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最後にして最大の理由

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「他にも理由はある。先に話したリューゲ様の神託の件だ」

 リューゲ様の神託、ねぇ。
 そんなものはなくて、実際は何も出来ないまま家に帰って来たリューゲの、何とか絞り出した自分を正当化する為の嘘なんだが。
 
「リトゥアール家の男子はリューゲ様のように神託を受けるのだと言って家を飛び出してしまう者が多かった。
 二人の侍女の証言により竜神の島までの旅は相当困難なものだった事が分かっている。
 一種の憧れというヤツだ」

 小さい男の子が冒険したくなっちゃう、一種の熱病みたいなもんか。
 自分の家に実例があるのだから、余計に自分も挑戦したくなるんだろうな、多分。

「家を出て広い世界を旅してみたくなる時期もある。
 その多くはすぐに帰って来るのだが、中には行方不明になった者や、身ぐるみを剝がされて打ち捨てられていた者もいる。
 従って、ある程度の年齢になるまではリトゥアール家の男子であっても竜神信仰に触れさせないという決まりがある」

 俺がそのある程度の年齢に達しているのかどうかは別として、リトゥアール家の人間じゃないから話さなかったという事かな。

『えー、可哀想な事しちゃったなー。
 ショタっ子が呼んでるって分かってればすぐにでも飛んで行ったのにー』

 ショタっ子って言うなや。
 まぁ鈴は実際にショタっ子に呼ばれたとしても、神託なんて何も授けないんだろうけど。
 自分が信仰の対象になっているだなんて知らないんだから。
 せいぜい全裸でよしよしするだけか?
 例え鈴が女性だとしても、現代日本であれば通報ものだ。

「そして最後の理由だ。
 これが最大の理由と言っていいだろう。
 アルティ、お前は今何の違和感もなく竜神様と会話をしているな?」

 え? あぁ、その通りだけど。
 それは俺と鈴とミィチェが元日本人で、この世界に生まれ変わった後も前世の記憶が残っていたからというとても説明し辛い理由があるからだ。
 竜神信仰はあるとはいえ、日本的な宗教観である死後の世界や輪廻転生という前提知識がないこの世界ではどう説明すれば伝わるのか分からない。

「いや、お前が私達に対して上手く説明が出来ないのは分かっている、分かっているとも。
 大丈夫だ、何の心配もいらん!」

 俺が説明出来ない理由を分かっている? 父上が?
 息子が前世日本人だって分かってるとは思えないんだけど。
 やけに自信満々というか、すごく嬉しそうな感情が漏れている。
 その隣に座っている母上は、腕を組んでいるムスっとしている。
 何だこの相反する二人は。
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