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真実を伝えれば良いというものでもない

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 何と言うか、認識の相違があるな……。
 全裸の神様に抱き着かれて頭を撫でられる光景を想像する。
 考えようによっては、神話の一節に思えなくもない。

 しかし、今さら鈴にはそんなつもりはなかったそうですよ、なんてリトゥアールのお婆様に言えないぞ。

『ちなみにミィチェは巫女さんを見に行ったのか?』

『一回だけ見た事がある。
 でもすごく怖かったからすぐ帰った』

 怖かった?
 人間に崇め奉られる竜が、恐怖を感じる事なんてあるのだろうか。

『何と言うか……、ヤバい目つきで拝んで来るから居心地がすごく悪かった』

 それはミィチェが信仰の対象だからじゃないだろうか。
 もし神様が現れたら、俺だって手を合わせて拝むかも知れないし。
 ただ手を合わせてぶつぶつと願い事を言われただけじゃなく、余程狂信的な拝み方をされたのだろか。
 まぁそれは置いておくとして。
 さっきから俺と鈴とミィチェの会話を見守っている家族にも何と説明すれば良いか、悩む。
 この二人はただの元日本人であって、神様や竜神様といった信仰の対象ではないんですよー。
 そう伝えて納得してくれるなら苦労はしないんだけど。

『どちらにせよ、今の今までアルティのお父さんのお家が存続している事は間違いない。
 引き続き、末永く繁栄するよう見守って行くと言ってるって事にすれば良い』

 なるほど、ミィチェ頭良い。
 その案を採用させてもらおう。
 そのまま伝えると、父上が嗚咽しながら頭を下げた。
 何か罪悪感がすごい。

『で、ミィチェが託された云々の話の心当たりは?』

 父上がまだ感極まったままなので、直接ミィチェに聞いてみる。
 これもまたどうせ思い違いだろうな。
 口に出しては言えないが。

『あれは確か今から二百年、いや三百年?
 ……昔々の事じゃった』

 猫だと思っていたら化け猫だった。
 いや竜か。
 何にしても、ミィチェが語り出した。

 断崖絶壁の孤島。
 気付いたらそこにいたミィチェは、自分よりも少し大きいくらいの猫に毛づくろいされていた。
 それが鈴。
 鈴はいつも通り島を散歩していると、見掛けない猫がいたから保護をしたという感覚だったらしい。
 最初からあのデカい猫だった訳ではなく、地脈から湧き出て来るマナを吸い取り、長い時間を掛けて今の大きさになったとか。
 地脈とかマナとかはあまりよく分からないが、そういうもんなのだという理解に留めておく。
 細かい事を聞き出したら朝になってしまうからな。
 後に竜の島と呼ばれるその島は、一年を通して温かい気候だという。ずっと春から初夏のような気温なので、自分達がこの世界に生まれ変わってどれだけの年月が経っているのか分からないそうだ。

 そしてミィチェがリトゥアール家で過ごすようになったのは、ある一人の少年がきっかけだったと話す。

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