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選択を迫られたリトゥアール家

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 魔法のある世界だからこそ、そういう考えに至るのは不思議ではない。
 信仰心が揺らいでいる時、その人は魔法の制御が難しくなる。
 こんなに悩まされるのならば、神など捨ててしまおう。
 そうした方がより良い暮らしを送れたのかもしれない。
 実際、捨てた信仰の対象から何の罰も与えられなかったからこその今があるのんじゃないだろうか。
 元日本人の俺から見ると、魔法という超常的な力が存在しているのに、この世界を管理するよるような分かりやすい神が関与していないのが不思議でならないが。

「そして話はリトゥアール家に戻るのだが。
 ここからの話はこの場限りの他言無用にしてほしい」

 いよいよ竜や竜神の存在を俺に隠していた理由が語られるようだ。

「信仰が徐々に廃れていくのと入れ替わるように、モナルキア王国が建国された。
 この国は神を崇めずその他の信仰もない、人の手によって興された国だ。
 人と人が手を携えて、人の手による繁栄を誓った国。
 当時にしてはかなり珍しかった。
 争いのない平和な治世、相互協力関係の領主達。
 そしてその統率者としての国王」

『絶対王政じゃないのね』

『民主主義でもないし、領主達による合議制かなー?』

 ミィチェと鈴はずっと喋っている。
 俺はこの二人が会話の内容を理解しているという事がみんなにバレないか冷や冷やしているというのに。
 堂々と会話せず、もうちょっとこそこそしてくれないだろうか。

「王国に属した領主達はどんどんと豊かになっていった。
 その勢いを鑑み、当時のリトゥアール家当主も王国への参画を打診した。
 王国議会が条件付きでそれを認めると回答したのだが……」

 だが?
 何でそこで言い淀んだのだろうか。
 父上は母上を見つめておられる。

「当時の議長がシュライエン家当主だったのよね?
 そしてその回答をリトゥアール家に伝えると、両家の関係は悪くなってしまった。
 その条件というのが、放棄を前提とした信仰の縮小。
 人知で制御する事の出来ない神を信仰している限り、社会の発展が妨げられるという考えが主流だったと聞いているわ」

 新しい考えを元にして集まった王国に入りたいなら、古い考えは捨ててくれたまえ。
 そういう事だろうか。

「竜の許しを以って繁栄して来たリトゥアール家にとって、信仰を捨てるという選択は簡単なものではない。
 しかし、自ら王国へ近付いた為に、今まで通り信仰を続けるという選択もしにくくなってしまったのだ」

 自分の方から近代的な貴族の集まりへ近寄ったのに、俺らのやり方に従ってねって言われたからといって、じゃあいいですわと離れる事が出来なかった、と。
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