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叱られるお坊ちゃま

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 びっくりする程、本当に口ほどにもなかったな。
 やっぱり伯爵家の子息とは言え、思った通りの馬鹿息子だった。
 正直もうちょっと耐えてほしかった。
 何であの魔法に耐えられないのに出張って来たのか。
 もうちょっと続けたかった。
 こんな機会なんてそうそうないんだから、もーっと気持ち良く歌わせてほしかった。
 でも後で絶対にやり過ぎだーって怒られるだろなーと思ったから、ある程度は自制はしたんだ。
 その程度っていうのは俺のさじ加減一つじゃん。
 俺に任せられるべき裁量の範囲内じゃん。

 それにさ、事前にちゃんと見逃してやるから退却しろって警告しておいたもん。
 だからさー、俺は悪くないと思うんだよなー。
 悪いのはこうなる事が予想出来なかったあいつらだと思うの。

 だってそうだろ?
 馬鹿息子がバンバン放って来ていた魔法、こちらには何の影響も被害もなかったんだから。
 それを見て確認していたはずなんだ。
 それなのにも関わらず、まだ戦に勝てる気でいたのなんて判断能力が欠如しているとしか言えない。
 この戦乱の世の中、自分の身は自分で守らなければならぬ。
 全ては自己責任だ。
 弱い奴が悪い。
 だから俺は悪くない。
 少しだけお、ちょーっとだけやり過ぎてしまっただけじゃんか。


「若様、いくら何でもやり過ぎです。
 気を失っているだけでなく、泡を吹いている者や恐怖に震えて痙攣している者、中には失禁している者も確認しております。
 戦なのですから、この場にいた者達はある程度の経験と自信、そして覚悟を持っている者達です。
 それらを考慮したとしてもこの有様は酷過ぎます。
 阿鼻叫喚とはこの事でしょう。
 前回の戦よりも破壊力が増していたように思いますが、若様はこうなる事を簡単に予想出来たのではないですか?
 何故もう少し手心を加えたり、相手を慮ったり出来なかったのでしょう。
 大の女にそこまでの恐怖心を植え付けるなど、婚前の男子の行いとはとても思えません。
 時には力を見せつけて、必要のない争いを減らすというお考えも理解出来ます。
 しかしいくらなんでもこれはやり過ぎです。
 すでに屈服している相手へ感情の趣くまま魔法を放つなど、野蛮で忌避すべき行為。
 まだご婚約も決まっておりませんのに、シュライエン辺境伯家のご子息としてあらぬ噂を流されるかと思うとご当主様へ何とご報告させて頂けば良いか。
 歌に魔力を乗せるにしてももっと上手に制御をして頂いた上で……………………」

 副官にこれでもかと言うくらいがっつりと怒られた。
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