入れたら、家族をビックリさせてしまった。
　別に怒っている訳ではないけど、端から見れば俺が鈴に対してツッコミを入れたんだなんて分からないよな。
　日本語だし。

「いや、竜の島には鈴以外にも住民がいる事が分かったんだ。
　ミィチェみたいな耳と尻尾がある人間らしいんだけどさ」

「竜人！？
　まさか、本当にいたとは……」

　父上が声を上げる。
　そうか、俺の中では猫（ネコ）だけど、この世界において猫（竜）だもんな。
　猫が人型だったら竜人になるか。
　発音的には猫人ではなく竜人になると。
　なるほどなるほど、ってややこしいわ！

「お父様、竜人とは一体……？」

　姉上が父上に問い掛ける。
　姉上が知らないとなると、やはりリトゥアール家にしか伝わっていない話なんだろうか。

「あぁ、昔学院の図書館で見た、半ばおとぎ話のような書物があってな。
　そこに書いてあったのだ。
　海の遙か向こう側に、人よりも竜に近い種族、竜人が暮らしている大陸があると」

　へぇ。その本を書いた人は実際にその大陸に行って、帰って来たって事か。
　この世界の海運はあまり発達していない。
　それほど遠くにある訳じゃないんだろうな。
　沖に出る漁船から見えないくらいには離れていて、辛うじて辿り着けるくらいの距離なんじゃないだろうか。

「何故その大陸と交流しようとしなかったのでしょうか？」

　その距離の具体的な数字は分からないけど、日本だって大陸に遣隋使やら遣唐使やらを派遣してた訳だし。
　竜人とはいえ、暮らしがある以上交易するべき利点などがあったと思うんだけど。

「その書物によると、竜人は男を攫うそうだ」

　攫う？　男を攫って何をするつもりだ？
　あ、鈴によると竜人は女しかいない。
　種を保存するには男が必要。
　だから、男を攫う……？

『攫わないよ？
　しばらく顔見ないなーって思ってた子が帰って来て、しばらくしたらお腹が大きくなる事はあるけど』

　現地調達！？
　攫うというのは間違いで、正しくは襲うって事か。
　なるほどなるほど。

　そのように真実を説明すると、絶対に島には行ってはならんとさらに念を押された。
　もし俺がその島に行ったらと想像する。
　ニャーニャーと声を上げながら近付いて来る猫人達。
　目的は俺の男性としての能力。
　男は無理矢理されても繁殖可能状態へは移行しない。
　何とか俺を繁殖可能状態へモードチェンジさせようとする猫人達。
　猫人達は俺の服を脱がせて……。

「おにいさま……？」

「あ、はい。
　絶対にその島には行きません。
　近付きもしません。
　はい」