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竜の島にいるという猫人のお話

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「ダメだ!」
「ダメよ」
「絶対にダメ」
「ダメですわ!!」

 ほらな。
 朝食の場で一応確認してみると、一斉に反対された。
 唯一義兄上だけ何も言って来なかったが、言わなくても他の人達が言っているからいいか、程度の違いでしかない。

「ミィチェが島に帰るのは問題ないのですか?」

「竜神様が必要な事だと仰るのならば、我々は受け入れるしかない」

 ミィチェが戻ってくるであろう事は信じるが、俺が無事に戻ってくるかどうかはまた別の判断だという事だろうか。
 竜の島は断崖絶壁で、通常の手段では行き来が出来ない。
 行きも帰りも自分の意思ではなく、空を飛べる鈴に頼るしかない。
 俺は元日本人という共通点があるのである程度は信頼出来ると思っているが、俺の家族から見ると鈴とは会話も出来ないし、そもそも竜とかいう訳の分からない存在なのだから、警戒するのは当然だ。信仰の対象を恐れるのは当然の反応だろう。

『んー、信頼されてないなー』

 ミィチェの同時通訳を聞いて、鈴がため息をつく。
 信頼関係を築くような事をしてこなかったのだから仕方ないな。
 俺としても、特に竜の島に行きたい理由がないのでそれほど残念でもない。
 ミィチェと離れるのは辛いが、普段ミィチェとは実家と王立学院とで離れ離れなので慣れてはいる事だ。

『そもそもさ、竜の島って何があるんだ?
 鈴は普段どっちの姿で暮らしてるのか知らないけど、家とか建ててる訳じゃないよな?』

『あれ? 言ってなかったっけ。
 島にはあたし以外にも住民がいるから、家もあるし畑もあるよ。
 街って言うほど規模は大きくないけどねー』

 住民、いるのか。
 何となくの印象で、三百六十度どこを見ても海っていう場所で、ずっと日向ぼっこしている大きな猫って目で鈴の事を見てたわ。
 一応島に住民がいるという事を家族に伝えておく。
 みんな、初めて聞いたようで驚いた顔をしている。
 そうだよな、断崖絶壁って聞いたら小さい孤島だと思うもん。
 実際に目にした事があるのって、ミィチェが助けたっていうリューゲとその同行者くらいだろ。
 そもそもリューゲも島に入った訳ではないしな。

『みんな猫の耳と尻尾があって可愛いんだー』

 獣人ってヤツか。
 この場合は猫人になるのだろうか。
 何というファンタジー感。
 しかし、パッと想像したのはニャーニャー言ってじゃれついてくる女の子だったが、男やオッサンやお爺ちゃんもいるだろう。
 何か複雑な気持ちだ。

『女の子しかいないんだけど、みんな良い子なんだよー』

『何でだよ!』

 種族として成り立たないじゃねぇか!
 どうやって子供作るんだよ。
 ファンタジーだからって何でもありなのはダメだろうが。
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