50 / 122
お坊ちゃまは兵士を気遣う
しおりを挟む
えーっと、そんなに考える為の時間なんて必要ないんだよな。
俺が行くか行かないか悩む時間より、俺が連れて行く兵士達の移動時間を気にすべきじゃないか?
俺や武官は馬に騎乗して向かうからいいけど、兵士達全員が騎乗する訳じゃない。
戦場へは歩いて向かうのだ。
「そうそう、アヴィがアルティの兵達を先に連れて行っているからね。
もしアルティが出陣すると決めたなら、こちらで待機している武官数名を連れて馬で行けばいいから」
「昨日帰還したばかりの兵達をまた戦場へ連れて行ったのですか?」
「そうです。
アルティの魔法だけで勝った戦でしたから、兵達は戦闘していません。
疲労も負傷もないのですから問題ないでしょう?」
あら、この子ったら何か気に障ったのかしら? とでも言いたげな母上。
いや、別にあの五百名の兵士達は俺の直属の部下じゃないから、いちいち俺に確認なく動かしてもらって結構だ。
しかし、三日掛けて戦場へ行き、また三日掛けて街へ帰って来たばかりでまた同じ往復をしろって、とてもキツイと思うんだけどな、肉体的にも精神的にも。
下々の者に対してのそういった細やかな気遣いというものを考えないんだよな、上に立つ人達って。
ほら歩け、ほら戦え、はいご苦労。
それじゃいつか人は離れて行くと思うよ。
何にしても、先に戦場へ向かったのならすぐに向かおう。
そして、また俺の魔法で敵を全滅させてやればすぐに帰してやれる。
「分かりました。それでしたら今から姉上を追いかけます。
すぐに出立の準備を……」
「ちょっと待て、アルティ。
結論を急ぐ必要はない、よーくよーく考えてから行動すれば良いのだ」
父上から待ったがかかった。
行かせたいのか行かせたくないのかどっちかにしてくれませんかねぇ。
「そうよ、アヴィが戦場へ出て来たと知ったらユニオーヌ側も恐れをなして引き返すかもしれないし」
母上までも。
実戦経験が少ないエティーではなく、すでに周囲の領主達から恐れられている姉上を向かわせたのはその狙いもあるのか。
「姉上を見て引き返すのであれば、私が着いた頃には敵がいなくなっているという事ですよね?」
「いや、それとこれとは話が違う。
お前が戦場へ向かったという事実は大事だ。
そしてだな、その……」
また何か言いにくい事を言いたいけどなかなか言えない、みたいな雰囲気の父上。
はっきり言ってくれないと分からない。
言葉の奥にある想いを汲み取って相手へ声を掛ける、みたいな芸当は俺には出来ない。
母上も父上も、一体何を言おうとしているんだ?
俺が行くか行かないか悩む時間より、俺が連れて行く兵士達の移動時間を気にすべきじゃないか?
俺や武官は馬に騎乗して向かうからいいけど、兵士達全員が騎乗する訳じゃない。
戦場へは歩いて向かうのだ。
「そうそう、アヴィがアルティの兵達を先に連れて行っているからね。
もしアルティが出陣すると決めたなら、こちらで待機している武官数名を連れて馬で行けばいいから」
「昨日帰還したばかりの兵達をまた戦場へ連れて行ったのですか?」
「そうです。
アルティの魔法だけで勝った戦でしたから、兵達は戦闘していません。
疲労も負傷もないのですから問題ないでしょう?」
あら、この子ったら何か気に障ったのかしら? とでも言いたげな母上。
いや、別にあの五百名の兵士達は俺の直属の部下じゃないから、いちいち俺に確認なく動かしてもらって結構だ。
しかし、三日掛けて戦場へ行き、また三日掛けて街へ帰って来たばかりでまた同じ往復をしろって、とてもキツイと思うんだけどな、肉体的にも精神的にも。
下々の者に対してのそういった細やかな気遣いというものを考えないんだよな、上に立つ人達って。
ほら歩け、ほら戦え、はいご苦労。
それじゃいつか人は離れて行くと思うよ。
何にしても、先に戦場へ向かったのならすぐに向かおう。
そして、また俺の魔法で敵を全滅させてやればすぐに帰してやれる。
「分かりました。それでしたら今から姉上を追いかけます。
すぐに出立の準備を……」
「ちょっと待て、アルティ。
結論を急ぐ必要はない、よーくよーく考えてから行動すれば良いのだ」
父上から待ったがかかった。
行かせたいのか行かせたくないのかどっちかにしてくれませんかねぇ。
「そうよ、アヴィが戦場へ出て来たと知ったらユニオーヌ側も恐れをなして引き返すかもしれないし」
母上までも。
実戦経験が少ないエティーではなく、すでに周囲の領主達から恐れられている姉上を向かわせたのはその狙いもあるのか。
「姉上を見て引き返すのであれば、私が着いた頃には敵がいなくなっているという事ですよね?」
「いや、それとこれとは話が違う。
お前が戦場へ向かったという事実は大事だ。
そしてだな、その……」
また何か言いにくい事を言いたいけどなかなか言えない、みたいな雰囲気の父上。
はっきり言ってくれないと分からない。
言葉の奥にある想いを汲み取って相手へ声を掛ける、みたいな芸当は俺には出来ない。
母上も父上も、一体何を言おうとしているんだ?
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる