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隠されたSっ気VS魔法暴発の恐怖心

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 義兄上が現状を整理しようと、改めて状況を述べていく。

「ヴェーニィである婚約者と、それを打ち負かした二つ名持ちのアルティ。
 そしてその侍女ポーシェはブリランテ。
 それに留まらず二つ名持ちの次期当主であるアヴィまで控えている。
 これだけの戦力を相手にしなければならない状況に陥ってしまった。
 エテピシェ伯爵は自分の息子を制御出来なかった報いを受ける事になりますね。
 連合内での立場も危うくなるでしょう」

 圧倒的圧倒的不利な状況を再確認し、義兄上も同情を禁じ得ない様子。
 でもまぁ、これも自業自得だからな。
 馬鹿息子があんなしょうもない書状を送って来なければ、俺もすんなりカーニャを送り返していただろうに。

 全く、余計な事をしやがって。
 黙って婚約者が帰って来るのを待っていればこんな事にはならなかった。
 確かにカーニャは美人だ。
 俺に対して見せる狂信的な雰囲気が滅茶苦茶怖いけど、犬のように縋り付いて来るのは正直悪い気はしない。
 俺の中の隠されていたSっ気がむくむくと顔を出して来そうな気配を感じる。
 俺が望むのなら手を出しても良いと父上のお墨付きまであるので、このまま夜の初陣を決めてしまうのもありかなぁーという気がしてきている。

 が、俺はどうしてもその時に魔法を暴発させてしまうんじゃないかという不安があるので、頭空っぽにして飛び付くような真似は出来ないんだ。
 カーニャがいる事で余計に早く手を出せ、まだ出さないのか、何で出さないんだと周りから注目されてしまう。
 プレッシャーを感じる。
 あぁ、考えただけでも憂鬱な気分だ。

「お兄様、やはり戦へ行くのがお嫌ですの……?」

 おっと、感情を漏らしてしまったか。
 エティーが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
 まだまだ感情の制御がし切れていないという事だな。
 余計に夜の初陣が恐ろしく感じてしまう。
 今ではないとしても、俺はいずれちゃんと夜の初陣を決められる時が来るのだろうか……。

 ってか夜の初陣って何だよ!!
 父上のオヤジギャグをそのまま使ってしまうくらい、混乱しているみたいだ。

「いや、大丈夫だ。
 今すぐにでも準備をして出立出来るよ、何も問題ない」

 自分の性事情について、家族が変に気を回しているのを感じて俺自身もやきもきするという羞恥プレイでドギマギしている、という一言では表せない今の状況を妹に説明するなんてこと、俺には出来ない。

「そうですの……?
 大丈夫でしたら良いのですが、いつでも私が変わりますので仰って下さいましね」

 妹が優しいのが逆に心を締め付けるのは何故なんだろうか……。
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