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先輩侍女と後輩侍女
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母上の執務室を辞して、自室に戻り戦支度をする。
初陣から時を置かずに二度目の出陣となるとは思っていなかったが、まぁ問題はない。
エティーは何とか俺を戦へ出さないよう俺や両親達を説得してくれていたが、すでに俺個人の問題ではなく貴族家対貴族家の問題に発展している以上、出陣しない訳にはいかない。
両親へ出立の挨拶を済ませ、エティーの頭を撫でて屋敷を出る、つもりがエティーに袖を摘ままれた。
「大丈夫、すぐに帰って来るよ」
「今度は寄り道せずに真っ直ぐ帰って来て下さいましね?」
「も、もちろんですとも……」
エティーを宥め、改めて屋敷を出る。
「ご主人様、お待ちしておりました」
「俺はお前を雇った覚えはないぞ」
俺が出陣する原因であるカーニャが玄関のすぐ外で跪いて待っていた。
拘束はされておらず、すぐそばに武官が立っているのみ。
何があってもいいように、念の為だろう。
両親はポーシェがそこまで言うのなら、とカーニャの身柄をポーシェへ与えてしまった。
俺が意見しようとすると、父上が「分かっているみなまで言うな」と聞き入れてくれなかった。
もしかして、俺が十四歳だからいわゆる反抗期で素直になれないお年頃だと思われているんだろうか。
欲しい物が欲しいと言えないんだよな、分かってる分かってる。
そんなノリか、余計なお世話だ全く。
「はい、私はただご主人様に仕えるのみ。
望むのは一つだけでございます」
一つだけ?
何だろう、実家であるヴォワザン子爵家の扱いについてだろうか。
自分が身を持って敗戦についての賠償責任を果たすから、実家への請求を減額してほしい、とかか。
「どうか、捨てないで下さいませ」
お、おう……。
「それは貴女の働きを見て判断する事です。
貴女はただお坊ちゃまへ尽くせば良いだけの事、弁えなさい」
早速先輩風を吹かせるポーシェ。
躾は最初が肝心と言うからな、ちょっと言ってる内容が相応しくない気がするけど。
「申し訳ございません、精一杯尽くさせて頂きます」
先輩のお小言を受けてさらに頭を下げるカーニャ。
まるで土下座のようだ。
茶髪の美女、いやまだ美少女と呼んでも良いくらいの年頃の娘が、地面に土下座をする光景。
ちょっとだけ胸がざわめくのは何故だろうか。
もしかして、カーニャが俺に魔法を放っている……?
この世界に女が男に対して媚びを売るような魔法があるとは思えない。
やはり、これは俺の中に隠されたSっ気が芽生える気配だろうか。
これから出陣だから、ただ気が立ってるだけのような気もするけど。
あー、今まで性的な事から極力距離を取って生きて来たのに、何でこうも向こうからぐいぐい来るようになってしまったんだろうか。
初陣から時を置かずに二度目の出陣となるとは思っていなかったが、まぁ問題はない。
エティーは何とか俺を戦へ出さないよう俺や両親達を説得してくれていたが、すでに俺個人の問題ではなく貴族家対貴族家の問題に発展している以上、出陣しない訳にはいかない。
両親へ出立の挨拶を済ませ、エティーの頭を撫でて屋敷を出る、つもりがエティーに袖を摘ままれた。
「大丈夫、すぐに帰って来るよ」
「今度は寄り道せずに真っ直ぐ帰って来て下さいましね?」
「も、もちろんですとも……」
エティーを宥め、改めて屋敷を出る。
「ご主人様、お待ちしておりました」
「俺はお前を雇った覚えはないぞ」
俺が出陣する原因であるカーニャが玄関のすぐ外で跪いて待っていた。
拘束はされておらず、すぐそばに武官が立っているのみ。
何があってもいいように、念の為だろう。
両親はポーシェがそこまで言うのなら、とカーニャの身柄をポーシェへ与えてしまった。
俺が意見しようとすると、父上が「分かっているみなまで言うな」と聞き入れてくれなかった。
もしかして、俺が十四歳だからいわゆる反抗期で素直になれないお年頃だと思われているんだろうか。
欲しい物が欲しいと言えないんだよな、分かってる分かってる。
そんなノリか、余計なお世話だ全く。
「はい、私はただご主人様に仕えるのみ。
望むのは一つだけでございます」
一つだけ?
何だろう、実家であるヴォワザン子爵家の扱いについてだろうか。
自分が身を持って敗戦についての賠償責任を果たすから、実家への請求を減額してほしい、とかか。
「どうか、捨てないで下さいませ」
お、おう……。
「それは貴女の働きを見て判断する事です。
貴女はただお坊ちゃまへ尽くせば良いだけの事、弁えなさい」
早速先輩風を吹かせるポーシェ。
躾は最初が肝心と言うからな、ちょっと言ってる内容が相応しくない気がするけど。
「申し訳ございません、精一杯尽くさせて頂きます」
先輩のお小言を受けてさらに頭を下げるカーニャ。
まるで土下座のようだ。
茶髪の美女、いやまだ美少女と呼んでも良いくらいの年頃の娘が、地面に土下座をする光景。
ちょっとだけ胸がざわめくのは何故だろうか。
もしかして、カーニャが俺に魔法を放っている……?
この世界に女が男に対して媚びを売るような魔法があるとは思えない。
やはり、これは俺の中に隠されたSっ気が芽生える気配だろうか。
これから出陣だから、ただ気が立ってるだけのような気もするけど。
あー、今まで性的な事から極力距離を取って生きて来たのに、何でこうも向こうからぐいぐい来るようになってしまったんだろうか。
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