67 / 122
お坊ちゃま、激怒する
しおりを挟む
俺の問い掛けに対し、何も答えようとしないカーニャの姉。
無理矢理にでも吐かせられるかもしれないが、戦が始まった今の状況を思えば、さして重要ではない。
ヴォワザン子爵家の事情など聞くまでもなく、全て殲滅してしまえば良い。
しかし、ポーシェがカーニャという子犬を拾ってしまった以上、皆殺しにしてしまうのは寝覚めが悪いというものだ。
「姉様、ご主人様の問いにお答え下さい」
手当を受けたカーニャが戻って来た。
左肩に包帯を巻かれ、三角巾で腕を吊っている。
「ご主人様だと?
この男に抱かれて心を奪われたか!?」
えーっと、今はその話よくね?
ややこしいからさ、後にしてくれないかな。
そして抱いてないから。
勝手に俺を主人認定してるだけだから。
勝手に尻尾を振ってキャインキャインと懐いて来ているだけだから。
「姉様も今に分かります。
ご主人様には何人たりとも敵いません。
非常に素晴らしいお方です。
そんなお方が率いるシュライエン辺境伯家を敵に回してしまったのです。
このままではユニオーヌの軍勢は全滅します。
せめてヴォワザン子爵家だけでも降伏を」
敵に回してしまった時の指揮官はお前だけどな。
「そんな事が出来るものか!
母上の命に背き派兵したのだ。
お前を助ける為に来たのだ!!
今さら伯爵家の指揮から外れるなど……」
なるほど、カーニャの姉が抱えている事情が分かった。
当主と次期当主とで意見が対立している状況で、この女が母親の命令を無視して兵を連れて来たという事か。
それならば書状の内容と軍の行動が違うのは当然か。
妹を想う気持ちについては、俺にも理解出来るものだ。
「では質問を変える。
何故カーニャは弓で狙われた?」
この程度なら答えられるだろう。
すでに失敗した作戦の、その目的を聞いているだけなのだから。
作戦内容を知られたところですでに意味はなくなっている。
知りたいのは相手の思惑だけ。
「……敵の手に落ちた物などいらぬと」
ふーーーん、なるほどねーーー。
無傷で返せだ、戦場へ連れて来いと言っておきながらそれか。
随分と身勝手な話だ。
馬鹿息子は自分の婚約者を助け出しに来たのではなく、自分の物ではなくなった物を壊しに来た訳だ。
最初から狙いはカーニャではなく、自分の物を取った俺への復讐であると。
何ともまぁ馬鹿らしいというか、腹立たしいというか、不愉快だというか。
お前の婚約者だった女だというのに。
自分の面子の為に殺すというのか。
久々に、イライラが止められそうにない。
無理矢理にでも吐かせられるかもしれないが、戦が始まった今の状況を思えば、さして重要ではない。
ヴォワザン子爵家の事情など聞くまでもなく、全て殲滅してしまえば良い。
しかし、ポーシェがカーニャという子犬を拾ってしまった以上、皆殺しにしてしまうのは寝覚めが悪いというものだ。
「姉様、ご主人様の問いにお答え下さい」
手当を受けたカーニャが戻って来た。
左肩に包帯を巻かれ、三角巾で腕を吊っている。
「ご主人様だと?
この男に抱かれて心を奪われたか!?」
えーっと、今はその話よくね?
ややこしいからさ、後にしてくれないかな。
そして抱いてないから。
勝手に俺を主人認定してるだけだから。
勝手に尻尾を振ってキャインキャインと懐いて来ているだけだから。
「姉様も今に分かります。
ご主人様には何人たりとも敵いません。
非常に素晴らしいお方です。
そんなお方が率いるシュライエン辺境伯家を敵に回してしまったのです。
このままではユニオーヌの軍勢は全滅します。
せめてヴォワザン子爵家だけでも降伏を」
敵に回してしまった時の指揮官はお前だけどな。
「そんな事が出来るものか!
母上の命に背き派兵したのだ。
お前を助ける為に来たのだ!!
今さら伯爵家の指揮から外れるなど……」
なるほど、カーニャの姉が抱えている事情が分かった。
当主と次期当主とで意見が対立している状況で、この女が母親の命令を無視して兵を連れて来たという事か。
それならば書状の内容と軍の行動が違うのは当然か。
妹を想う気持ちについては、俺にも理解出来るものだ。
「では質問を変える。
何故カーニャは弓で狙われた?」
この程度なら答えられるだろう。
すでに失敗した作戦の、その目的を聞いているだけなのだから。
作戦内容を知られたところですでに意味はなくなっている。
知りたいのは相手の思惑だけ。
「……敵の手に落ちた物などいらぬと」
ふーーーん、なるほどねーーー。
無傷で返せだ、戦場へ連れて来いと言っておきながらそれか。
随分と身勝手な話だ。
馬鹿息子は自分の婚約者を助け出しに来たのではなく、自分の物ではなくなった物を壊しに来た訳だ。
最初から狙いはカーニャではなく、自分の物を取った俺への復讐であると。
何ともまぁ馬鹿らしいというか、腹立たしいというか、不愉快だというか。
お前の婚約者だった女だというのに。
自分の面子の為に殺すというのか。
久々に、イライラが止められそうにない。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
ReBirth 上位世界から下位世界へ
小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは――
※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。
1~4巻発売中です。
【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~
次元謄一
ファンタジー
タイトル変更しました→旧タイトル 「デッドエンドキングダム ~十五歳の魔剣使いは辺境から異世界統一を目指します~」
前世の記憶を持って生まれたオスカーは国王の落とし子だった。父の死によって十五歳で北の辺境王国の統治者になったオスカーは、炎を操る魔剣、現代日本の記憶、そしてなぜか生まれながらに持っていた【千里眼】の能力を駆使し、魔物の森や有翼人の国などを攻略していく。国内では水車を利用した温泉システム、再現可能な前世の料理、温室による農業、畜産業の発展、透視能力で地下鉱脈を探したりして文明改革を進めていく。
軍を使って周辺国を併合して、大臣たちと国内を豊かにし、夜はメイド達とムフフな毎日。
しかし、大陸中央では至る所で戦争が起こり、戦火は北までゆっくりと、確実に伸びてきていた。加えて感染するとグールになってしまう魔物も至る所で発生し……!?
雷を操るツンデレ娘魔人、氷を操るクール系女魔人、古代文明の殺戮機械人(女)など、可愛いけど危険な仲間と共に、戦乱の世を駆け抜ける!
登場人物が多いので結構サクサク進みます。気軽に読んで頂ければ幸いです。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
ポリ 外丸
ファンタジー
普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。
海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。
その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。
もう一度もらった命。
啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。
前世の知識を持った生き残りエルフの気まぐれ人生物語り。
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバ、ツギクルにも載せています
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
元公務員が異世界転生して辺境の勇者になったけど魔獣が13倍出現するブラック地区だから共生を目指すことにした
まどぎわ
ファンタジー
激務で倒れ、そのまま死んだ役所職員。
生まれ変わった世界は、魔獣に怯える国民を守るために勇者が活躍するファンタジーの世界だった。
前世の記憶を有したままチート状態で勇者になったが、担当する街は魔獣の出現が他よりも遥かに多いブラック地区。これは出現する魔獣が悪いのか、通報してくる街の住人が悪いのか……穏やかに寿命を真っ当するため、仕事はそんなに頑張らない。勇者は今日も、魔獣と、市民と、共生を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる