上 下
51 / 122

父上は手に入った者を確かめてみろと勧める

しおりを挟む


「私は構いませんので、はっきりと仰って下さい」

 そう言うと、父上がチラッとエティーの方を見てから、俺の耳元に口を近付けて囁く。

「一晩あれば、色々と考える事が出来るだろう?
 例えば、手に入ったモノが自分に合うかどうかじっくりと試す事が出来る。
 本当に手放してしまっても後悔しないか、一晩ゆっくりと考えられるだろう」

 何だよ、この期に及んでまた下ネタかよ、好きだなこのエロ親父。
 わざわざ聞いて損した気分だ。
 幸い、父上が何を言いたいのか理解していた母上が、エティーの気を逸らしていたのでティーカップは割れていない。

 しかしその問題があったな。
 俺を戦場に呼び出そうという書状の主は、カーニャを連れて来いと言っていたんだった。
 あの犬娘は任せろとポーシェが言っていたが、今はどうなっているだろうか。

「あの娘との面会の途中だったのだったな。
 ポーシェが残り、引き続き尋問をしているのだろう?」

「はい、父上。
 もしかするとすでに屋敷へ戻って来ているかもしれません」

 部屋の端で待機しているメイドへ声を掛ける。

「ポーシェが屋敷へ戻ったかどうか、確認して来てくれ」

コンコンコンッ

「失礼致します。
 お坊ちゃま、私に何か御用でしょうか?」

 メイドが確認するまでもなく、部屋へ参上するポーシェ。
 さすが有能な侍女、扉の向こうで待機していたのか。
 しかし部屋の中の会話を盗み聞きするのはよくないぞ。
 侍女というよりも忍びの者といった立ち振る舞いだ。
 とても怖い。

「あの娘はどうなった?」

「ご報告致します。
 実戦経験は少ないながらもヴェーニィであり、カーニャは使い方次第では非常に有効な駒となり得ます。
 また、戦場でお坊ちゃまの魔力にあてられた結果、身も心もすっかりお坊ちゃまに心酔しております。
 私の聴取にも全て素直に応じ、少しでもお坊ちゃまのお役に立てるようにと敵の戦略や内情など、こちらにとって非常に有益な情報をもたらしました。
 後ほど収容所の所長を通しまして、改めて報告書が上げられる予定です。
 さらにカーニャが生娘である事を確認出来ま……」

「よし分かった!
 もう分かったから止めてくれ!!」

 そんなに堂々と報告されてはたまったもんじゃない。
 ポーシェの報告を受けて、父上がうんうんと頷いている。
 実家の分家の娘だから、贔屓目に見ておられるのだろうか。

 それにしても、生娘がどうか、そう簡単に見分けが付くものなのか……?

 いや、決して興味がある訳ではないのであしからず。
 ほ、ホントだよ!
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~

次元謄一
ファンタジー
タイトル変更しました→旧タイトル 「デッドエンドキングダム ~十五歳の魔剣使いは辺境から異世界統一を目指します~」 前世の記憶を持って生まれたオスカーは国王の落とし子だった。父の死によって十五歳で北の辺境王国の統治者になったオスカーは、炎を操る魔剣、現代日本の記憶、そしてなぜか生まれながらに持っていた【千里眼】の能力を駆使し、魔物の森や有翼人の国などを攻略していく。国内では水車を利用した温泉システム、再現可能な前世の料理、温室による農業、畜産業の発展、透視能力で地下鉱脈を探したりして文明改革を進めていく。 軍を使って周辺国を併合して、大臣たちと国内を豊かにし、夜はメイド達とムフフな毎日。 しかし、大陸中央では至る所で戦争が起こり、戦火は北までゆっくりと、確実に伸びてきていた。加えて感染するとグールになってしまう魔物も至る所で発生し……!? 雷を操るツンデレ娘魔人、氷を操るクール系女魔人、古代文明の殺戮機械人(女)など、可愛いけど危険な仲間と共に、戦乱の世を駆け抜ける! 登場人物が多いので結構サクサク進みます。気軽に読んで頂ければ幸いです。

呪われ姫の絶唱

朝露ココア
ファンタジー
――呪われ姫には近づくな。 伯爵令嬢のエレオノーラは、他人を恐怖させてしまう呪いを持っている。 『呪われ姫』と呼ばれて恐れられる彼女は、屋敷の離れでひっそりと人目につかないように暮らしていた。 ある日、エレオノーラのもとに一人の客人が訪れる。 なぜか呪いが効かない公爵令息と出会い、エレオノーラは呪いを抑える方法を発見。 そして彼に導かれ、屋敷の外へ飛び出す。 自らの呪いを解明するため、エレオノーラは貴族が通う学園へと入学するのだった。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

元公務員が異世界転生して辺境の勇者になったけど魔獣が13倍出現するブラック地区だから共生を目指すことにした

まどぎわ
ファンタジー
激務で倒れ、そのまま死んだ役所職員。 生まれ変わった世界は、魔獣に怯える国民を守るために勇者が活躍するファンタジーの世界だった。 前世の記憶を有したままチート状態で勇者になったが、担当する街は魔獣の出現が他よりも遥かに多いブラック地区。これは出現する魔獣が悪いのか、通報してくる街の住人が悪いのか……穏やかに寿命を真っ当するため、仕事はそんなに頑張らない。勇者は今日も、魔獣と、市民と、共生を目指す。

処理中です...