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お坊ちゃまにこの世界の魔法が通用しない理由

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 俺はこの世界において、特別な存在などではない。
 貴族の家に生まれ、遺伝的に人より魔力量が多く、感情の制御方法と魔力放出技術を学んだだけの、十四歳の男だ。
 この世界の人間が誰一人持っていない異能や才能を持たされた訳でも、神様に特別な使命を与えられた訳でもない。

 俺が人と少し違うのは、前世の記憶があるという事のみ。
 そして俺も母国語が日本語だったという事。

 テレビだったか、ネットだったか。
 面白い話があった。
 ドイツで日本語を話すと、現地のドイツ人からすごく注目を受けるらしい。

 何故か。
 ドイツ語を母国語としているドイツ人の耳には、日本語の発音がとても可愛らしく聞こえるからだという。
 逆に言うならば、日本人の俺からするとドイツ語って常に起こっていて攻撃的に聞こえる。
 もしくは少しカッコイイ聞こえ方がするものだ。

 俺はこの世界に生まれ変わり、早十四年経った。
 この世界、この地域一帯の言語をいわゆる母国語として使用している。
 発音がおかしいだとか、ぎこちないなどと言われた事はないので、会話に困る事はない。

 しかし、俺の脳内言語は日本語のままだ。
 自分が赤ん坊に生まれ変わったのだと気付いたその時から、脳内では常に日本語で思考をしていた。
 この世界の言葉を耳にし、一度日本語フィルターで変換した後で理解している。
 もう慣れたものだからその処理に時間が掛かるなどという事はなく、それが当たり前になっている。

 そしてその日本語フィルターがあるお陰で、この世界の魔法、特に攻撃魔法においては効力が格段に下がる。
 怒っているクセに何をぽーちゃぽちゃと言ってるんだ、と笑ってしまうという一工程を無意識に挟んでしまうからだ。
 これは他の感情を元にした魔法にも言えるのだが、怒りという感情から俺が身を守るという防衛本能からより顕著になるのだろうと考えている。
 逆にこんな可愛い発音だけど、俺の事を心配してくれているのだなぁと思う事でより癒やされる、などという現象も起こっている。
 要は俺の受け取り方次第という訳だ。

 ただ、ポーシェのように言葉に出さず感情のみで魔法を放つのを得意とする魔法使いに関しては、ちょっと事情が変わって来るんだけど。
 いや、ポーシェの場合は順番が逆か。
 俺に何を言っても効いていないと早い段階で判断したから今の方式に変えたのだろう。
 ポーシェが敵に回ったら……。
 いや、あり得ない事は考えないでおこう。

 と、まぁ何故俺にはこの世界の攻撃魔法が通用しないのかの解説は以上である。
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