115 / 122
信仰よりも現実を
しおりを挟む
「あの、そろそろ部屋に戻らせてもらえないでしょうか。
さすがに頭がこんがらがって来てしまいました。
少し一人で考えさせて頂けないでしょうか。
一応私は休みなく戦に出て疲れているので……」
そんなこんなで自室へ戻る事が出来た。
父上が鈴の為に部屋を用意し、ミィチェもそちらへ着いて行った。
三百年振りに再会したのだから積もる話もあるだろうと思ったが、実は鈴はミィチェがリトゥアール家へ連れて行かれた後にちょくちょく会いに行っていたらしい。
ミィチェ同様小さい猫の姿になって屋敷に侵入して、様子を見に言っていたそうだ。
「ポーシェは今夜の話はどこまで知っていた?」
ポーシェに寝間着を着せてもらいながら質問する。
違う、そのフリフリレースのドレスじゃなくていつものガウンを寄越せ。
「全て知っておりました。
私はお坊ちゃまが竜神様に連れ去られないよう護衛する役目も負っておりますので」
渋々ガウンを着せるポーシェ。
毎晩毎晩同じやり取りをするのも疲れるんだが。
もしかして諦めて言われるがままドレスを着てしまうのを狙っているんじゃないだろうな。
「俺が連れ去られないように?
だから鈴が降りて来た後、みんなで俺を守ろうと必死になっていたのか」
「はい。
初代当主様から続くリトゥアール家の歴史の中で、表には決して出せない話が伝わっています。
竜神様は幼い男の子を竜の島へ連れ去ってしまう、と。
竜神様が代々の当主に自ら差し出せと仰ったという正式な記録は残っておりませんので、連れ去られるという話が事実かどうかは不明です」
うーん。
鈴を見た限り、生け贄を求めるような人には見えない。
リューゲに憧れて行方不明になった男の子の事と、いつの間にか話が混ざったんじゃないかな。
それに、俺は決して幼い男の子じゃない。
「この地はリトゥアール家のものではなく、遙か昔に因縁があるシュライエン家。
当主同士、お坊ちゃまのご両親同士に軋轢はないものの、古い考えの人間もおります。
特にリトゥアール家には影の者がおりますゆえ、お坊ちゃまを連れ去られてしまえば竜神信仰を大々的に復活させようとするでしょう」
「影の者というのは、信仰を続けて来た部門の事か?」
「そうです。
また、シュライエン家は当主子息を連れ去られるという失態と共に、お館様のご実家との衝突は避けられなくなります。
今の時代、信仰を忌避する者の方が圧倒的に多いです。
竜神様のご意志がどうであれ、王国内でのリトゥアール家の立場の方が、今は大事なのです」
何というか、現実的な考えだな。今の今まで竜神の存在をほとんど信じていなかったのだから当然か。
さすがに頭がこんがらがって来てしまいました。
少し一人で考えさせて頂けないでしょうか。
一応私は休みなく戦に出て疲れているので……」
そんなこんなで自室へ戻る事が出来た。
父上が鈴の為に部屋を用意し、ミィチェもそちらへ着いて行った。
三百年振りに再会したのだから積もる話もあるだろうと思ったが、実は鈴はミィチェがリトゥアール家へ連れて行かれた後にちょくちょく会いに行っていたらしい。
ミィチェ同様小さい猫の姿になって屋敷に侵入して、様子を見に言っていたそうだ。
「ポーシェは今夜の話はどこまで知っていた?」
ポーシェに寝間着を着せてもらいながら質問する。
違う、そのフリフリレースのドレスじゃなくていつものガウンを寄越せ。
「全て知っておりました。
私はお坊ちゃまが竜神様に連れ去られないよう護衛する役目も負っておりますので」
渋々ガウンを着せるポーシェ。
毎晩毎晩同じやり取りをするのも疲れるんだが。
もしかして諦めて言われるがままドレスを着てしまうのを狙っているんじゃないだろうな。
「俺が連れ去られないように?
だから鈴が降りて来た後、みんなで俺を守ろうと必死になっていたのか」
「はい。
初代当主様から続くリトゥアール家の歴史の中で、表には決して出せない話が伝わっています。
竜神様は幼い男の子を竜の島へ連れ去ってしまう、と。
竜神様が代々の当主に自ら差し出せと仰ったという正式な記録は残っておりませんので、連れ去られるという話が事実かどうかは不明です」
うーん。
鈴を見た限り、生け贄を求めるような人には見えない。
リューゲに憧れて行方不明になった男の子の事と、いつの間にか話が混ざったんじゃないかな。
それに、俺は決して幼い男の子じゃない。
「この地はリトゥアール家のものではなく、遙か昔に因縁があるシュライエン家。
当主同士、お坊ちゃまのご両親同士に軋轢はないものの、古い考えの人間もおります。
特にリトゥアール家には影の者がおりますゆえ、お坊ちゃまを連れ去られてしまえば竜神信仰を大々的に復活させようとするでしょう」
「影の者というのは、信仰を続けて来た部門の事か?」
「そうです。
また、シュライエン家は当主子息を連れ去られるという失態と共に、お館様のご実家との衝突は避けられなくなります。
今の時代、信仰を忌避する者の方が圧倒的に多いです。
竜神様のご意志がどうであれ、王国内でのリトゥアール家の立場の方が、今は大事なのです」
何というか、現実的な考えだな。今の今まで竜神の存在をほとんど信じていなかったのだから当然か。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる