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お坊ちゃまは思案する

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 カーニャ然り、フィデリーテ然り、敵指揮官が俺へと懐くという異常な展開に頭が付いて来ないでいる。

 ……いや、冷静に考えるとこれは割と好都合なのでは?
 ユニオーヌ連合の重鎮とも言っても過言ではないエテピシェ伯爵、その愛息子。
 このフィデリーテを操る事が出来るのは強い。
 伯爵はこんな馬鹿に育ててしまったくらい、この男の事を溺愛しているだろう。
 フィデリーテは伯爵に強い影響力を持っていると言っても過言ではないはずだ。
 そのフィデリーテが俺の間者とすれば。エテピシェ伯爵家に働き掛ける事が可能、
 そしてエテピシェ伯爵家経由でユニオーヌ連合全体を掌握する事も。

 何も全て併呑してしまおうという話ではない。
 ユニオーヌ連合内の動きが見え、ある程度指示通りに動かす事が出来れば、帝国へ牽制する事が出来る。
 帝国へ打って出たい訳ではない。
 しかし、やろうと思えば出来る、という状態は非常に望ましい。
 考えれば考えるほどに、なかなか悪い話じゃないな。
 帰ったら父上に相談しよう、そうしよう。

 あ、そうだ。
 フィデリーテとカーニャは婚約者。
 そもそも俺がカーニャを捕らえたからフィデリーテは出張って来た訳で。
 二人で帰って幸せに暮らせ、そういう命令もありなんじゃないだろうか?

「お坊ちゃま、一度飼った犬は最後まで面倒を見ませんと」

 俺の内心をすぐに言い当てて来るな。
 ポーシェの言葉で俺の考えている事に気付いたのか、カーニャが俺を縋るような潤んだ瞳で見つめて来る。
 そんな二人をじっと観察するように見ているフィデリーテ。
 いずれカーニャとフィデリーテも、ポーシェの教えによって俺の心が読めるようになる、とか、そんな超展開はないよな? な!?

 何か居心地が悪いのでフィデリーテに八つ当たりでもするか。
 本当はこいつに婚約者取ってやったぜ、ざまぁぁぁ!
 って言ってやるつもりだったんだけど、カーニャ個人に対しての執着ではなく俺への復讐が目的だったみたいだからな。
 どっちにしてもざまぁではあるが。

 どれ、俺への忠誠心というのが本当に本心なのか試させてもらおう。

「フィデリーテ、お前が俺に従うと言うのであれば、お前の婚約者であったカーニャはお前の先輩にあたる。
 きちんと敬意を持って接するように。
 横柄な態度は許さん、言われた事には黙って従え。
 分かったか?」

 これはなかなか屈辱なんじゃないか?
 こいつはカーニャを愛していた訳ではないのだろう。
 カーニャの話し振りから、恐らく見下した態度を取っていたのだと思う。

 さぁ、どういう態度に出るだろうか。
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