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姉上は時間を稼ぐ
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義兄上の話を父上が引き継ぐ。
「婚約者を奪われたと聞いて我慢ならず、ヴォワザン子爵を呼び付けて事情説明でもさせていたのだろう。
それがヴォワザン子爵の初動が遅れた原因ではないか?
そしてシュライエン辺境伯の息子が戦に出て来たのならば自分も戦って婚約者を奪い返してやると、そういうつもりだろう」
俺に出来たのだから自分にでも出来るはずだと考えたのだろうか。
安易だな、普段から兵士達に交じって訓練しているんだろうか。
俺は魔法だけでなくちゃんと剣術指南や基礎訓練なども受けている。
いざと言う時に女性に守られているだけの身ではいたくないからな。男として。
「付き合ってやる必要などございませんわ!
何があってもお兄様は私がお守り致します。
どうか向こうの思惑に乗せられず、屋敷でアヴィ姉様の報告をお待ち下さいませ」
俺の腕を取って、エティーが引き留めてくれる。
そう言ってくれるのはありがたいけど、そうもいかないよね、というお話。
「エテピシェ伯爵が出張って来ただけならそれでも良かっただろうが、帝国子爵が一枚噛んでいる以上そうも言っておれん。
前線で戦うかどうかは別として、アルティには戦場へは向かってもらいたいと思っている」
「でしたら私もお兄様と共に参りますわ!」
「エティー、あなたはこの街の防衛の為に残ってもらわなければなりません。
アヴィがいない以上、不測の事態に対応出来るようにしておかなければ。
全ては帝国が書いた筋書き通りなのかもしれないのですから」
俺を誘い出せれば上々。
家人の誰かがついて来ればなおよし。
待ち構えていた連合軍と帝国軍による大軍により取り囲まれて全滅、という想定も必要だという事か。
「それならなおさら私が一人で出陣し、お兄様がこの街にお母様と残るべきではございませんか!?」
「それとこれとは話が別だ。
アルティが喧嘩を売られた以上、アルティが相手をするのが一番良いのだ。
だがな、昨日戦から帰って来たところだ。
出陣するかどうか、一晩よくよく考えなさい。
明日の朝に返事をしてくればいいのだから。
面子があるとはいえ、アルティがどうしても行きたくないと言うならばその時は……」
「え? 明日の朝の出陣で間に合うのですか?」
収容所に伝令を寄越して早く屋敷へ戻って来いって言ったじゃん。
それなのに何で明日の朝でいいよってなるんだ?
「あぁ、アルティが考える時間を稼ぐようアヴィに頼んである。
一日程度なら両軍睨み合いの状態を保てるだろう」
「婚約者を奪われたと聞いて我慢ならず、ヴォワザン子爵を呼び付けて事情説明でもさせていたのだろう。
それがヴォワザン子爵の初動が遅れた原因ではないか?
そしてシュライエン辺境伯の息子が戦に出て来たのならば自分も戦って婚約者を奪い返してやると、そういうつもりだろう」
俺に出来たのだから自分にでも出来るはずだと考えたのだろうか。
安易だな、普段から兵士達に交じって訓練しているんだろうか。
俺は魔法だけでなくちゃんと剣術指南や基礎訓練なども受けている。
いざと言う時に女性に守られているだけの身ではいたくないからな。男として。
「付き合ってやる必要などございませんわ!
何があってもお兄様は私がお守り致します。
どうか向こうの思惑に乗せられず、屋敷でアヴィ姉様の報告をお待ち下さいませ」
俺の腕を取って、エティーが引き留めてくれる。
そう言ってくれるのはありがたいけど、そうもいかないよね、というお話。
「エテピシェ伯爵が出張って来ただけならそれでも良かっただろうが、帝国子爵が一枚噛んでいる以上そうも言っておれん。
前線で戦うかどうかは別として、アルティには戦場へは向かってもらいたいと思っている」
「でしたら私もお兄様と共に参りますわ!」
「エティー、あなたはこの街の防衛の為に残ってもらわなければなりません。
アヴィがいない以上、不測の事態に対応出来るようにしておかなければ。
全ては帝国が書いた筋書き通りなのかもしれないのですから」
俺を誘い出せれば上々。
家人の誰かがついて来ればなおよし。
待ち構えていた連合軍と帝国軍による大軍により取り囲まれて全滅、という想定も必要だという事か。
「それならなおさら私が一人で出陣し、お兄様がこの街にお母様と残るべきではございませんか!?」
「それとこれとは話が別だ。
アルティが喧嘩を売られた以上、アルティが相手をするのが一番良いのだ。
だがな、昨日戦から帰って来たところだ。
出陣するかどうか、一晩よくよく考えなさい。
明日の朝に返事をしてくればいいのだから。
面子があるとはいえ、アルティがどうしても行きたくないと言うならばその時は……」
「え? 明日の朝の出陣で間に合うのですか?」
収容所に伝令を寄越して早く屋敷へ戻って来いって言ったじゃん。
それなのに何で明日の朝でいいよってなるんだ?
「あぁ、アルティが考える時間を稼ぐようアヴィに頼んである。
一日程度なら両軍睨み合いの状態を保てるだろう」
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